2013年8月31日土曜日

THE LAUNDRESS・肌のように服をセルフケア


長く大切に着たいとおもうブラウスやシャツ…
素材にあわせて手洗いすることが多くなりました。
気に入っていた白ブラウスをドライクリーニングに出したところ
微妙に1トーンくすみ、着心地も今ひとつだったことがきっかけです。

汚れの程度にあわせた洗剤量と
物理的刺激(水の温度、絞りなどの加圧)や
アイロンのかけかたを配慮するだけで、生地の傷みも少なく
何よりも着たときに肌で感じる清潔感が心地よいのです。
襟元からも洗いたての清々しい香りが漂い至福でした。



ザ・ランドレス
昨日オープンしたばかりの新宿ルミネ2のショップで
まず試してみたいアイテムを入手しました。

襟元の皮脂汚れに
強い漂白剤を使うのも抵抗ありと思っていた私に
小型スクエアソープの"WASH & STAIN BAR"は願ってもない一品。
今日もリネンのブラウス襟元に使用。
クラシックな石鹸の香りの残り香が、強い太陽光で程よく飛んで
わかるかわからない程度の微香が清潔感としてふんわり残りました。
強い柔軟剤のにおいのようにしつこく残ったりしないので
お気に入りのフレグランスでドレスアップすることにも支障なし。

その他、お試しサイズ兼トラベルサイズの3点。
シルクやレースなどのおしゃれ着用"DELICATE WASH"。
染み抜き液の"STAIN SOLUTION"。
そして、虫喰い防止も期待できる
シダーの香りの"WOOL & CASHMERE SHAMPOO"。
製品それぞれに天然由来の香りが使われています。

ちょっと驚いたのが
ランドレスと同じくNY生まれのモダン香水「ルラボ」とのコラボレーション。
人気の高い"ROSE31"と"SANTAL33"。
これらを使ってカーテンやコットンラグ、ソファカバーを洗えば
室内に洗練された香りがふんわり漂うことでしょう。

たいせつな肌をケアするように
その肌に着る服もその周囲の空気も
優しい香りと環境に配慮されたファブリックケアで洗い、守ること。
それは
テキスタイル、アパレルデザインを学んだ上に
ラグジュアリーブランドでの対顧客体験を重ねた二人のスペシャリストが
研究開発を経て創造できたブランドならではの価値ではないかと思います。

2013年8月30日金曜日

「そんな人、存在するの?」と思わせる"Jil Sander Ultrasense"の香りに好奇心

9月発売予定の新作フレグランスの中で
そのイメージコピーに強く魅かれたものが
ジル・サンダーの新作。

Jil Sander Ultrasense
08/29/13 10:31:58
By: Sanja Pekic


ウルトラセンス。超感覚?この名自体もかなりおもしろい。

ボトルデザインはどことなく一昔前?'80年代?

そこまでであればスルーしていた。

しかし、このフレグランスが表現する男性についての記述を読み
「そんな人っていまどきの世の中に存在する?」
と思ってしまう。そこが2013年という時代を反映しているのかもしれない。

…直感、本能に導かれ
出しゃばらず控えめな自信、
特別な抑制の効いた魅力を放つ…

"unobtrusive" と"restrained"が
互いを強調するかのように使用されている説明が印象的。

まるで自己意識から解放されたかのごとく
直感と行動が自由に、静かに直結したヒーローのごとく。

フレッシュなベルガモットと
スパイシーな黒胡椒にマダガスカルのベリーたち。
トップノートが楽しみでもあり
セージと樅の清涼感と複雑な深みが
柔らかなホワイトムスクへ流れていく空気を想像すると、
何となく今求められる人のイメージに繋がるような気がするから不思議。



2013年8月29日木曜日

風切る気分で・"TELL ME WHERE YOU'RE GOING"/SILJE(セリア)

せっかく朝夕涼しくなったと喜んでいましたが
今日の日中の陽射しはまだまだ夏。

ちょっと乾いた空気の中を
風切るような気分でドライブ…したいところですが
現実はそうもいかないので、そんな気分に浸れそうな音楽を。



ノルウェー生まれ、セリアのデビューアルバムは
大昔…確か渋谷のショップで
溢れる新譜の中から
まるで香水をえらぶように感覚だけで選んだもの。

試聴して音の雰囲気だけで気に入って購入したのですが
なんとなく夏の終わりに聴きたくなるのです。

アルバムには90年9月27日発売とありました。
…確かに秋の空気をバックに聴いた記憶が。

透明感のある英語の発音。乾いた空気に似合います。
音楽プロデューサー、菰口賢一さんも
ご自身のダイアログ中7/22の記事でこの1枚を紹介されています。

しかし。
昨日みた映画も邦題と原題のギャップに驚きましたが…
なぜ"TELL ME WHERE YOU'RE GOING"が
「やさしい光につつまれて」というタイトルになるのか疑問。
聴いていると確かに爽やかで心地よいかもしれませんが
歌詞はそんなに穏やかではないのです。

「君と歩く世界」(原題 : " DE ROUILLE ET D'OS ")が伝える生身のリアリティ

「君と歩く世界」(原題 : " DE ROUILLE ET D'OS ")
両面チラシのうち、公式サイトトップページに使用されている、女性が背負われた写真よりも、私は二人が同じ正面をまっすぐに向いた写真のチラシに魅かれる。



