主人公ラザロの瞳の穏やかさ。残像として淡い光の中で揺れる緑の葉、まばゆい太陽の光。予告編でも印象的だったが、周りの人々は次々と彼の名前を呼び続ける…127分の映画の中で最も頻繁に他人から名前を呼ばれたのはラザロではないだろうか。
幸福な、という表現から、子供の頃に何度も読んだオスカー・ワイルド作『幸福な王子』を連想した。ラザロ。この名前にも聞き覚えがあった。タイトルは何かの象徴であり、謎かけだろうか。私は自分が感じてきた「幸福観」が試されるのだろうと直観した。
試写会でいただいたパンフレットの表紙。
非常に淡いグリーンの中に柔らかな黄金の文字。
2時間強の映画にもかかわらず、主人公ラザロが発した言葉の内容のほとんどが記憶に残っている。それほど彼の発する言葉はシンプルで明快だった。内側から真っ直ぐ出た言葉。全く無駄が無い。本作は第71回カンヌ国際映画祭にて脚本賞を受賞している。
映画チラシの写真、表と裏。
この作品で描かれているイタリアの現状は、世界の現状の縮図でもあり、人が生きるために避けては通れない現実を想起させずにはいられない。そのような中に象徴的に描かれた「幸福なラザロ」。それは、有り得ないと思われがちな人としての、本来の在り方かもしれないし、未来へと生きる人にとっての希望にもなり得るのかもしれない。
『幸福なラザロ』
4月19日(金)より、Bunkamura ル・シネマほか全国順次ロードショー。
監督・脚本:アリーチェ・ロルヴァケル
出演:アドリアーノ・タルディオーロ 他
2018年/イタリア/イタリア語/127分/日本語字幕:神田 直美
/原題:Lazzaro Felice/配給:キノフィルムズ/木下グループ
東京にて、sawaroma より。
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