2011年1月11日火曜日

スイートスプリング

名前に魅かれて入手。熊本県産。名前の通り、爽やかなくだものです。




スイートスプリングは、「ハッサク」と「ミカン」の交雑種。山吹色の中に青緑がふわっと被るようなカラーリングの果皮をすこしそいでみると…ああ、たしかに「ハッサク」のやわらかな清々しさを想起させる香り。甘夏の一歩手前、といったデリケートな春の香りとの出会いです。

果皮は手でむかず、ナイフで櫛形にカットします。みずみずしい果肉を口にふくんでみると、温州みかんをマイルドにしたような優しい甘さ。果肉は柔らかくでジューシーで、この口当たりはハッサクとは違いますね。

気持ちの良い甘さ、というのでしょうか。酸味と穏やかな香りとのバランスが良く、そよ風のように程よい速度で通り抜けていくような爽快感。

数年前には、屋久島のたんかんに出会ってその濃厚なオレンジ色の果皮と甘味に感動しましたが、スイートスプリングからはその名前とともにひと足はやい春を感じられて、嬉しい限りです。


2011年1月9日日曜日

チョコレートの甘い香り

チョコレート好きの私にとって、これから約1ヶ月という期間、日本では華やかなチョコギフトの広告からあれこれ想像するのが楽しみです。

魅力はなんと言ってもカカオの香り。甘い香り、という表現もありますが、あの独特のほろ苦さが実際の味覚上の甘さをひきたてていると思います。

チョコレートの甘い香り展」。そんなタイムリーな展覧会が、静岡県の磐田市香りの博物館で現在(~4/3まで)開催中です。

…チョコレートの歴史は紀元前にさかのぼり、古代メキシコでは原料カカオが「神様の食べ物」と言われ、古くから不老長寿の薬として使われていた…展覧会内容の冒頭にこんなふうに記されていますが…この媚薬のような魅力、すでに大昔から人は気付いていたということですね。

日本ではチョコレートギフトといえば2月のバレンタインデーが有名ですが、私には3月~春先という印象があります。ちょうどパリにステイしていた時期が3月で、復活祭(Pâques)向けの卵形や動物形のチョコレートがショーウィンドウを飾っていたのを毎日眺めていました。お店からこぼれてくる甘い香りの誘惑から、眺めるだけではガマンできず、ある日友人とお店へ。そこで頂いた温かいショコラの美味しさが今も忘れられないのです。



2011年1月8日土曜日

香千載…

1月5日のブログ「名香」でもご紹介しましたが、香道の発展にともなう歴史的背景の概略がわかりやすくまとめられた本をご紹介します。


「香が語る日本文化史 香千載」
監修 畑 正高(香老舗 松栄堂)
写真 宮野 正喜 文 石橋 郁子
発行 光村推古書院株式会社
平成13年4月25日初版一版発行



とにかく目に鮮やかな写真満載です。私は、国際香りと文化の会の催事で香道具の展示を見たときにその魅力に引き込まれてこの本を購入したのですが、香席体験のときに心得を事前に知っておくのにも役立ちました。

「香」という切り口で日本の歴史を見つめ直すとこんなにもおもしろいものかと改めて感じます。小学校で初めて歴史を学ぶときあたりに香席体験があったらよいのにとさえ思う位です。

繊細な香のかおりに心を澄ませて聞く、聞香(もんこう)を実際に香席で体験すると、嗅覚だけでなく、聴覚も、ほかの感覚もクリアに研ぎ澄まされてくるのです。精神を集中させて自分の感じ方と向き合うため、自ずと他人への心遣いに意識が向くようになります。現代に生きる、より多くの日本の人に体験してもらいたいことのひとつです。

2011年1月6日木曜日

クラリセージ

今日は、植物に詳しく私に優しかった亡き祖父の誕生日でした。一緒に散歩していても見るだけで様々な花や草の名前を語り、庭に生えた草の効能まで知っていました。私は祖父ほど詳しくありませんが、感謝の気持ちで一生忘れられない植物を、その香りから出会ったときのことを記しておきたいと思います。