シャチの調教師と格闘家がどんな出逢いをするのかと興味を持った。

浮いた言葉などゼロ。肉体を持つ生身の人間のリアリティ。
言葉は肉体から生まれる。
本来、生きものにとっては頭脳を含めて肉体なのだが
現代、頭脳以外の肉体はどこかおざなりにされている。
そのことを鮮烈に思い起こさせてくれる映画。

映画冒頭、最初のセリフは5才の男の子の "J'ai faim!"(おなかすいた)。
生身の身体は空腹にもなるし、あったはずの身体の一部が無くなれば悲しい。
そして、動く身体があれば使いたいし動かしたい。
男が男にできることを本能的に求めるならば、女も同じ。
感覚が通う全身からの情報が脳に集結し、感情、表情、行動、言葉を生む。

本音は必ずしも言葉になるとは限らない。
表情、行動にまずは現れる。

ラスト間近。
スクリーンの闇の中で、"Je t'aime."(愛してる)の声。
そんな言葉を言いそうにない人物が、誰かに向かって一言だけ。
この言葉の重みも、
原題 "DE ROUILLE ET D'OS" (錆と骨)の意味も
この映画全編を通して初めて響いたと感じた。
格闘家であれば記憶にあるはずの、口の中の味だとか。

4月公開当時に見逃したこの映画を
幸運にも今週見ることができたのは
下高井戸シネマのおかげと感謝。
今週金曜日まで、夕方4時からの上映です。

2013年8月28日水曜日

ピンクペッパー 〜 トリー・バーチの初フレグランスからの回想 ~

アメリカのファッションブランド、トリー・バーチが
初のフレグランスを発表。9月発売とのこと。

First Fragrance by Tory Burch
08/26/13 00:30:07
By: Sandra Raičević Petrović

トップノートに使用されている香料の中に
ここ最近よく目にするピンクペッパーを発見。

このひと月以内でも
8/10記事 でご紹介のオードモワゼル新作や、8/18記事 のマドリー新作に使用されている。

数日前に読んでいたFragranticaの記事
"Note du Jour: Pink Pepper"の真っ赤な実の写真を思い起こす。

Note du Jour: Pink Pepper
08/22/13 13:11:49
By: Elena Vosnaki


冒頭、このところ新作フレグランスによく使用されるようになったピンクペッパーについて、ローズやムスクのような「ユビキタス」(「いつでも何処でも誰にでも」を意味する?)と表現されている。フレグランスの香料として使用されてきた歴史が比較的浅いがゆえの陳腐化への懸念?

先に私の主観的な印象を語ると、ピンクペッパーはそれ自体魅力的な香料である上、合わせられる香料の潜在的な魅力も引き出すように感じる。活かすも殺すも調香師次第。と言うのも、一目惚れならぬ「一鼻惚れ」してしまったフレグランスにトップノートにピンクペッパー使用のものがいくつかあったものの、それらが全く似ていないと感じたゆえに。

フレグランス用香料という以前に
スパイスとしての魅力も感じていた。
このピンクペッパーを散らしたチョコレートの美味しさは
2年前のコチラの記事「ピンクペッパー・小気味良く香るアクセント」でも記した。

胡椒のような辛さはないけれど、ピリッとした刺激が一瞬脳内に走り、続いてまぼろしのようにうっすらと、甘い花のような果実のような空気が通り抜ける。ほんのり残る樹脂のようなぬくもり。こんな匂いはなかなか無い。だからこそ新しい香りの創造素材になり得るのだと思う。


2013年8月25日日曜日

10言語圏に愛される香りの魅力は、高品質な香料が奏でるストーリー

処暑も過ぎ、猛暑もようやく秋へと向かい始めました。




夏の間何度も手に取りました。
コチラ 、その洗練された爽やかさに感謝したい香りのひとつです。

夏至から始まる夏へ…爽やかで優雅な新作コロン "EAU D'HADRIEN"にてご紹介の香り。オーデコロンですから身体に一陣の清涼感を軽く纏う程度の微香がほんのり残るだけ。強い残香はなく、暑さや疲れから発する身体の匂いのストレスもありません。きわめて繊細で上品な余韻には、さまざまな人に愛される心地良さがあります。

この200mLサイズの箱の中に、ちいさな栞が入っています。
開くと10の言語でブランドの紹介文が記されていました。
筆頭のフランス語に続き、英語、イタリア語、スペイン語、ドイツ語、
ロシア語、中国語、日本語、韓国語、アラビア語。
少なくとも10言語圏には愛されるブランドなのでしょう。

その文章から、いまの私に最も響いた部分を引用してみます。
(仏語・英語・日本語のみ)

…Chaque parfum raconte une histoire et par sa force d'évocation,
nous invite au voyage.

…Each perfume tells a story and,with the memories it evokes,
invites us on a journey.

