2011年12月31日土曜日

Styling with Fragrance 2011 ② (バッグとコートとハンカチと)

今春、今夏、今秋。
私を笑顔にしてくれた三つの方法。

春。
まだ寒い日曜日の朝。新幹線に乗り込む。
遅れた電車の影響で走ってホームへ。
息切れしそうになるくらい走った。
やっと席に座ったとき。
バッグから薔薇の香り。
ブルガリアのダマスクローズ。
香りを1滴含ませたコットンをバッグの内ポケットに
昨夜入れておいたことを忘れていた…
同時に自分の身体から体温ととも立ち上がる香水の香り。

夏。
盛夏でも正装。
ブラウスにスカート。
打ち合わせの場所に行くまでの電車。
乗り換える前にすでに汗。
次の電車を待つホームで折りたたんだハンカチを襟元へ。
ちょうどブラウスの襟に隠れるサイズと厚み。
ハンカチの真ん中に予め吹き付けられたフレグランスは
汗を吸いながら体温であたためられたハンカチの中を
ユックリとふんわりと通り過ぎ
清々しい風になった。

秋。
明日は初コートの日と決めた。
一度風に通す。
そして
フレグランスを吹き付けたコットンのセーターに
そのコートを羽織らせてハンガーに掛ける。
コートに裏地はないけれど
目に見えない暖かな香りのヴェール。

…この冬。
何度か素肌に着用した香水の香りが
いつのまにか
素肌からは遠いジャケットにうっすらと移っている。
忙しかった仕事の時間に着ていたはずなのに
残り香が華やかであることは嬉しかった。

2011年12月27日火曜日

Styling with Fragrance 2011 ①(髪と手帳と襟元と)

20数年前、知人に頼まれてフレグランスのセミナーを行ったことがありました。対象はデザイナーとして企業に勤める30代前後の女性の方々。視覚的にはファッショナブルでも香りは??という女性のために私が作った当時のレジュメタイトルが"Styling with Fragrance"。

今日そのレジュメを発掘して再読するに、昔も今も変わらない興味の対象を愛おしく思いつつ、今年2011年に特に私の気分を上げてくれた方法を三つご紹介しようと思います。

まずは髪。
すれ違ったときに、髪に揺れる動きが生まれます。この髪先に少しだけお気に入りのソリッドパフュームを馴染ませるのです。オードトワレを吹き付けたコットンやハンカチで軽くねじった髪先を包むようにしばらくおさえてもよいでしょう。(香水を髪に直接吹き付けると強く香りすぎるためおすすめしません)伸ばした髪先がバストの下あたりであれば、やや鼻からも程よく遠い距離。首の動きとともに空気が揺れて髪先から香ります。

手帳。
私の場合は、手のひらに収まるサイズのこちらでもご紹介のノート。このノートに今年もたくさんの名言や知恵、貴重な情報の数々を書き残すことができました。この中にはいつもお気に入りの香りを吹き付けたカードを挟んでいます。たとえば、自分の身体に直接纏うわけではなくても、手元からふわっとラストノートが香ると優雅な空気が流れそうなタイプ。打ち合わせのとき、自分だけでなく共に近くにいる方にとっても心地よく感じられるために。

襟元。
特にシャツブラウスの襟元のお手入れは大切。最も皮脂がつきやすくその皮脂が酸化したにおいがつきやすいところ。コチラ
でもご紹介したように薔薇の香りでふんわり洗い上げるのも良いですし、明日着る予定のクリーニングしたばかりのシャツの襟元に、ローズ、ラベンダー、ベルガモットなどの天然精油の香りを含ませたハンカチを細長く畳んで織り込んでおくのもグッド。ローズもラベンダーもベルガモットも、オーデコロンをはじめとする香りに使用される天然香料であり、精油自体に濃く強い色もありません。鼻に近い位置でも天然のシンプルな香りであれば、自分の清楚な笑顔の源になることでしょう。

2011年12月25日日曜日

クリスマスイヴに温かなトリオの響き(THE GLEE 神楽坂)

クリスマスイヴ。
神楽坂へ。
12月にオープンしたばかりのTHE GLEE は飯田橋から歩いても5分もかからない。



Christmas Eve Special 2011(AKIKO GRACE VOICE )
真新しいウッディな空間の中で、トリオの演奏はどんな風に響くだろう。


暖炉のある空間でボストン在住時代に音楽仲間とセッションしながら過ごしたクリスマスイヴを思い起こす…と語りしなやかにピアノからイヴの空気を映すAkiko Grace、5弦の大きなコントラヴァスを身体の一部のように駆使しながら深く熱い音を紡ぎ出すMasashi Kimura、2か月前にボストンから戻ったばかりのKazumi Ikenagaのリアルで有機的なリズムのドラムス…

シンプルなオレンジ・ブロッサムのカクテルとともに心温まる一時。

鍵盤とローズオットーで記された「ピアノ・アロマティーク」コンサートでご一緒して以来、私もAkiko Grace、そしてそのトリオのファン。移籍後初のライヴにてグレースさんにお会いし、ご挨拶できたことは何より嬉しい。

新しいAkiko Grace Official Homepage とともに、2012年も更なるご活躍を!



