2011年4月30日土曜日

手製本だからこそ…の美篶ノート・Handmade notebooks by Misuzudo

I met notebooks by Misuzudo 8 years ago. I bought many of them, wrote on them,and keep all of them.These notebooks written on by me and only for me are now my treasures.These look like precious BOOKS I want to read many times in my lifetime.

美篶堂のノートに出逢って8年。これまで購入し、書き込んだノートで捨てたものは一冊もない。大切なメモやアイディアなど、自分しか読み返さない内容を閉じ込めたノート…はいつの間にか私にとって生涯何度も読み返したくなる本のような存在になっていた。






上の写真の3冊はすべて8年前に購入したもの。下からみすずノート小口染め、その上に2冊のA6横型ノート。ともに美篶堂の定番である。私はこれらのノートのおかげで様々な香り(キャンドル、フレグランス、トリートメント用等のブレンド)を考えることができた。





2番目の写真に写っているノートは自分だけでなく友人にも何度かプレゼントした。奥の3冊は文庫本よりやや小さいサイズのリサイクルノート(リサイクル紙を使用)、手前の2冊は手のひらサイズで一枚ずつ切り離せる。趣き豊かなテキスタイルで端正につつまれたノートは、スペースをとらずメモできた。幾たび重要な講演や打ち合わせのメモに用いたことだろう。すでに出版され、活字となってしまった言葉にはないライブな真実の言葉を数多く書き込むことができたことを嬉しく思う。

この美篶堂御茶ノ水ショップに併設されていたギャラリーについては次回のブログで綴りたい。


2011年4月28日木曜日

美篶堂に感謝を込めて・1 (端正な手製本との出逢い)

美篶堂の店主、上島明子さんに会いに出かけたのは今週火曜日。新緑のまぶしい湯島聖堂の木々を眺めながら、約8年間和みの場として通った美篶堂ギャラリーで明子さんと珈琲をいただきました。

明子さんとの出逢いは2003年5月。リビングデザインセンターOZONEでの催事会場にて。ひときわ澄んだ優しい声で「これはみすずノート、こちらは…」と色とりどりの商品を前に説明されていました。

丁寧につくられたものというのは、その清々しい佇まいで静かに使い手との出逢いを待つのでしょう。私はひと目で魅かれて手にとりました。布張りの端正な本、新しい紙の匂い、整った小口にうっすらと流れる線。

たとえ走り書きのメモで自分にしか読めない文字であっても、このノートに綴っておけば一生私の宝物になる…そんな予感は的中。その後8年に渡り私は大切なことをメモするためのノートとして何冊も美篶堂のノートを入手しました。ゲランの調香師、ジャン=ポール・ゲラン氏、数々のフレグランスボトルをデザインしたピエール・ディナン氏等の来日講演でのメモにはじまり、アロマブレンド考案メモも美篶堂ノートにおさめられています。これからも愛用し続けるでしょう。

2003年秋に御茶ノ水のショップがオープンしたときのことを、当時の私のコラム「手製本」でも綴っています。

8年目の初夏、5月5日をもって御茶ノ水の美篶堂ギャラリー&ショップはクローズされます。美篶堂さんのサイト上で明子さんもご挨拶されていますが、あと1週間、多くの方が新緑の中に佇むこの一角に立ち寄られますように。


2011年4月26日火曜日

光の軌跡を香る空気の中で… "as it should be" RITSUE MISHIMA

知人である調香師の女性より、その方が空間演出に携わられたという展覧会をご案内いただいた。場所は日本最古のギャラリーといわれる資生堂ギャラリー。
「あるべきようわ 三嶋りつ惠展」"as it should be" RITSUE MISHIMA は、まさに新緑の季節にふさわしい。

光も風も、水の流れも速すぎて、実は輝くような一瞬一瞬のかたちをあるがままに見つめることは難しい。その「あるべき」かたちを透明なガラスの曲面で見つめることができた。