…それぞれの香りが1つの物語を語り、私たちの記憶を喚起し、
旅へと誘うのです。

確かに香りは、繊細であればあるほど、イマジネーションを喚起させ、
旅をしているような気分にさせてくれます。
今夏の私は特に休養を必要としていたためほとんど遠出せず、
自宅で仕事をしながら息抜きに読書と香りを楽しみました。
読書も香りを楽しむことも、
私にとってはまさしく想像の中で旅をするようなものです。

調香師のカミーユ・グダールさんが
『ELLE』オンライン2013,7,24に掲載されたインタビュー記事で、以下「」のようにお話されたことを改めて回想しています。

「なかでもオーデコロンは旅からインスパイアされた自信作です。「ネロリ」はギリシャのサントリーニ島の真っ白な家々や青い空、アテネで嗅いだオレンジの花でむせ返るような街の香りなどを表現しました。「オーダドリアン」はイタリアへの情熱がテーマで、シトラスとスパイシーなハーブの香りで湧き上がるような感情を刺激します。「アニック グタール」が人気なのは、誰もが感じる香料の質の高さにあります。“ローズ”ひとつとってみても、50以上もの香気成分でその香りを表現しているので、奥深い香りを味わってもらえると思います。」

2013年8月23日金曜日

波多野 光個展 『白い花』・STYLE'S CAKES & CO.にて9/3から

イラストレーターの波多野光さんから
涼しげな白い花が描かれた個展のご案内葉書が届きました。


波多野光『白い花』
これは波多野光さんご自身のWebサイト上のご案内ページです。

モノクロームで描かれた白い花。
清楚でありながら奥深い香りを感じます。

2011年の個展のとき、私は
コチラ で「 」のように綴っていました。

「波多野光さんの描く植物。その妖しくも流麗な曲線の中に、生きものがただ生きるためにひたすら生きている軌跡を感じ、痕跡としての香りを想像しました。」

今回も拝見したいと思っています。

9/3から13日までの10日間。
展示されるのは
STYLE'S CAKES & CO.
という、とびきり美味しそうなケーキ屋さん、というのも嬉しいです。

2013年8月22日木曜日

ちいさなスイカさん・収穫

ちいさなスイカさんからほぼ2週間。

さすがにベランダでは、無傷でこれ以上大きくなるのを見守ることに
限界を感じてきました。
まわりの葉っぱもスイカさんを支えるために疲弊してるようですし
これ以上放置すると落下して割れてしまうかもしれません。

収穫してみました。
長い径で7センチ強。重さ約130グラム。


一晩冷蔵庫で冷やしてカット。


なんと赤い、見慣れたスイカの美味しい部分の色です!

香りもまぎれもなく甘いスイカそのもの。
ちいさなスプーンで試食。
間違いなくいつも食べているスイカさんです。


まさか我が家にベランダに誕生するなんて思いもよりませんでした。
もっとスイカさんに適した環境でしっかり実を支えて育てられたら
白っぽい種もだんだん黒くなり、赤い部分も大きくなって
立派なスイカさんに成長したのでしょう。

ちいさくてもみずみずしいスイカさんに感激した夏でした。

2013年8月21日水曜日

sugar time in 軽井沢 No.2・9月5日のテーマは「芸術と香り」


9月5日。軽井沢 のホテル鹿島ノ森にて
香りの専門誌"PARFUM"編集長、平田幸子氏によるサロンスタイルセミナーが開催されます。詳細はコチラ

sugar time in 軽井沢 No.2。
洗練された心地良い時間と共に、知的好奇心を たのしむサロンのような会・シュガータイム2回目のご案内。初夏5月の初回は、香水「Ex Karuizawa」のご紹介とともに香りの歴史や魅力についてのお話でした。
初秋の2回目では
長年映画・アートについて毎号取り上げてきた香りの専門誌編集長ならではの視点から、芸術と香水について興味深いお話がうかがえそうです。

ホテル鹿島ノ森 は、軽井沢駅より車で8分。緑豊な雰囲気の中に佇む優雅なホテル。
こちらのホテルサロンで香水「Ex Karuizawa」もお求めいただけるそうです。

2013年8月20日火曜日

フレッシュ・プルーンのみずみずしさ


楽しみにしていたプルーン。
信州佐久高原産。



品種はツアー。
説明書によると
「太陽の贈り物 ミネラルの宝石」と太字で書かれたあとに
「果実は丸みを帯び 果汁が多く みずみずしい食味で甘味と酸味のバランスが良い品種です」とのこと。
まさしくその通り。




洗って皮ごといただきます。

紫色の皮からオレンジ色の宝石のような果肉。
ふわり上品な香りはさすがバラ科植物の果実。

リンゴも梨もバラ科ですが梅も杏も…
スモモとよばれるプルーンも。
みな素晴らしいなと
改めておもいます。



2013年8月18日日曜日

"Oud"(ウード)を名に記す新作香水・マドリーとヴァレンティナ


ここ数日、新作香水のニュースを見ていたら
その名に "Oud"(ウード)を記すものを複数発見。

マドリー ・ケンゾー ・ウードコレクション
Madly Kenzo Oud Collection
08/07/13 15:31:43
By: Sandra Raičević Petrović


ヴァレンティナ・ウード アソリュート
Valentino Valentina Oud Assoluto
08/17/13 07:19:08
By: Sandra Raičević Petrović