2011年12月24日土曜日

言葉を贈る

ひさしぶりに気持ちの良い朝。
クリスマス。世の人は何に感謝し、その気持ちを何で表現するだろうか。

今月に入り知人の誕生日が続いた。ほとんど会えていない知人には、「おめでとう」と言うだけでも十分に感じた。なぜなら自分の誕生日のとき、滅多に会えない人から一言そう言われるだけで、「その人は私を憶えていてくれた」という有難い情報を得たと感じたから。

普段からよく会っている知人に対しては?「おめでとう」だけではなく、普段自分がその人を見ているイメージからこれからも素敵であるように、という願いをこめたフレーズを贈ってみた。広義で深い意味も込め、あえて外国語で書いたりもした。

ここ数日目にした雑誌と新聞から私に響いたフレーズを列記してみたい。
再び眼にする自分と、この記事を読まれる方々への言葉の贈り物として。


樹々は寒くなると葉へ運ぶエネルギーを節約して、根を守る!枝葉は切り捨てるのでしょうか、自然は厳しいですね、人は自然に立ち向かうものです。それでこそ人間、文化は自然への抵抗なのです。/平田幸子
(12/20創刊40周年を迎えた香りの専門誌"PARFUM"編集後記より編集長の言葉)


ピアニストという職業はつらいし困難を伴うし、果てしなく練習を続けなければならない過酷なもの。偉大な作品と日々対峙していると、自分がいかに敗者かと思い知らされる。作品がいつも勝者だから。でも、そこであきらめずに模索を続けるという意味では勝者になり得ると思う。いい演奏をするために一生自己と闘い続ける。その挑戦がたまらなく、心が高揚する。
/1981年生まれのフランスのピアニスト、ダヴィット・フレイの言葉
(日本経済新聞12/22夕刊10面・音楽ジャーナリスト、伊藤よし子取材)


最後に、日経新聞12/20の書籍広告の中に私の知人でもあるフラメンコ舞踊家、鍵田真由美さんの名前を見つけて存在を知った本「美人伝心」(講談社)のPRコピーを一行。鍵田さんはこの本に自身の言葉をおさめた15名の1人である。

本当の美しさは、生き方から生まれる。

2011年12月23日金曜日

" Effluves androgynes "・性別はさておき人として魅力的か、匂いは語る

11月のフランス語講義でのこと。一人の中国人学生からこんな質問。
「先生、ゲイの人のことを説明するとき、名詞の性や所有形容詞はどう考えればよいのでしょうか。」

私が想像するに、対応としては三つある。学生にもそう伝えた。
1,名詞に性別などない英語を使う
2,生物学的な性別はともかく、自分はこの性と思いたい性で表現する
3,言葉はあくまでも言葉だから生物学的性別に従うのみ

この問答から発展して考えたのは、
性差の縛りから離れ、それでも人として魅力的であるということはどういうことかということ。改めて自分の人に対する感じ方を振り返る。初めて会う人、もしくは既知の人であっても今という瞬間に目の前にいる人に対して、外観から漂うオーラ、話し方や生きものとしての外向きな情熱の向け方に魅力を感じるかどうかが、その後のその人と自分の関係性に影響を与えていた。

どんなことを考え、どう生きているかというのは自ずと顔に刻まれ、体型にも反映される。何を美と感じるのかという意識はすべて外観とともにその人の匂いとしてオーラをかたちづくるのだ。これまで人と接してきて痛感する。

そこに男だから女だからという区切りはない。美に性差はないのだから。一個の生命体として魅きつけるオーラを携えているか。ただそれだけ。

Effluves androgynes…フランスの美容雑誌で見かけたフレーズの意味は、「男女両性の匂い」。おそらくはユニセックスの香りとして男女かかわらず使用できるフレグランスの紹介記事なのだろう。面白いのは"Effluve"(おもに複数形で使われ、におい、臭気、香り/ 文語として、精神的な息吹、輝き ー プチロワイヤル仏和辞典より)という名詞を使用していること。これは"Parfum"や"Arôme"のように芳香のみを示す言葉ではない。

人は、自分を鏡で観ながら、匂いをかぎながら、これぞ自分という表現を考えるとする。大概私の場合は鏡を観る前に身につけたものがいくつか省かれる。ただし、その気分の源には、第一の衣服として肌に直接身につけた香りが漂っている。他人にはわかっても自分でも気づけない、これまでの自分を表す表情や話し方の源には気分がある。その気分がオーラを作るとしたら、第一の衣服は単純に男性用か女性用かという尺度ではない美意識で選ばれたものであってほしい。

そうした意味で今年発売されたファッションブランドから発売されたフレグランスの中では、メゾンマルタンマルジェラの初フレグランスは気になる香りのひとつ。その他、彼も彼女も纏える上質感を提供するという、父娘という異性調香師ユニットで創作されたザ ディファレント カンパニーのピュア ヴァージン も見逃せない。

外観とともに、匂いは、その人を物語る。


2011年12月22日木曜日

創刊40周年 "PARFUM"160号発刊

香りの専門誌 "PARFUM" 160号が12月20日に発刊。1971年の創刊からちょうど40周年を迎えました。


記念日すべき40周年号には、1971年当時の表紙や誌面がアーカイブとして紹介されています。40年という継続性。それは常に変化する時勢の波に乗りながらも、揺るぎない軸を保ってきたという一つの証でもあります。香水をはじめとする香りの文化、芸術、映画、アートについてビジュアルイメージを大切にした誌面。日本では唯一の「香りの専門誌」です。

私はちょうど20年前、秋号と冬号の2回に渡り初めて寄稿しました。内容はフランスの雑誌記事を参考文献にした香水評論と、ミラノで出会った最新の香水との出逢いのエピソードでした。遡って創刊の年、ちょうど6才といえば私が香水に出逢った頃。偶然とは思いたくない縁を感じます。この雑誌に出逢い、香りのことをより深く知りたいと思った延長上にアロマテラピーとの出会いがあり、そんな背景があるからこそ現在の私の仕事が成立していると思うと感慨深いです。

160号誌面から、チョット気になる香水をいくつかご紹介しておきます。
パルファン ドルセー パリ。アルフレッド・ドルセー伯爵の感性で1830年に生まれた香水の美意識が受け継がれた香り。
ゲラン シャリマー パルファン イニシアル ロー オーデトワレ。来春発売予定とのことでゲランのPRマネージャーへのインタビュー記事が掲載されています。これはコチラ で書いたようにシャリマーファンとしては要チェック。
そして、イタリアのオロビアンコから二つの新しい香りがこの冬日本デビューするというのも嬉しいニュース…
寒い冬も香りのおかげでホットな気持ちを保てそうです。

2011年12月20日火曜日

甘酒は「ジャパニーズヨーグルト」?「飲む点滴」?