アロマテラピーを学び始めてまもなく、聞いたこともない植物の名前を挙げながら先生がくださった試香試をそっと嗅いでみたところ、ゆるやかな衝撃を受けました。

「こんな香りはじめて…秘密の花園に迷い込んだようなうっとり感…あたたかく包まれるようなこの懐かしさはなに?」

深く吸い込みたいくらいに心地良く感じたので、迷わず直後に買い求めました。私が初めて購入した精油、その由来植物はクラリセージです。

この植物が伝統的にどのような効能を伝えられてきたのかも詳しく調べないうちに、気に入った香水ならきっと自分と相性が良いはずとばかり、お風呂にいれたり、ティシュに滴下して芳香浴を楽しんでいました。すると毎月悩まされていた月経時の辛さが和らいだのです。期待していなかっただけに驚き、このことをきっかけに私は本気でアロマテラピーを学ぼうと決意したといっても過言ではありません。

私の感覚のみで選んだ香りが実はその時の私の身体を癒すものだった、そう感じて、生き物として自分も植物とつながっているようなあたたかさを感じました。クラリセージなんて植物は見たこともきいたこともなかったし、当時急遽入手した洋書、ハーバリストJeanne Rose 氏の著書 "375 Essential Oils And Hydrosols "にも、クラリセージは "Native to Europe"とあります。知識が感覚で磨かれるとはこういうことかと思います。

忙しさの中でも自分が落ち着ける、そんなブレンドベースを精油で作ることを試みて6年目、あらゆる環境で試してついに出来たと思えたのが一昨年の夏です。このベースにローズオットーとクラリセージをブレンドしました。「あなたは女性。いつも女性でいていいのです。あなたのペースでね。」と囁いてくれます。時々お守りのような香りとして愛用しています。




2011年1月5日水曜日

名香

香水は香りの芸術作品、と私は常々思っています。機能をもつものとしてみれば、それは衣服のように身につけるファッションアイテムとしてとらえることもできますが、アートとしてとらえたとき、純粋にその香りを嗅覚から脳への回路を通し「鑑賞」してみるのも楽しいでしょう。まだ自分が生まれていない頃に発売された香水などの場合、香りが調香された時代のイメージが脳裏に浮かんだりして面白いものです。まさにイマジネーションで旅するかのように。

日本人は「香りを聞く」香道という香りの芸道を発展させてきました。6世紀仏教伝来とともに入った香木の文化は、平安時代に貴族の教養としての「薫物」へと発展し、武家社会になると禅宗の影響より一本の沈香を嗜むことから微妙な味わいの違いを愉しみその異同を当てるという「組香」として遊戯化、こうした香の文化が江戸時代に完成され、明治時代に剣道や茶道とともに芸道として残すべきものとして大成されたそうです。…以上は、京都松栄堂12代当主である畑 正高氏監修による、カラー写真満載の「香が語る日本文化史 香千載」(光村推古書院株式会社)を参照しました。

香水評論家の平田幸子氏の著書に「香水ブランド物語」があり、その巻末に「モードの歴史」年表があるので、ちょっとそれを見ながら古いものを幾つかご紹介してみましょう。とりあえず1900年以降のものを。

1919 ミツコ(ゲラン)
1921 シャネルNo.5(シャネル)
1930 ジョイ(ジャン・パトゥ)
1932 ジュ・ルヴィアン(ウォルト)
1933 フルール・ド・ロカイユ(キャロン)
1948 レール・デュタン(ニナ・リッチ)
1959 カボシャール(グレ)
1966 オー・ソヴァージュ(ディオール)

…名香を挙げ始めたらキリがありませんが、エルメス専属調香師のジャン=クロード・エレナ氏は著書の中で、「オー・ソヴァージュ」は男女共用の香水として発売40年経った今でも変わらぬ人気と評しています。

どんな香りが自分に似合うのか、決めるまでに時間の余裕がある人には、こうした名香を試香紙につけてゆっくりとその「香りを聞く」時間を設け、自分なりにイメージを膨らませてみるのも面白いでしょう。その上で最近発売された香水からのイメージを比較すると色々な発見があるはずです。




2011年1月4日火曜日

プランナー

職業名を一言でわかりやすく表現することが難しい時代になってきたとつくづく思います。ある人がどんな仕事をしているのかを理解するとき、単に職業名という名詞からではなく、プロフィールの文章全体を読んでようやくイメージできることも多いからです。

私自身は現在、究極の一言で自分の職業を表現するとしたら「プランナー」という名称を選択したいところです。しかしながらこの名称だけでは抽象的すぎて何のジャンルで具体的に何をしているのか、イメージしてもらうことは困難です。