いずれも広く名が知られたファッションブランドであり
香水自体のメインネーム「マドリー」、「ヴァレンティナ」は既出。

「マドリー」については、同形で3色のヴァージョンが発売されており
私の今年4月の記事5月の記事
で紹介しました。ピンクはオリジナル、パープルは地域限定、ブルーは夏ヴァージョン。今回の新作はミッドナイトブルーで中東地域限定のようです。

「ヴァレンティナ」については、最初の淡いベビーピンクのボトルについて
私の昨年3月の記事 で紹介。
ピンク系から今回は一転して漆黒のボトル。

両ブランドとも
これまでボトルカラーとしては使っていなかった濃くダークな色を新作に使用。

そもそも "Oud"(ウード)とは?
これを背景から説明している英文記事を発見。
MARCH 3, 2011
The Mysterious Oud Wood & It’s Ancient Heritage + M. Micallef ‘Three Oud’ Perfume Draw


沈香木、といえば貴重な香木ですが、これが独特な香りを発するには、木がバクテリアによって独特な変化を遂げなくてはなりません。この貴重な素材から得られる香料はまさにオリエント、東方の魅力をたたえたものであり媚薬的なもの。
この香料をいかに現代香水に活かすかも
調香師の腕次第でしょう。


2013年8月17日土曜日

ピンクグレープフルーツ&幸水

みずみずしい日本の梨、幸水のカットに
さわやかな香りのピンクグレープフルーツカットを合わせました。


ピンクグレープフルーツのジュースをまとった幸水は
しっとりと程良い酸味と華やかな香りに包まれて
一層美味しくなりました。

異種の甘みと異種の触感の調和で
単体以上の存在感。

梨の名前が「幸せの水」ならば
このグレープフルーツの植物学名の意味は「楽園のシトラス」。

グレープフルーツについて
木や花の写真を含む英文記事を発見。
Grapefruit
08/05/12 14:52:46
By: Dr. Chandra Shekhar Gupta


グレープフルーツを食べることが大好きな人はもちろん
グレープフルーツ精油をアロマテラピーで活用している人にも
興味深い内容が記されています。

グレープフルーツは
1750年代に西インドのバルバドスで発見され
現在の主産地はアメリカ・フロリダとイスラエルです。
まるでブドウのように実り、白い花が咲きます。

2013年8月16日金曜日

梨(幸水)

農園から直送で届きました。



まれにみる酷暑が続き
疲れた身体には沁み渡るみずみずしさ。

幸水。ほんのりとした甘さに微香。
みずみずしい触感を引き立てます。


表面をクローズアップ。

薄いグリーンの上に黄色いもやもやが重なり
違うテクスチュアのドットが散らされた薄い皮。
まあるい窪みに
育った木から切り取られたおへそのような芯がのぞきます。

厳しい暑さからの救世主のような存在です。
酷暑の朝は水分不足のせいかフラフラしがちですが
ミネラル豊富な水分たっぷりの梨で目が覚めます。

子供のころに読んだ「ピノキオ」を思い起こしました。
空腹をいやすため梨の皮や芯まで食べてしまう
ピノキオのことが描いてありました。
私には芯までは食べられませんが。



his story and history・『漂流画家 佐々木耕成 85才』小田嶋 孝司 著

待っていた本が届く。



読みたい理由は二つあった。
一つは85才という年齢の数字。
実父(81才)を亡くしたばかりの私は、父と同年代を生きた一人の日本人画家がどのようにこれまでの時間を漂流してきたのかを知りたかった。
もう一つは著者と画家との関わりの歴史への興味。
著者の小田嶋さんは、私が大学卒業後の就職先で出会った師だった。

『漂流画家 佐々木耕成 85才』小田嶋 孝司 著 /株式会社 文園社

そして届いた今日、一気に一読。
佐々木耕成氏のこれまでの漂流を追う。
「彼」の略歴を本表紙折り返しの記載や本文を参照しながら記してみる。

1928年熊本に生まれ、満州にてソ連軍に遭遇。17才でシベリアに抑留され命懸けの脱走、帰還。郷里での様々な試行錯誤から画家を目指し上京。武蔵野美術学校在学中から新進気鋭のアーティストとして認められる。
1962年には「汎太平洋青年美術展」において「国際青年美術家展賞」受賞。現代日本美術展入選。脚光を浴びた当時ですら少々有名になったくらいで画家だけで食べていけないという現況を受け止め、東映動画でアニメーションの背景画を描く仕事もしていた。
1964年より前衛芸術集団「ジャックの会」にて活動後、日本のアート界と絶縁しニューヨークへ移住。最初の3年はフォード財団からの招待作家としてではあったが、その後はマンハッタンで内装工事を請け負うアトリエを主宰した生活を送る。
1985年、ヨーロッパ14か国放浪後帰国。1990年より群馬県赤城山中奥深くで定住。1996年自力でアトリエを建て創作活動開始。
2007年に、ニューヨーク時代に彼のスタジオに属し大きな影響を受けた人物の一人がインターネット検索により彼の消息を発見、同じくニューヨーク時代に彼に出会ったことが自らの原点であるという著者にも知らされ、当時の関係者が彼に再会。
2010年には東京、アーツ千代田3331にて彼の個展開催。
……まだまだ彼の物語は続く。