私の非常時を救ってくれた飲み物を改めて評価しています。
それは「甘酒」。新年の初詣の名物の一つでもあります。

このところ、ハードワークが続いていました。考えることと作業の多さが睡眠時間をかなり削っていたこともあるのでしょう。昨日午後から胃腸が不調。吐きそうで吐けない不快な状態が続いたので、少しずつ水をのみ、ひたすら腹式呼吸をゆっくりして気分を落ち着けて新幹線ではなんとか耐えたものの、品川に着いて山手線で降りた駅ホームの影で持っていたレジ袋に嘔吐。つわり以外に吐くなんてことめったにありません。誰にも気づかれず何も汚さずに済んだことは幸いでした。でも胃腸が弱っていることは明らかだったので帰宅後はすぐにシャワーを浴びて身体を温め早く眠れる体制に入りました。

何か食べようという気にはならないものの、何も食べないと衰弱していく感覚に襲われました。力が入らないし、寒気も増しています。そういえば自分の胃から出てきたものが入った袋を密封して持ち歩いていたとき、なんて中身が温かいのだろうと感動。こんなに外は寒いのに人間の内部はこんなにも温かい温度を保っている…それだけエネルギーを消耗しているということが容易に想像できました。何か栄養を胃腸に負担をかけずにとって体温も免疫力も維持しなければ…そう思ったときに思い起こしたのが、母が送ってくれていた山田養蜂場のれんげ米の甘酒。

れんげを有機肥料にする農法で育った米のみから昔ながらの製法でつくられ、上品な甘みと発酵による様々なビタミンが含まれる液状の甘酒なら飲めるだろう…その勘は的中。

昨夜につづき、今日もどうしても休めない大学講義のために出かけなくてはなりませんでしたが、その前にこの甘酒を一杯飲んでいっただけで夜まで倒れることなく仕事ができました。

かつて、発酵食品にはめっぽう詳しい小泉武夫氏の著書を何冊も読み、その中に甘酒がいかに江戸時代の夏バテ防止のために重宝したかというエピソードが書いてあったことも改めて思い起こします。
夏ばてに甘酒? 実は栄養ドリンク/南 恵子/ All about を見ると詳しく説明されています。

日本の知恵が生んだこの飲み物。素晴らしいです。発酵食品であり胃腸の調子を整えてくれるというメリットもありそうですし、なんといっても暑い江戸の夏の人の栄養補給に役立ったくらいです。「ジャパニーズヨーグルト」、「飲む点滴」として非常時にキープしておきたいと改めて思いました。


2011年12月18日日曜日

'80年代前半の映画から

かつて卒業した高校から名簿原稿の確認が届く。
15~18才の間。私は高校生活の思い出がほとんどないかわりに、この時期に映画館で観た映画の印象はよく憶えている。
何かの機会に映画から当時のことを思い起こすかもしれない。
そう思い、当時観た映画のタイトルで今憶えているものを挙げておこうと思った。観た映画全てを憶えている自信はない。しかし、観て後悔したものはないことだけは憶えている。

ベストフレンズ
四季
普通の人々
グロリア
テス
ラ・ブーム
フェーム
殺しのドレス
白いドレスの女
ある日どこかで
コンペティション
9 to 5
ザナドゥ
レイダース/失われたアーク
007ユア アイズ オンリー
炎のランナー
レッズ
E.T.
愛と青春の旅立ち
ブレードランナー
ポルターガイスト
キャット・ピープル
黄昏

…今のようにビデオレンタルという手段もなく、観たければ映画館に行くしかなかった。当時「スクリーン」や「ロードショー」といった雑誌を兄が購読しており、情報を得ようとしたらそこそこあったのかもしれないが、世間の評判など気にせず、何となく観たいものを観ていたのだと思う。

上記の映画のうち、音楽が今も記憶に焼きついているものの一つがピアノコンペティションをテーマとした「コンペティション」のエンディングに流れたランディ・クロフォードの"People alone"。懐かしく思い起こし、調べてみたらその年のアカデミー歌曲賞にノミネートされていた。
「ベストフレンズ」ではジャクリーン・ビセットの影のある官能性に強く魅かれた。クリストファー・リーヴといえば「スーパーマン」を思い起こす人も多いかもしれないが私は「ある日どこかで」。「テス」の衣装もさることながらナスターシャ・キンスキーの女神的容姿に感動した私はその後も「キャット・ピープル」などを観てしまうことになる。
「ラ・ブーム」で見たリセに通うパリの女の子の日常。日本の、しかも地方の修学旅行もないお堅い進学校に通う同年代の自分とはあまりにも違うライフスタイルの存在を実感。後にソフィー・マルソーは同じ監督によって「スチューデント」(L'Étudiante)という映画でも主演しているがこの映画での彼女が私は特に忘れられずフランス語の台本ブックまで買ったほどだった。