薄暗い階段を降りていく。どこか清々しい空気が漂う。神聖な場所に降りたと感じたとたん出会うかたち。うっすらと射し込む光が柔らかくかたちを映し出す。歩くたびに穏やかに流れる風とともに感じる気配。静かにゆっくりと知覚される、様々な動きの一瞬。

ある場所でふと、私がかつて「透明感」というイメージの形容詞がわりに用いた天然香料の香りに出会う。ああやはり。名前はあえて書かない。ギャラリーを訪れた人のお楽しみのために。

私に見えた輪郭は、私の目がとらえた光の軌跡。
深く、ゆっくりと呼吸したくなるような空気の中で。




2011年4月24日日曜日

"Different" は褒め言葉・「ファッション・ビジネス」のこれから

桑沢デザイン研究所STRAMD第9回土曜特別公開講座「ファッション・ビジネスにみる価値創造の"これまで"と"これから"」を受講。講師はIFI(財団法人ファッション産業人材育成機構)ビジネススクール前学長で、1968年に『ファッション・ビジネスの世界』を翻訳、日本に初めて「ファッション・ビジネス」の言葉と概念を紹介した尾原蓉子氏。16才で米国留学されてからこれまでのみずみずしい感動体験をたくさん分けていただいたような気持ちで満たされた。特に印象的だったお話を4点抽出し、それぞれの☆以降に私個人のコメントを記しておきたい。

1,船で感じた地球のかたちと自立心
…14日かけてシアトルに。船上で日本が線になり点になりついに消えたとき、「地球が球である」という再認識と「家族からは完全に離れたところにきた自分が頼れるのは自分しかない」という覚悟を実感された。…☆地平線から立っている地の曲面を体感できる感性は素敵。私も生まれて初めて海外(フランス)に渡ったときはたった一人。やはり初めて誰にも頼れないことを覚悟したと共感。困難を想像できる未体験に挑戦してこそ人は強くもなれる。ファッション業界のこれからを託す学生にはぜひチャレンジ精神を、と改めて思う。

2,"Different"は褒め言葉
…米国では周囲からよく自分の着ているものを"That's so different!"と言われて当惑したが実はそれは最高の褒め言葉であると知り驚く。…☆私自身も中学時代に人と違う意見や行動というだけで敵視された経験があったので、16才の尾原さんが国による受け取り方の違いに衝撃を受けられた感覚は想像できる。違うということは特別の価値があるからこそ恐れられもすれば褒められもするのではないか。これほど情報過多な現代、「他とは違う」ものは特定の人達の感性を必ず刺激する。そうした感性に届くような告知方法とともに、新たな市場を形成していくプロセスそのものをデザインすることがこれからのファッションに求められるのではないかと思う。なお、違うということは偏屈や天邪鬼を指すのではなく、これまでと同じでなくてもよいのだと気付くことから始まるようにも感じる。

3,「モード」と「ファッション」は違う意味
…「モード」はパリから入ってきた高級オートクチュール、「ファッション」は大衆向けのもの…という暗黙の区別があったとのこと。…☆前者は仏語、後者は英語で本来同意であるのに、特に当時(1960年代)における服飾文化のイメージには地域によって圧倒的な違いがあったことを実感。この二種の言葉のうち、確かにいまや英語のほうがよく使われているようだが、これから本気で服飾文化を背景から学んで未来に向かいたい学生には、フランス語も勉強してほしい、興味を持ってほしいと願う。

4,ファッションは「変化のビジネス」
…尾原さんがアメリカで学ばれた考え方のひとつ。ファッションは「変化のビジネス」であり、唯一変化しないことがあるとしたらこれが「変化し続ける」ことである、ということ。…☆そもそもファッションの意味は流行であり、その時代ごとを映すものであるから然り。今考えていることも実はもう古い。未来は今の無意識の中にある。時が流れると人も景色も変わる。今日素敵と思ったものが明日はそう思わなくなるという現実に敏感になるには、日々の空気感に敏感になることだろう。嗅覚を鍛える、香りを意識することはまさにこれを日々実感することではないか。