自分には何ができるか、を考え続けての漂流。
80才を過ぎた彼の言葉で、著者が特に感銘を受けたのが
本の表紙にもある
「僕ぁ、生きているだけで嬉しいのです。」
であるという。
確かにこの言葉には力がある。
人間なんて、一人では生きていけないから人間。
他人のおかげで生きられる、ということも現実であるし
他人のせいでいつ不本意な死を迎えてもおかしくないのが人間だ。
その両方、有り難みと危機感を何度も実感しなければ
心から言える言葉ではないだろう。

彼の物語を追いながら、著者小田嶋さんの物語も追った。
そして1945年から現在までの現代史も同時に読んでいた。
私が生まれる前の時間、戦争を体験した父が生きていた時間も含めて。
大学紛争の時代に大学生だった小田嶋さんが5月革命の余韻の残るパリで、デモ隊の先頭に立つJ・ポール・サルトルを目の当たりにした話…。
まるで映画を見ているような読書だった。
貴重な物語に出会えたことを嬉しく思う。



2013年8月14日水曜日

3年ぶりの読み直し・『フランス語のはなし もうひとつの国際共通語』

2010年春から夏にかけて読んでいた本です。
何度も読み返すことになる本だとは予感していました。



最初に私が特に知りたかったのは
フランス語使用の現状でした。
「フランス語は世界のどんな地域でどんな目的で学ばれ使用されているか。」
この問いが、この本を購入した理由です。

2名の著者は共にカナダ人でありフランス人ではありません。
これがどのような書物であるかは
出版社のサイトに記載された内容を見るとよくわかります。

書名: フランス語のはなし もうひとつの国際共通語
(大修館書店Webサイトより)


今回改めて私が読み直した目的は
フランス語そのものの歴史と
他言語との関わり方の確認でした。

この本を読み直し、改めて
母国語である日本語での思考・表現を日々大切にしながら
知りたいことの目的に応じて英語とフランス語を読むことも
続けていきたいと感じています。
毎日知らない単語に出会っていますが
その度に調べ、忘れては調べ…を繰り返していくうちに
言葉とイメージがリンクしてくるのでしょう。

4年前にブルガリアに仕事で訪れたときのことを回想しました。
先方の母国語はブルガリア語。
日本語を母国語とする私たちと彼らとの共通言語は商談ではもっぱら英語でした。母国語のように流暢にはいきませんが、聴きたいこと、伝えたいことが明確だったからユックリとでもコミュニケーションをとれたのかもしれません。
特別に紹介された現地の香料専門家は、英語ではなくフランス語が解るということで、私はフランス語で質問しました。彼のクライアントにはフランス語圏の人が多いのでしょう。
滞在中、「こんにちは」「さようなら」といった挨拶だけは
彼らの母国語に敬意を評し私はブルガリア語で伝えました。
満面の笑みで受け入れられたことは今も忘れません。

母国語の日本語すら、表現しようとすると辞書が欠かせませんが
外国語となるともっと難易度が上がります。
知りたいこと、達成したいことが多様に、深くなればなるほど
その根源となった言語を学ばざるを得ません。

2013年8月13日火曜日

三つ葉の中から花開く

夏の訪れとともに
ベランダのプランターにいつのまにか繁茂していた植物たち。

種を蒔いたわけではない。

先週はそのひとつであるスイカに注目していた。
実はこの植物も
別のプランターの中で
径にして約1センチの可憐な花を咲かせていた。



ちょうどこの時間帯は
ちいさいながらも全開。

雨がふると花を閉じている。
夜も閉じている。
そんなときふと周囲のグリーンを見ると
三つ葉も葉をたたんでいる。

こんなに厳しい猛暑でも
ゲリラ豪雨があっても
雨や光や空気を察知しながら静かに生きている。
カラカラの陽射しがつづくと
つい水を、という気持ちにさせてしまう沈黙の生き物。

ベランダでは
スイカ、イヌホウズキの近くで
今日も可憐な花が咲く。


(お詫び)
この記事を最初に投稿したときは、
この植物を三つ葉からクローバーと記しておりましたが、
実際にはクローバーではなく、カタバミの一種ではないかという
ご指摘をいただき確認いたしました。
そこで、あえて固有名詞で記すことを控え
最初の投稿時からタイトルを変更いたしました。

2013年8月10日土曜日

Eaudemoiselle de Givenchy Ambre Velours・色だけでも秋を感じて待ち焦がれたい

もうそろそろ秋の気分に移行したい。
そんな贅沢なことを言えるのも
どんなに猛暑が続いても必ず次の季節は秋…
と思える地域に住んでいるからかもしれない。

素材や形は夏服から逃れられなくても
せめて色だけでも秋を感じて待ち焦がれたい。

そんなことを考えていたら
2010年デビューのコチラ
見事に私好みの秋色ボトルで発売のニュース。

Eaudemoiselle de Givenchy Ambre Velours
08/07/13 15:27:56
By: Sandra Raičević Petrović


熟した深みと
奥ゆかしくもミステリアスな温かみ。
そんな印象を受けるこのボトルカラーの中には
どんな香りがあるのでしょうか。

pink pepper, plum
patchouli, cedar, rose
opoponax, tonka, amber, benzoin, tolu balsam