高校の会報誌に一度私の文章が掲載されたことがあった。二年生のとき。タイトルは「映画 炎のランナーを観て」だったと思う。この映画によって私はまだ訪れたことのないイギリスという国を想像し、その印象を強くしたことだけは今も憶えている。







2011年12月15日木曜日

音楽の国だから…イタリア人が歌舞伎を鑑賞するとき

昨夕、文化学園大学新都心キャンパスにて、平成23年度服飾文化特別講演会「歌舞伎 その色彩とデザイン」を聴講。講師は、松竹株式会社 執行役員 演劇製作部担当の岡崎哲也氏。

楽しい90分だった。岡崎氏の流暢な語りと映像で、歌舞伎を鑑賞している自分を想像できた。さまざまな舞台設営の意味、上方と江戸のセンスの違い、衣装の色彩にこめられた人物の心情や背景などいずれも興味深いものであったが、講演後、海外での歌舞伎の反応に関して質問した人への回答の中で岡崎氏が明かしたエピソードが私にとってはタイムリーに印象的。


イタリア人は同時通訳を耳で聴くのを拒否。「我々の国は音楽の国だから、イヤホンで片耳をふさぐことなどできない」と。そこで舞台上部のイタリア語字幕に頼るしかないのですが、その字幕に関しても「文章はできる限り短く」と注文がつきました。逐語訳などもってのほかということで簡略に伝えなくてはなりませんでした。


「音楽の国だから」。
なるほどそういう言い訳もあったのだと素直に納得。
実は先日私も、外国人による某講演会で同時通訳がきけるイヤホンを渡されたがつける気にならなかった。耳を片方塞がれただけで感度がかなり落ちるような気がするのと、たとえ聞き取れない言葉や意味のわからない言葉を発せられたとしても両方の耳で聴き、目で見て、空気感全体を五感で感知しているとそれなりに伝わってくることがある。概略は目で読める資料もあったのでなおさら。講演会ですらそうなのだから、オペラ同様、歌舞伎に対しては伝わってくる音の世界も純粋に楽しみたい気持ちはよくわかる。

「字幕の文章はできる限り少なく」。
これも然り。とかく異文化圏の人に対して日本人は日本独自の文化を細やかに丁寧にわかってもらおうと押し付け気味な傾向を感じることが多々ある。でもそんなこと、最初から先方は望んでいない。歌舞伎という芸能をまずは楽しみたい。彼らの慣れ親しんできた文化の文脈(コンテクスト)に沿って。楽しんで感激してハッピーになって初めてその先を知りたいと思うだろう。詳細を説明するのはそれからでよいのだ。


2011年12月14日水曜日

薔薇の香りの言葉を読んで・ローズウォーターの音色から

前回のブログ の中で、調香師ジャン=クロード・エレナの言葉を引用し、「香りは言葉」であるという考え方を記した。その素材としての意味を理解して表現に生かすものという考え方。

今年後半、そんな考え方を改めて強く思い起こすフレグランスに遭遇した。
ゲランのイディール・サブリーム。
フレグランスとしては初めて、天然ローズを蒸留して得られるローズの精油と、同じく蒸留によって同時に得られるローズウォーターを合わせて使用されているという。非常にフレッシュで繊細なフローラルの香りが実現したであろうことは海外のこちらのサイト文章やCM画像からもよく伝わってくる。
Idylle Eau sublime(Guelain)-new perfume review-1000 fragrances

私にとって、ブルガリアのダマスクローズの香りはさまざまな意味を持つ。
精油であるローズオットーは、「花を必死で守る緑の苦味」「蜂蜜様の甘さ」「ベリー系フルーツの甘さ」「複雑な陰影」「花を育てた土のあたたかみ」…
とにかく辞書をひくとたくさんの意味が並ぶ単語のごとく、その言葉の意味はひとことでは言えない。
ローズウォーター。この香りの言葉もたくさん挙げられるが筆頭は「フレッシュグリーン」。そして、ローズオットーとローズウォーターが組み合わせられると、青空にきらめくように咲くダマスクローズの一瞬の香りがよりリアルに想像できる気がする。

そんなことを考えていた矢先、来春デビューのフレグランスにもローズウォーターが使用されたとのニュース。

クロエ(CHLOÉ)より、春のそよ風のようにさわやかな新フレグランスが2012年3月に登場/ Fashion Press

ボトルはフレッシュグリーン。
春のそよ風。ローズウォーターの音色から、どんな風が流れるのか。

2011年12月11日日曜日

ジャン=クロード・エレナ 調香師日記(原書房)

ジャン=クロード・エレナ調香師日記。
原書房 近刊案内 にて紹介されている。

エルメスの専属調香師にして、"THE DIFFERENT COMPANY "(今年秋の新作はこちらOPENERS記事より )においてもラグジュアリーな香りを提供し続けている調香師による新たな著書。

昨年の今頃も白水社クセジュ文庫から「香水ー香りの秘密と調香師の技」が発刊され、すぐに入手した私は非常に興味深く読んだ。一度ならず何度も読み、特に印象的な文章はメモしていた。これからも繰り返し読むつもりだ。そんな本にはそうそう出逢えるものではない。以前もこのように情熱を傾けて読んだ本があったことを思い起こす。それは同じく調香師エドモン・ルドニッカによる著書「香りの創造」であった。後からわかったことであるが、エドモン・ルドニッカはジャン=クロード・エレナの尊敬する人物であったという。

「香水ー香りの秘密と調香師の技」の冒頭、「はじめに」の中でジャン=クロード・エレナが述べている次の文章は、私が真っ先にメモをとったものである。

…重要なのは、素材がいい匂いかどうかではない。素材はことばのようなものだからだ。素材ということばのおかげで、ひとつの物語を語ることができる。香水には、それ自身の構文と文法がある。私の鼻は、その構文と文法を検査する道具にすぎない。…