「これから」を考えるには「これまで」を知ることは大切と改めて感じる。昨年自らが連載する雑誌で書評を書いた本をもう一度読み直したくなった。服飾史家である中野香織さんの著書「モードとエロスと資本」である。母校のフランス人教授がこう語っていたのを思い起こす。「歴史を学ぶということは、今の状態が当たり前に存在しているわけではない、ということを知るためです」と。




2011年4月23日土曜日

りんごのしずく(秋映・シナノゴールド・シナノスイート)

バラ科の植物、りんご。

大好きなりんごのストレートジュース。濃縮果汁還元ではなく、搾ったままのストレート。それだけでもそのフレッシュな香りと味わいに期待してしまいます。縁あって信州の3種りんごそれぞれのストレートジュースを味わうことができました。いずれも甘味と酸味のバランスがとれた上品なフルーツテイストであることは共通していますが…その上で、まずは予備知識を入れないうちに私の主観(五感)で感じたことを書いてみます。


まずは秋映(あきばえ)。
きっと皮ごとジュースにされているのでしょう。ほのかにピンク色。口にふくむとああ懐かしい、やさしいすりおろしりんごの味。香りの印象は「ノスタルジック・マイルド」。人に例えるならば、一緒にいて心落ち着く穏やかな声と言葉の持ち主。

次にシナノゴールド。
淡い黄金のしずく。芳醇です。かすかに梨のような香りに始まるとろみを感じさせるような味わいから一瞬、多種のフルーツが盛り合されたフルーツバスケットを想像。後味にふわりと残る余韻から清純な花の香りも感じられ…まさに「ルミナス・インプレッション」。一度目が合うと忘れられないオーラを感じさせる、気品に満ちた人。

最後にシナノスイート。
淡黄色にほんのりピンクが入った少女の肌のよう。フレッシュな甘さが初々しく感じられて、名称に「スイート」が入っているのも納得。ふわりと新鮮なピーチの香りがよぎる愛らしさ。甘さと爽やかさと可愛らしさのバランスが絶妙なこの香りは「ラブリー・タイム」。人生の中で幾たびか訪れる貴重な時間。そしてそこに存在する人。

…などとまずは私の五感と想像の世界から表現してみましたが、これらのりんごはそれぞれのルーツを持っています。

秋映は、「千秋」と「つがる」から。
シナノゴールドは、「ゴールデンデリシャス」と「千秋」から。
シナノスイートは、「ふじ」と「つがる」から。

バラもそうですが、香り高いものに対するヒトの執着と努力は素晴らしいと思います。こんなにも多品種を作り出してしまうのですから。


2011年4月22日金曜日

交響曲第9番(ベートーヴェン)・歓喜は苦難の中に

今日、演奏会に出掛けた。春のこの時期に第九を聴くのは3回目。

ベートーヴェン(1770~1827)の交響曲第9番(初演は1824年5月7日ウィーンにて)といえば第4楽章の合唱が有名だが、私はそこに至る第1~第3楽章が特に好きであり、この流れがあってこそ「歓喜」の合唱につながる、と聴くたびに思う。


私は高校時代に2年続けて第九の合唱にソプラノとして参加した。その息子が志望し入学した高校では、毎春プロのオーケストラ&ソリストと共に在校生がコーラス参加する「第九演奏会」が実施され、保護者は招待される。高校時代には年末に歌っていた第九を春に聴く…何かそのほうが私の心にしみとおってきたのは、厳しい冬を乗り越えて迎えた後だからかもしれない。

第1~3楽章を目を閉じて聴いていると、私は様々な情景を想像する。きらめく朝の光や水の流れ、そよ風や鳥のさえずりばかりではない。不安の立ち込めた空気の中に次々と襲いかかる出来事…でも朝がくるとまたいつものように歩いていく…束の間の笑顔の後の悲しみ、迷い…
そして、第4楽章のバリトンのソリストが最初に歌うドイツ語の意味は
「おお 友よ、この調べではない!もっと快い、喜びに満ちた調べに、ともに声を合わせよう」。
この部分のみベートーヴェン本人の作詞であるという。後にシラーの詩が続く。