あの真っ赤なピンクペッパーは
チョコレートのほろ苦さによく合うし
ワイルドな肉料理にも合うスパイス。
プラム。イチジクとともに私にはかけがえのない魅惑のフルーツです。
湿った妖しさがミステリアスなパチュリ、セダーの深さ、
オポパナックス、トンカ(ビーン)、ベンゾインなど
どこか懐かしい甘みをほのかに漂わせる樹脂系に…
とこんなにも複雑で温もりあふれる香りたちとともに
ローズはどんな表情を描くのでしょうか。

この香りは夜の外出時にお勧めとのこと。
オードモワゼルの気品はそのままに
大人の落着きと温かさを携え
秋の夜長をエレガントな存在感で魅了する淑女に。

2013年8月9日金曜日

スダチとトマト

スダチをいただきました。




果汁を絞って感じる香りは
マイルドなシトラスグリーン。
レモンやライムよりも柔らかくライトな酸味です。

主産地は日本の徳島県。
徳島県ではスダチ精油もつくられているようです。
日本香料工業会 ユズ、 スダチ、 カボスによると、酸味が強く、生食にむかない柑橘類を「香酸柑橘(こうさんかんきつ)」と呼び、ユズ(柚子)、スダチ(酢橘)、カボス(香母酢)は、これに入るとのこと。

さて
ユズと違うことは、出荷されているときの果皮の色でわかりますが
スダチとカボス(主産地は大分県)の最大の違いはその大きさです。
スダチとトマトを並べてみました。


直径3センチ強でしょうか。なかなか小ぶりです。

このスダチは
ソーダ割、カクテルや梅酒にはもちろんですが
焼き魚などにもキュッと絞っていただくと
素晴らしく上品な酸味と香りとが味をひきたてます。
魚に触れてちょっと生臭くなった指先も緑の果皮で拭くと
気にならなくなります。

魚との相性でいえばトマトも。
ニンニク、塩、コショウをまぶした魚の三枚おろしを
トマトのみじん切りとともにオリーブオイルでソテーすると
トマトの酸味が魚によく調和してくれます。

慣れる幸せと馴れない幸せ・真夏の中にも秋を感じて

猛暑の中にも
一瞬の風の匂いや夜の虫の声から、かすかな秋を感じて
装いの中に葡萄色を入れてみたのは昨夜のこと。

昨夜。ツイッターをきっかけにご縁をいただいた方の
新しい著書の出版記念パーティーに出掛けた。

ツイッターを始めてから3年と2ヶ月半。

ふと3年前の8月8日のツイートを振り返った。
全く別の時間が流れているにもかかわらず
ここ数日感じていたことを3年前も感じていたと知り、驚く。



2010年 8月8日
Sawa Hirano@sawaroma

慣れる幸せと馴れない幸せ、どちらも大切に思う。慣れることでその先へ進化できる喜びもあれば、馴れないことで保てる鋭敏さもある。季節の変わり目、微妙な風の匂いも日落ちの具合の変化も確かに秋へと近づいている。
posted at 00:44:36

2010年 8月8日
Sawa Hirano@sawaroma

5年前から共に暮らしているシェフレラ。葉をぐったりさせることもありつつ、密やかに新しい小さな葉がうまれてくる。みるたびに感激。植物はゆっくりと動いて新陳代謝をくりかえす。
posted at 14:25:04



まさにそのシェフレア。


ちょうど昨日も
こんなツヤツヤのベビーリーフを見つけたばかり。
水をあげながら、「元気だね」と声をかける。

今年も健在。8年も小さなガラス鉢の中で生きている。
シェフレラへの感動に馴れることはない。

慣れる幸せ…「自分がいつまでたっても知らないことばかりであること」には慣れたかもしれない。一つ知ると倍以上の知らないことが生まれる。知っていたつもりのこともうっかりすると知らないことになっていく。だから知ろうとする気持ちが消えることはない。なにかを知りたくて調べたくて考えたくて目覚める朝こそが幸せだと改めて思う。


2013年8月7日水曜日

ちいさなスイカさん

今日は立秋。
秋の季語の一つに、スイカがあります。

数週間前から
ベランダのプランターに勝手に生えたつる植物?とおもって
巻きつくものを添えてあげたところ
どんどん登り…
手すり到達ポイントに
こんなスイカさんが実りはじめました。