そのとおり、と感じた。色自体に綺麗かそうでないかがあるわけではないように、香りもそれ自体はひとつの情報にすぎない。組み合わせ方や、背景との関係性において様々な解釈をもたれるにすぎない。ずっとそう思ってきた。だから香料を鑑賞するときには個人的に良い香りと感じる感情的な印象はさておき、その香りが発する特徴、意味を理解することに専心してきた。

香りは言葉である。その考え方には共感する。

そうした意味において新刊の調香師日記を読むのが楽しみだ。香りで文学を紡ぐ調香師が、文章でどのような香りを感じさせてくれるのかと。



2011年12月10日土曜日

満月の日に・特別な形でこそ感じたい今年の薔薇の香り

本日は満月。双子座にて。しかも皆既月食というタイミング。
この特別な日に、特別なものをご紹介したいと思います。

ちょうど半年前。双子座で新月を迎えていた6月の初め頃。
ブルガリアの「バラの谷」では、今年のダマスクローズの収穫を祝ってバラ祭りが開催されていました。紀元前の昔からその香りを人に愛され続けてきたオールドローズの一種、ダマスクローズの花から得られる天然精油は、今日も世界中の調香師から天然香料としての高い評価を得ています。

ローズオットーは日本におけるアロマテラピーの発展に伴い、使用精油のラインナップにも加わりましたが、ラヴェンダーなどに比べて収率が極めて低いことや手間のかかり方も関係して、同じ精油用遮光瓶に入れられた外観でも価格が圧倒的に高価。その奥深い香りの魅力とともにリラクセーション効果も抜群なのですが、アロマテラピー愛好者にはなかなかその特別な価値は伝わりにくかったことでしょう。

3年前の日本&ブルガリア外交復興50周年の夏からスタートしたブランド、パレチカ では、
その年に収穫されたダマスクローズから得られたローズオットー、つまりローズ・ヌーヴォーを欲しい方への限定数販売という形式にて提供しています。そのボトル外観がこちら。


希少価値の高い特別な天然香料だからこそ、特別な形のボトルにて。
2011年のローズ・ヌーヴォー

今年はトライアル用・携帯用としてミニサイズの遮光瓶タイプも販売されていますが、この宝石のようにきらめくダマスクローズさながらの形、ピンクのクリスタルボトルに人気が高いようです。底面には収穫年の刻印、フレッシュさを保つ窒素充填もなされています。

2010年2月のコンサートにてこのローズ・ヌーヴォーの香りをピアノで音楽にしてくださったアキコ・グレース さんが昨年もこの香りを楽しんでくださったことを2010,11月のブログ、ヌーヴォーの香りを聴いてを読み返しながら思い起こしています。

咲いて散ってしまうままであったなら、半年後には感じられなかったはずの香り。それが現地の人びとが長年に渡り築いた技術によって、香り成分が凝縮された液体となって遠い異国の私たちが楽しむことができる…このボトルを眺めるたびにその特別感に改めて感謝しています。

2011年12月9日金曜日

キャラウェイ入りのパンとチーズで

ここ2日ほど、いわゆるランチタイムに食事をとっていない。
ちょうどその時間は仕事中。

午後3時過ぎ。
お腹が空いてくるのにあわせて軽食。
キャラウェイシードの入ったライ麦パンとチーズを。
この組み合わせで意外な満足感。

キャラウェイ。
まずはほのかな甘さ。
甘さが苦味に追いかけられ…その時間差にスパイシーな刺激を感じる。
つぶつぶしたシードの感触もパンに合う。
そして少し酸味のきいた食べ物、チーズにもよく合う。
この個性はさまざまな肉料理にも合いそう、特に羊肉に合わせると何か相乗効果が生まれそうな…とイメージ。

キャラウェイはセリ科の植物。どことなくコリアンダーやクミンを想起させたのは同じセリ科ゆえかもしれない。いずれも加温性を感じるスパイス。ここ数日の寒さで身体が求めたのだろうか。

スパイスのおかげで、人は
「生きるために食べる」から
「食べるためにも生きたい」になったのかもしれない。
ちらりと大航海時代の香辛料貿易が頭によぎる。

2011年12月7日水曜日

鏡と香水・見えているものとこれから見たいもの

ファッション。装う表現。この言葉の意味を改めて考える機会を持った。

思い起こしたのは、こんなフレーズ。
「私(あなた)は誰?鏡で見えるその姿はこれから一生私の想われ人。」
「今日の私は昨日の私とは違う。会う人も行く場所も違うのだから。」

こんな頭の中での問いかけを、私は香水と出逢った6才の頃から続けているような気がする。現実の鏡で見えた姿に、香水の香りから想像した未来の姿を重ねた懐かしい回想。

鏡で見える人物を最初から自分、と幼少期の私に当たり前には思えなかった。「私は誰?」ではなく、「あなたは誰?」というのが正直な第一印象。
想われ人。Lover、恋人と言ってしまってもよいけれど、もっと本質的な意味を伝えたいのであえてこう呼ぶ。想わずには生きられない。
そして、鏡で見える顔の表情が毎日違うのだからいつも同じわけがない。
鏡は見えているものから色々なことを教えてくれる。そして鏡では見えない未来の自分の姿を喚起させるために香りを第一の衣服として身につける。


…こんなことをあえて文字にしたくなったきっかけは、ファッションとは、飾ることではなく、そぎ落としていくこと(中野香織オフィシャルブログ/2011,12,6)にてご紹介のトークイベント特別講義。

