2018年6月26日火曜日

『ブラッディ・ミルク』原題: 《PETIT PAYSAN》/フランス映画祭2018




映画への興味は兄の影響が大きいと思います。自分の好みよりも、6歳上の兄のセレクトで10代の私は週末になると様々な映画を鑑賞。そのうち一人で近隣他県の映画館にまで足を運ぶようになり、高校の機関誌に映画評を寄稿したこともありました。いつしか映画とは、ストーリーを追うものというよりも、自分の内側に潜む新しい疑問を発見する、とっておきの視聴覚体験となっていきます。





毎年6月後半に実施される、フランス映画祭。できるものならば全て鑑賞したいくらいですがそうもいかず、今回は唯一時間のとれた最終日に、この一作を選びました。


フランス映画祭2018 

http://unifrance.jp/festival/2018/

『ブラッディ・ミルク』

(原題: PETIT PAYSAN 2017

2017『カンヌ国際映画祭』監督週間で特別上映、2018セザール賞で、第1回作品賞、主演男優賞、助演女優賞の三冠に輝いた話題作。日本での公開は未定ですが、農業国フランスのみならず重要なテーマ。

http://unifrance.jp/festival/2018/films/68/





選んだ理由は、まず映画祭作品紹介ページでの本作品写真に牛と共に写るスワン・アルロー(ピエール役)の横側が複雑に真摯な表情を醸し出していたからです。牛をまもるためにどんなことでもするという彼の想いをこの人の表情で追いたくなったのでした。

映画館で展示されたポスターを一目見て、ピエールは、牛を家族同然に大切に思い生きていることが真っ直ぐに感じられます。牛の命も人の命も生き物としては同じ。本来同じなのです。生きるということはいつも死と隣合わせです。少ないセリフと共に、ピエールの繊細に変化する表情を追っていくだけでも胸に迫るものがありました。


「現実からは逃れられない、しかし生きていく」人の複雑な感情を想像し、これからの時代に生じ得る問題について思うことができた貴重な90分。かなうものならば日本での公開も望みます。




上映後、ユペール・シャルエル監督(写真左)とスワン・アルロー氏が登壇、質疑応答。

監督のご実家は酪農家でありご自身は継がなかったという背景を明かしつつ、こうした職業に従事する人達が直面している現実を、ドキュメンタリータッチ、サスペンス、コメディー等様々な要素を盛り込んで描いたとのこと。

アルロー氏は実際に酪農家で修行されたそうで身体つきからまさにPAYSAN(農民、ここでは酪農従事者)に成り切っていたとのこと。シャープな眼光にもかかわらず温かい感情を自然に表出出来る方。彼も監督も次回作が楽しみです。



東京にて、sawaroma より。


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