まだ直径5センチほどですが
日に日に大きくなっています。



どうなることでしょう。

しかし…
1月にベランダの大掃除をしたときにたまった泥や枯草を
プランターや鉢の上に載せたままにして放置したのですが
それが思いのほか栄養になったのでしょうか。

まさか今夏、自宅でスイカさんに会えるとは…。

数年前に読んだ
福岡正信さんの著書『自然農法 わら一本の革命』(春秋社)
を思い起こしています。

勝手に自然を活かして時を読み、成育する植物に
敬意を感じつつ、このスイカさんはもちろん
グンと繁茂した三つ葉など、他数種類の行く末を
観察したいと思います。

JAZZ という名のリンゴは夏から秋の香り

朝のフルーツでは
リンゴが大好きなものの
日本では今は旬ではないので
いまひとつ香りは楽しめず…
と思っていたら
こんな元気な色艶のリンゴに出逢いました。



どことなく
桃のようなこじんまりとしたカタチとグラデーション。
むいてみました。
ふわっと柔らかな甘いフレーバーがフレッシュに香ります。

シャキシャキとした歯ごたえ。
桃のような…洋梨のような…
なんだか夏から秋に実るバラ科植物の果実を彷彿と…。
甘く酸味のある香りがデリケートに漂います。

甘さと酸味のバランスも爽やかで
これからの残暑厳しい朝にピッタリかもしれません。



ニュージーランド産の品種、JAZZという名のリンゴです。
ちょうど季節が反対の国からようこそ。

そろそろ立秋。

2013年8月6日火曜日

"Waft Don't Draft"( 吸い込むのではなく漂わせて)・香りとの最初の出会い方


匂い物質を意識的に嗅ぐことに慣れていない人の多くは
強弱も特性もわからないのに
大胆にいきなり対象を鼻すれすれに近づけようとされることが多く
結果としてあまりの強さにショックを受けて拒否反応を示すケースもあります。

予め香料がアルコールで希釈された香水を愛好していた私は
香水の秘密への好奇心から香料そのものにも興味を示すことになり
その流れで香料原液というものに触れました。
希釈された香水ですら
人肌に馴染み、体温や動作による空気の流れで程良く香るというのに
原液がそのままでは強すぎる、と感じられやすいことは容易に想像できます。

うすめられていない精油やアブソリュート等、香料原液の強い香り方は
自然状態での香り方とは異なり、インパクトがあります。

香料の専門家でない限り、初心者はまず
広い空間に程良く漂わせた状態の中で香りを感知するか
あるいは、予めアルコールかオイルに希釈したものを直接かいでみる、
といったアプローチに導く配慮が必要であると考え
私の香りの講義でも実践しています。




上の写真は1999年に出版されたその年に入手した本の表紙です。

当時日本語に翻訳された精油やアロマテラピーの本をいくつか読んだものの
どうもわからないことが多く、英語圏に情報を求めたのでした。
この本には375種類の香料植物における学名の背景をはじめとし
当時情報が少なかった芳香蒸留水のことまで実に詳しく記されています。

この本の第3章、29pにこう記されています。

Remember: Waft Don't Draft

「憶えておいてください、吸い込まず、漂わせて」
という意味になるでしょう。draftの意味は色々ありますが、後述の文章と照合するとこのように訳せます。いきなり吸い込むのではなく、鼻から試香紙を少し離して風を起こすように揺らします。揮発性の高い香りは特に鼻から離し風とともに漂わせた状態でないと、デリケートで複雑な香りのプロファイルを感じることはできないでしょう。

このような体験を重ねていくうちに
香料原液の嗅ぎ方にも適度な距離感をもって
のぞめるようになります。

改めて香りに向き合う姿勢の原点を
懐かしい本の一文で振り返っています。


2013年8月4日日曜日

夏の定番・グリーンゴーヤ


店先にならぶゴーヤ。




時々、「ゴーヤ」ではなく
「ニガウリ」「ツルレイシ」等の名前が表示されています。
「ゴーヤ」は沖縄での呼称らしいのですが
私にはこの音がピッタリ響きます。


豚肉や豆腐と炒め鰹節パワーで
苦味を和らげて頂くゴーヤチャンプルーもありますが
我が家では数年前から、生のままで食べる定番があります。

ゴツゴツ・グリーンなゴーヤをよく洗い
中のワタをとって薄い半月切りにスライス。
昆布ダシの素、もしくはこぶ茶粉末をふり
微量の醤油とほんの数滴の植物油を加えて和えます。

これで冷蔵庫に30分。
ほんのり苦味がアクセントになって美味しいシャキシャキゴーヤ。
みずみずしく、グリーンな香りとともにまさに夏を感じます。

グリーンなゴーヤも
実は熟すとこんな色に。
甘くなって鳥でも魅きつけるのでしょう。



そういえば
パパイヤも甘い果実として食べられるのは黄色くなってからですが
野菜としてシャキシャキ美味しいのはグリーンなころでした。

2013年8月3日土曜日

調香師の言葉より・アクア アレゴリアに込められた想い

2003年3月、
フランスの老舗香水ブランド「ゲラン」の4代目調香師である
ジャン-ポール・ゲラン氏来日講演のメモを記録した手帳は
私の宝物の一つ。

彼によるアクア・アレゴリアシリーズは1999年から発売されており
このシリーズに込めた想いを彼自身が語った時の私メモには
* 〜*のように記されています。
話されるフランス語を断片的に聴き取ったので
今読むと詩のよう。


アクア アレゴリアム
好きな花
好きな庭

に敬意を表して調香
1999年
5つの香り
天然の素材への情熱、庭への想いを込めて
美しい自然
ほんとうの美



さて、アクア アレゴリアム。
「アクア」は水。
どうもラテン語が語源のよう。
「アレゴリアム」とは実はギリシャ語。
現代美術用語辞典で見つけました。
抽象的な概念や思想を、具体的形象によって暗示する表現方法である、というような解釈が長々と記されています。