デザイナーからテーラーとなられた信國太志さんのこれまでの歩みや考え方に聴き入り、信國さんがかつてタケオ キクチで手がけられたショーの動画を観客になったつもりでイマジネーションを膨らませながら鑑賞。…これも絶妙な質問とフォローで繋ぐ中野さんの采配のおかげ。改めて感謝。

強烈に魅かれるものとの、本音本気の対峙を経てからでないとわからないことはたくさんある。これこそ宝。本能を駆使しない時間から何かを得ようと思っても無理…。信國さんのこれまでのヒストリーを聴き、自分の回想と参照してもこれは真実であると確信した。

鏡と香水は、「見えているもの」とこれから「見たいもの」を私に気づかせてくれた。特に香水は大人になってからの私の仕事の重要なテーマ。本音本気の対峙の繰り返し。香水を深く知りたいがためにアロマテラピーまで学んでしまった私は、確かに魅かれるものに導かれている。

2011年12月5日月曜日

ローズとパチュリとベチバーと

ローズとパチュリとベチバー。
私の好きな精油(天然香料)3種。

これらをそれぞれ1%に希釈し、別々のスプレーボトルに。
まずは無水エタノールで溶かし、その上で精製水を加えたもの。

精油原液よりもはるかにさりげなく、柔らかく、
空気になじむように優しく香ります。

3本はそれぞれ単体でも十分優雅な空気を拡げてくれます。
華やかな気品を漂わせるローズ。
エキゾチックな音楽が聞こえてきそうなパチュリ。
オリエンタルの風がそよぐようなベチバー。

時にはこんな組み合わせ。
パチュリ1ふき後に追いかけるようにローズを2ふき。
ベチバー1ふき後に追いかけるようにローズを2ふき。
パチュリとベチバーをほぼ同時に1ふき。
空中でさまざまなブレンドを楽しめます。
3つの楽器が奏でるハーモニーのように。

たとえば、極上の眠りのために。
やわらかな天然のスリーピングフレグランスとして。

たとえば、とっておきの読書のために。
時間と空間を越えるイマジネーションの世界へ。


2011年12月4日日曜日

初雪草

北海道では雪の日々が続いているらしい。
先ほどFacebookにて、木の枝に積もった雪のふんわりとした形がまるで白熊のように見えてしまう写真を目撃。何とも愛らしい雪の一面ではあるが、私も北陸の雪国育ちなので、この雪で始まる冬の厳しさがどんなものか…少しは記憶が残っている。

初雪草。


初雪草(はつゆきそう)という名前のこの植物は、あの、クリスマスを彩るポインセチアと同じくトウダイグサ科の仲間。葉がうっすらと雪を被ったかのような白い縁どりに覆われる。

実はこの植物を私が撮影したのは夏。
場所はこちらのブログでご紹介した札幌の羊ヶ丘展望台。クラーク博士の像の後ろのほうに生育していた。ひと目見て好きになり撮影したあの日は確か2011年8月18日。この写真を本当の冬がきたときに眺めたい、と思いながら。

2011年12月3日土曜日

音楽から衣装をイメージする・「くるみ割り人形」

クリスマスが近づくと、思い起こす音楽がある。
しんと静かな冷気の中を歩いているときなど、不意に頭の中で鳴り始める…
チャイコフスキーの「くるみ割り人形」。

有名なバレエ音楽。そもそもこれは童話の世界から生まれた。
この音楽からどのような視覚表現が生まれるのか、とイメージするのが楽しみなイベントが1週間後に開催。

12/9(金)・12/10(土)国際ファッション文化学科卒業イベントを開催 / 文化学園大学 現代文化学部 / 2011,11,30更新

メインで出演する国際ファッション文化学科4年生の中には、昨年または今年の私の講義受講生もいる。

2007年から始まったこの大学のパフォーミングアーツイベント。女子大のイベントでは男性演者の登場が新鮮だった「夏の夜の夢」、女性マジシャンの登場による華やかなオープニングで始まった「不思議の国のアリス」をはじめ、「青い鳥」、「オズの魔法使い」などこれまではどちらかというとそのストーリーのほうに先行記憶があったものばかりだった。でも今年の「くるみ割り人形」は、私にとって先行するイメージは音楽。

舞台を眺めながらあの音楽が頭の中で共鳴する日まで、自由に想像を膨らましていきたい。

2011年12月1日木曜日

かつて魅かれたヴィジュアルと香り・シャリマー(ゲラン)

今日から12月。
ひときわ冷たい風と雨。
今期いちばんの寒さを感じた。

昔の雑誌を眺めていたら、
かつて魅かれたヴィジュアルと香り。
この香りを思い浮かべるだけで身体があたたかくなる。



忘れもしないゲランのシャリマー。
シャリマーとはサンスクリット語で「愛の殿堂」を意味する。

あたたかく、なめらかで、魅惑的。
場所も時間も超越するかのような陶酔感をおぼえた一瞬。
そんな印象をこの広告はよく表現していると思う。
(上記広告ページは"VOTRE BEAUTÉ / novembre 1991"より)

シャリマーは1925年のパリでの装飾美術工芸展(アールデコ展)において、レイモンド・ゲランによるデザインのバカラクリスタル製ボトルにてデビュー。そのかたちはまるでコウモリのよう。アンティークの銀食器から思いついたという蓋がついた、噴水を模したボトルデザインは展覧会で1位を獲得。
(フォトグラフィー 香水の歴史/ 著者 ロジャ・ダブ/原書房 より)

