映画の原題は 《Boomerang》。
まず私はこの原題に興味を持った。
誰がブーメランを投げたのか。
そして一体何が戻って来たのだろうか。
『ミモザの島に消えた母』
Le titre original de ce film est 《Boomerang》.
Tout d’abord, j’ai été intéressé par ce titre.
Qui a lancé un boomerang ?
Et quelles choses sont revenues ?
眼鏡の奥から視線を投げる表情がクローズアップされた方に引き込まれた。
もし兄妹がミモザの下で抱き合うカットのものだけであったら
公開初日に映画館に足を運んで観ようと思ったかどうかわからない。
妹を演じた眼鏡の女性、渇いた表情の奥に隠された何かがある。
この人、前に観たことがある。
メラニー・ロラン? もしや…と調べると
《PARIS》(2008年) の中で
大学教授を魅了する学生レティシアを演じた彼女だった。
あれから8年。
そしてオドレイ・ダナ。
ヴァンサン・ランドン主演の『君を想って海をゆく』(2009年) のひとだ。
もうここまで知ると観られずにはいられない。
香水が好きな私は
時に映画の中のキャストを香料に重ねてイメージすることがある。
監督は調香師。
多面的、有機的な魅力を持った役者をテーマに合わせて活かす。
今回のメラニー・ロランもオドレイ・ダナも素晴らしい。
監督の脚本に活かされて新しい魅力を香らせている。
そして彼女たちと共に
ローラン・ラフィットも繊細な感情の起伏を見事に表現していた。
さて、映画を見終えてこのパンフレットの表紙を改めて眺める。
邦題『ミモザの島に消えた母』というフレーズとこの映画が
初めて繋がった気がする。
何かを求めれば何かを失う。
何かを失えば何かを得る。
人生はブーメラン。
…東京にて、《SAWAROMA》より。