1999年発売の5作のうち2作をご紹介します。

まず
Pamplelune(パンプルリューヌ)は
グレープフルーツをはじめとするみずみずしいシトラスの明るさが
ネロリやカシス、ベースのパチュリやバニラとともに柔らかく表現され
初めてフレグランスを手にする年頃はもちろん
幅広い年代に愛される普遍性を持っていると感じます。
昨日ちょうど16才の女性に進呈。
気に入って頂けたようで嬉しく思います。

もうひとつ、
Herba Fresca(エルバ フレスカ)は
ベストセラーになったそうですが
フレッシュな活力漲る青葉の中にひんやりと香るミントが
まさにアロマティックなハーブの息吹そのもの。
そのような第一印象から
時間とともに拡がるロマンティックなニュアンスには
性別年齢に関係なく魅きつけられそう。

2作とも、時を選ばない香りではありますが
特に今の季節、日本の方にも喜ばれそうなタイプです。


2013年8月2日金曜日

青×茶のモダンストライプに魅かれて…和菓子と出逢う

今日は偶然、素敵な出逢いがありました。

八重洲北口にて
「和菓子を東京みやげに」
という母に付き添い
思わず目で一瞬にして選んでしまったのはこの模様。



青×茶のこのモダンなストライプ、
手書きふう漢字カナ交じり文字…
全体的に潔くシンプルな外装を見て
アズキの香りとモチモチした触感を上品に楽しめるはず、
なんて想像してしまいました。

結果は期待通り。
程よいサイズで、甘いものを多く食べられない私でも
あっという間に美味しくいただけました。

和菓子の美味しさが
和の佇まいを活かしながら
モダンな視覚デザインで表現されています。

ふるや古賀音庵 の「餅のどら焼き」。

なんと幡ヶ谷のお店。
かつて私が大学生の頃に住んでいた地域であり
懐かしさもひとしおです。

2013年8月1日木曜日

調香師の言葉より・香りとの出逢いは恋に落ちるような感覚


写真家から転身、調香師となられた
カミーユ・グダールさんへのインタビュー記事を発見。
ELLE オンライン 2013,7,24
カミーユに質問! フランス流香りの楽しみ方


6月の新作発表会のために来日されたときの
気さくで柔らかな笑顔が印象的でした。

カミーユさんの母、アニック・グダールさんも
ピアニストから調香師になられた方ですが
いずれにしても五感を研ぎ澄ませて表現に没頭されたご経験は
五感すべてを刺激して楽しめるフレグランスの魅力を創出するために
十分活かされているように感じます。

五感を刺激する素敵なものと出会うためには
既成概念・先入観に縛られないオープンマインドで。

感覚に訴えてくるインパクトを察知したら
それをどう感じたのかをまずは自分が正直に受け止め
その意味を探りつつ
まだ誰も知らない宝物のようなイメージを
さまざまな方法、たとえば言葉で記録していくことが
必要と私はいつも思っています。
ですから、私が行う香りの講義でもこのプロセスを
大切にしています。

たとえば香料素材。
素材そのものから調香師自身が
まるで恋に落ちるかのように
感覚のアンテナがピンと立つような
「美」を感じとっていなければ
その香料を表現に活かすことはできないでしょう。

フレグランスの選び方としてカミーユさんは
「なによりも直感! 肌につけたとき、ふと香るフレグランスに恋に落ちるような感覚につきます。」
とおっしゃっていますが同感。この感じ方がすべてです。
本人が気に入り、それを適度な香り方を工夫して身につけて初めて
「香りを着こなす」と言えるのでしょう。



白い花の香りが大好きというカミーユさん。
そういえばコチラ の発表会のときも、会場に飾ってあったカミーユさんのフォトの近くには白い花がありました。

「美」とは既に有るものではなく
感じて、発見して、創るもの。
香りを創造する人たちも
そんなふうに考えているのではないかと思います。

夏を癒やす色・瑠璃茉莉(プルンバーゴ)は南アフリカ原産

6月の終わりごろから時折みかけるこの花。
清楚なブラウスに身を包む涼し気な女性のようで
いつも足をとめられました。


最近になってその名前を知ることができました。

株式会社 科学技術研究所のコチラのページによると

イソマツ科のこの植物の和名は
ルリマツリ(瑠璃茉莉)。

ルリとは瑠璃が花色を
マツリ(茉莉)は花形がジャスミン(茉莉花)に似ていることから
付けられたとのこと。
ジャスミンのような香りはありません。

そういえば、と思い起こしたのは
風になびく姿を、ぶれることを承知で撮影したこちらの写真。
まさに瑠璃色です。


学名のPlumbagoから、別名でプルンバーゴと呼ばれているそうです。
なにやら異国情緒たっぷりの音ですがどんな秘密があるのでしょう。

季節の花300 瑠璃茉莉 によると
学名 Plumbago capensisの
Plumbagoは「ルリマツリ属」
capensisは「南アフリカ喜望峰地方の」を示し
Plumbago(プランバーゴ)はラテン語の「plumbum(鉛)」が語源。
この植物が、鉛中毒の解毒に効くことが由来だそうです。

色と形から視覚的に癒されるだけでなく
実際に人の不調を癒やす作用もあったそうで
名前にこめられた意味の深さを改めて感じます。