迷える20代の頃、香りを試した直後に私が迷わず入手したのは、ゲランの数ある名香の中でもサムサラとシャリマーのみ。いずれも冬の始まりを感じた日のことだった。

2011年11月30日水曜日

「違いがわかる」とは?…香水鑑賞講義より・1

昨日、大学での講義「ファッションとアロマ」9回目として実施した香水鑑賞会。講師である私がこの実施を通して感じたことを少しずつ記録しておこうと思う。

主にファッションブランドから今年発売された香水9点とそのビジュアル資料を鑑賞する機会を提供。資料にはブランド側から発信されたリリースにとどまらず、国内外(今回はフランスの雑誌)の媒体から私がピックアップしたものも含まれる。昨日実際に受講したのは、国際ファッション文化学科のスタイリスト・コーディネーターコース、映画・舞台衣装デザイナーコース、プロデューサー・ジャーナリストコースの3年生約90名。

私からはまず広告用ビジュアル資料のみを見せながらコンセプトやブランドの歴史背景、いわばその香りのコンテクストを解説する。その直後学生には、視覚表現と私の解説から印象に残った表現や事象について記述させながら実際の香りを想像させる時間を設ける。その間私は別室(視聴覚室)にて香水本体とパッケージ、ビジュアル資料とともに、数本の試香紙に各々の香りを吹き付けて放射状にボックスセットする。

もちろん、9点もの香水を一箇所に固めて展示などしない。ある程度の間隔をもたせる。しかも学生にも時間差で誘導。香水の鑑賞方法についても事前に指導する。あくまでも試香紙の香りを一巡して試し、印象に残るものについてのみ、講師が指定したテーマで記述させるレポートを課す。

この一連のメニューを経て提出されたレポートを一読し、私が感じたことその1は、「違いがわかる」とはどういうことかについて。

印象に残ったレポートが二つあった。一つは、ゲランのイディールのボトルがディオールのジャドールに似ているという指摘。展示したのはゲランのみ。ディオールは学生の記憶から。もう一つは、9点の香水のうち、パッケージ&ボトルデザインにピンクを使用したものは4点しかなかったのに「どうしてこう香水の広告はピンクばかりなのか」といった指摘。

確かにイディールのボトルとジャドールのボトルは、上部が細長く底が丸く拡がる形であるという点では共通するかもしれない。だが、実際のボトルを見たり触ったりするとまるで違うものであることのほうを強く感じるものだ。似ているようで全然違うものがある、ということをもっと感じてほしいと実感。

そして、実際はピンクが広告に使われているもの4点以外は、黄色、青、ベージュ、ネイビー、ゴールド、シルバー、赤など様々な色が使用された香水の視覚表現を見せたのであるが、ピンク系が最も強烈な印象だったのか、他のものの色彩表現の違いへの言及が足りないのは残念。

つくづく、人は自分の見たいようにしかものを見ないということに尽きるが、ファッションを専攻し、表現者を目指すのであれば、一見似たようなものの集まりの中にある違いや、自分の第一印象だけでなく、その印象の強弱のコントラストの背景に何があるのかをふと考えてみるような習慣を身につけてもらいたいと感じた。そのためには五感をフル活用させて多くを体験するしかない。しかも他人事的ではなく自分のために。これからの時代、ますます多様化する社会の中で動く空気感を読み取るためにも。


2011年11月28日月曜日

クロモジの紅葉

以前私のブログ、日本産クロモジの香りから聞こえる「木の循環」と、クロモジ精油の香りで続く爽やかな息… にてご紹介の、クスノキ科の植物クロモジ。

上記ブログを精油メーカーの方にお伝えしたところ、喜んでくださり、クロモジの香りでゆったり・・・の中でもご紹介いただきました。

紅葉したクロモジの葉の中に、ピカピカに黒いクロモジの実が愛らしく輝いていて、眺めているだけでもゆったりとした気分になります…

メーカーの方に、
「精油を抽出するためにたくさん植物を使うと思うのですが、ローズウッドみたいに減ってなくなりそう…てことはないのですか。」
と尋ねましたが、今のところその心配は全くないそうです。であればこの木の生育とともに森の自然を守ることは大切と実感。


2011年11月27日日曜日

「香りを活かしたファッション教育」を再考できた日

11月26日。2005年から私が担当してきた大学講義での試みにエールをいただいたような気がした。これまで模索しながら実践してきた「香りを活かしたファッション教育」の可能性を改めて感じられたからである。

昨日午後。
明治大学創立130周年記念国際シンポジウム(主催:明治大学商学部) —「国際ビジネス教育の新展開をめざして」—ファッション・ビジネス教育の世界展開 を拝聴。ファッションデザイナーのコシノジュンコさん、シャネルジャパン社長のリシャール・コラスさんをはじめ、海外4カ国でファッション教育に携わる方々のお話を聴講。明治大学という130年の歴史と伝統をもつ総合大学の商学部が「ファッションビジネス教育の世界展開」を記念シンポジウムのテーマとして掲げ、次の100年に向けて「個を強め、世界をつなぐ人材育成」を具体的に実践しようとしている。

このシンポジウムは、明治大学国際日本学部特任教授、中野香織さんのブログでのお誘いにより事前予約していたもの。中野さんもさっそくこのシンポジウムについてのブログを写真とともに「神の創造物は丸く、人間が考え出したものは四角い」にて記されている。

ファッションデザイナーとして、コシノジュンコさんは自らの着想から考えた「対極の美のバランス」を説き、「ものごとを考えるセンス」の重要性を強調された。身近なものの中に謎や興味を発見できる感覚、そしてその着想から始まる思考を拡げられるか、ということは、形によって美(新たな意味を含む)を表現するデザイナーにとって不可欠な能力だ。