そこで、他人になるべくイメージしてもらえるようにするために、まず私が関わっている仕事のジャンルが「香り」であることを示すために「アロマセラピスト」という呼称を先に記しました。これは実際に某社団法人の協会認定資格を取得したことをきっかけに使用するようになったものです。

しかしこれだけでは、「香り」といってもアロマテラピーの分野に限定され、アロマテラピートリートメントの施術を専門に提供、という狭義の意味でのみ捉えられがちでした。そこで、大学講義(ファッションを専門に学ぶ学生対象に現代の香り文化を紹介、香り体感を通じて視覚表現力を磨く目的)を担当する講師であることも名刺に列記しました。

この名刺を様々な方にお渡しして頂いた質問と私の回答を列記してみます。

「ファッションも専門に学ばれたのですか?…大学で専攻したのはフランス語ですが、その後デザインコンサルティング会社でプランナーの1人としてアパレル企業のクライアントを担当したことがあります。その後フレグランスの勉強をしながらファッション誌の編集者も経験した時期がありました。」

「仕事のメインはアロマセラピストとしての施術で講師はサブですか?…どちらがメインという位置づけはしていないです。香りによって喜ばれる価値をいくつかの手段で伝え企画提案、提供しているにすぎません。」

確かにアロマトリートメントという施術サービスを頻繁に提供していた時期もありましたが、意欲ある後輩に指導させて頂き各々が立派に成長しているので、もはや私は「施術」という方法に固執していません。「香りという手段で様々な問題解決に取り組むプロ」として職業名「アロマセラピスト」を、もう一つの呼称「プランナー」を添えて名乗ろうと考えました。

ここで私が意味する「アロマ」は人にとってポジティブな意味をもつ、広義の「香り」を示します。私の周囲には、香りと一口に言っても様々な優れた専門家がいます。香水評論家の先生やキャリアを重ねた調香師の方々、販売に携わる方々等。このような方たちの功績をきちんと伝え活かすことも重要と常に考えています。

プランニング(企画)。それはあえて個別に名称を設けるに値する重要な仕事です。私が蓄積してきた知識や経験、スキルの活用だけでなく、様々なクライアントの状況から何が問題なのかを探り、より良い状態に導くための具体的な提案を行うために欠かせないものです。実際私はこれまで、いくつかの企業のプロジェクト監修コンサルティングを請け負ってもいますが、この仕事はまさにプランナーとして取り組むものと考えています。

思えば高校時代、私は理数科という科に所属していました。数学が最も好きな科目だったという単純な理由で選んだのですが、大学も高校で学んだ世界史に触発されて外国語学部を選びました。分類上それは文系だったわけですから高校~大学でかなり異質な仲間に揉まれました。様々なタイプの人物に私は幾度も自分の考え方を否定されたり拒絶されたりある時は共感されたりしたものです。現在の職業観をかえりみるに、学問を自由に追求する時期というのは極めて重要だったと思います。




2011年1月1日土曜日

AUTHENTの幸福感

2011年1月1日。新春のお慶びを申し上げます。毎月恒例「ついたちのフレグランス紹介」を、今回は香りの専門誌"PARFUM"156号と日本メナード化粧品株式会社のWebページを参考に記します。

2010年12月21日に日本メナード化粧品株式会社から発売されたばかりのフレグランスは、"AUTHENT EAU DE PARFUM" (オーセント オーデパルファム)。2008年、メナード創業50周年の前年に、肌の起源に働きかける種子の研究から誕生したオーセントクリーム(スキンケア商品)には、美しさのために香りがもたらす幸福感も重視されており、今回はその香りがクローズアップされた商品が生まれたということになります。

私はオーセントクリームを試させていただいたとき、まずそのふわりと拡がった優雅な香りにうっとりとしたことをよく憶えています。女性にとって「うっとり」できる時間があることは必須。「うっとり」とはまさに美を感じる幸福な瞬間なのです。デリケートな皮膚に働きかけるスキンケアにこそ、こうした香りはやはり大切と改めて実感したのでした。

2009年のお正月に、女優岩下志麻さん出演、背景に日本画家田渕俊夫氏の襖絵という印象的なテレビCMを見た私は、知人であるメナード広報の方にその襖絵のことを確認しました。やはり京都の智積院の襖絵でした。今もわすれられません。そのCM映像の最後にオーセントクリームのパッケージが映ったのです。視覚的な印象とともに余韻として残っていた香りがフレグランスになったことを嬉しく思います。

2011年、幸福感に包まれる時を過ごせますように。