この曲を聴覚なしで作曲したベートーヴェンの、苦難の中に時々きらりと幻のように見える歓喜への思いを感じ、聴くたびにいつもうっすらと涙する。苦難の中にこそ歓喜は見える。そういえば、「喜び」という意味の名前 "JOY" というフレグランスがフランスのジャン・パトゥから発売されたのも1929年、世界的に大不況の只中だった。

参考文献:
「ベートーヴェン作曲/交響曲第9番 第4楽章 "合唱"」
編著(株)河合楽器製作所・出版部

2011年4月20日水曜日

ローズマリーの香りから…元気と若さと記憶力

"invigorating"…「元気づける、心身を爽快にする」という意味の英語。この名のブレンド精油を使ったことがあります。リフレッシュ感に溢れたこの香りにはローズマリー精油もブレンドされていました。低血圧で朝ボーッとしがちな私も、ローズマリーの香りを嗅ぐと身体がシャキッとして脳が冴えてくる気がします。この体験から、頭の回転をよくするために血行を良くすることって大切だなあと実感したものです。

ウィリアム・シェイクスピアの「ハムレット」第4幕第5場でオフィーリアがローズマリーの小枝を手に、ハムレットにこんな言葉をかけるシーンがあります。
「これがローズマリー、ものを忘れないようにする花…」

文献で調べた結果、このシソ科のハーブは薬用植物として古代のエジプト~ギリシャ・ローマ時代から活用されてきたようですが、集中力や記憶力との関連性も見出されてきたようです。確かに、物忘れが多くなった…としょげていた人に朝室内に焚く香りとして勧めたところ、まず気分が良くなりシャキシャキ行動できるようになったと喜ばれたこともありました。

ローズマリーは、その芳香成分のみを水蒸気蒸留法で抽出した精油の価値はもちろん、葉そのものの存在も素敵。濃い緑の細い葉がフッサリと密集した小枝は見た目もすがすがしく、こんなふうに一輪挿しにして飾りながら育てるのも楽しいのです。




料理用に販売されているローズマリーの小枝を、毎日水を取りかえ、適度に日光にあてて(高温多湿の場所は避ける)置くと白い根が出てくることがあります。ある程度出てきたらハーブ用の土に植え替えて増やすことができそうです。
肉料理としては、例えばチキンやポークにオリーブオイル、塩とこの葉を少々散らし焼いたり煮たりすれば、肉独特の臭みが消えるばかりかフレッシュで食欲をそそる香りも楽しめます。

私のアロマトリートメントのお客様には施術前の足浴湯に、よくこのローズマリーの小枝を1本入れていました。清々しい香りとともにひときわ温まったと喜ばれたものです。中世ヨーロッパの僧院医学のエピソードとして、後に「若返りの水」と呼ばれたローズマリー主成分のハンガリアンウォーターが伝えられていますが、これが老いた王妃の手足の痛みばかりか皮膚の状態も改善させたということから、ローズマリーのお風呂も疲労回復と美容に良さそうです。

精油は強くてインパクトのある香りです。適量で香らせれば森林浴のような清々しさを提供してくれるでしょう。ですがフランスの医師兼アロマテラピー研究家であったジャン・バルネ氏によるとてんかん症の人には大量使用しないようにとのこと。極少量用いると痙攣を鎮め、多すぎると刺激が強すぎて発作を引き起こす可能性もあるそうです。程よく香らせて、日々若々しい気分で過ごしたいものです。


参考文献:

「スピリットとアロマテラピー」
ガブリエル・モージェイ 著/前田久仁子 訳
フレグランスジャーナル社 発行

「アロマテラピー検定テキスト2級」
社団法人 日本アロマ環境協会 発行

「アロマテラピー実践辞典」
モニカ・ヴェルナー 著/林真一郎 監修
畑澤裕子 訳/(株)東京堂出版 発行