世界的なブランド、シャネルジャパン社長としてこのブランドの価値を広く伝える立場にあるリシャール・コラスさんは、創業者ココ・シャネルの哲学をブランドの歴史とともにプレゼンテーション。そのスピリットを活かし、「過去を生かしてより良い未来をつくるのだ」というゲーテの言葉を引用しながらも、「一貫性」・「継続性」・「統合性」をポリシーとし続けるブランドの姿勢を強調。

イギリス、フランス、中国、オーストラリア各国のファッションビジネス教育に携わる先生方は、現在各々の国に置かれている経済情勢、社会情勢から求められる人材育成へのアプローチとそのための国際的ネットワーク構築の必要性を説かれた。シンポジウム終演直前に壇上で一言ずつ、と言われて回答されたフランス、モダルト・インターナショナルスクール学院の校長、パトリス・ド・プラース氏がゆっくり重々しく伝えられた内容が印象的であった。会場の多くの明大付属高生や大学生に向けての言葉であろう。ーこれからは自国以外の異なる文化についても多く広く学び理解に努めようとすることが不可欠。ビジネスが国際的に展開する時代であるから。ー

さて、私の話。
2005年から文化学園大学(旧文化女子大学)現代文化学部国際ファッション文化学科において講義「ファッションとアロマ」を担当。当初この科目の企画依頼を受けたときには、ファッションを専攻する学生に香りの知識と教養を、という程度であったが、果たしてそれで良いのかと考えた。対象が現代文化学部、国際ファッション文化学科の3年生である。

紀元前の昔から人に大切にされてきた香料を嗅覚で体感しながら背景の文化を理解したり、最新のフレグランスのプレゼンテーションから各ブランドの歴史と哲学、ファッションにおける香りの重要性を知ること。これらを教養として身につけることももちろん貴重とは思う。こうした知識がベースとなって初めて有史以来の人の歴史の中の今、という視点を持てるであろうし、第三者に多角的にモノの価値を伝えられるからだ。しかしながら、かれらがそれまでに学んだ服飾造形表現技術が活かせるよう、そして個々の着想をスタートにどのような過程で具体的な表現に到達させるかを実践できる内容にしたいと思った。

その結果、できたひとつのかたちが、香りの視覚化表現を最終課題とすることである。…見えない香りというものを見えるように表現することは、自由であるが正解はない。着想を起点に深い思考が必要。模索し続け、ある段階を選択,統合して形にまとめるセンスが不可欠であることだけは確か。これを実感できる場をこれからも、未来ある学生に提供していきたいと思う。


2011年11月26日土曜日

" DE LA GYM SANS LE SAVOIR "(無意識の運動)を意識して

昨日こんな記事を発見。
ナタリー・ポートマンを変えた!? NYで話題のバレエ・エクササイズに密着(2011,11,17/ELLE ON LINE)

確かに、良い姿勢を意識していると、たるまないフェイスラインと綺麗な背中(背筋)がもれなくついてくる。そして重心となる腰を意識し、脚を真っ直ぐに保ち、適度な速さで静かに歩こうと努めていると、下半身も引き締まっていく。できる限り見苦しくないような動作を心掛けていると、そうした日常の身体活動だけでもずいぶん筋肉トレーニングになっているものだと改めて気づく。そうしたことを、私は10月のブログ、「日常が筋トレ」の中でも書いていた。

そして昨夜。
20年前の美容雑誌 " VOTRE BEAUTÉ(1991,11月号) " をクローゼットから発見し、懐かしく眺めていて発見したのがこちらのページ。まさにこの動き。


これは、"La gym du moindre effort" ( 少しの努力でできる運動)という記事の一部で、上記のイラストの見出しは、" DE LA GYM SANS LE SAVOIR "(無意識のうちにできる運動)。"gym"は、辞書をみると「体操」と和訳があるが、なんとなく「運動」といったほうが、「身体を動かすこと」を全般的に指すように思う。

上記のイラスト、まさに筋トレである。
前提にはぴんと伸ばした背筋がある。特にバスタイム、頭皮や身体を洗うときが絶好の筋トレタイム。座ったりせず、イラストのように立ったままで脚を上げて洗ったり、首を洗いながら胸筋、上腕を鍛える。最初はちょっと意識して痛かったり、辛かったりするかもしれないが、慣れると無意識のうちに出来ていく。こういう生活を続けていると、適度な筋力が保たれ、長い階段でも息切れしないし、膝にもあまり負担がかからない。

忙しい私にとって、あえて「運動」のための時間をつくるという「努力」をしなくてもすむことが、何よりも有難い。

2011年11月25日金曜日

世界の天然花香を活かすヴィンテージフレグランス(ジバンシィ)

10月のブログ「ジバンシィ プレミアム フレグランス2010 の3種」にてご紹介のフレグランス。これらに使用される香料のうちでも特に重要となる原料の一種が天然の花香料。2010年収穫の花から得られた貴重な香料を用いてつくられた3種をお借りする機会に恵まれましたので、記録を兼ねてのご紹介をしたいと思います。

まずは、2010年トルコ・イスパルタ産ダマスクローズ使用。
ヴェリィ イレジスティブル ジバンシィ プレミアム 2010。
フレッシュな薔薇のデリケートなみずみずしさが引き立っています。


2010年、イスパルタは遅い春の訪れと長雨のおかげで例年より開花期間が長くなったことにより、高品質のバラが多く収穫。ラズベリーにも似たフレッシュなグリーンノートが極めて繊細に、優しい香りを放っています。

次に、2010年コモロ諸島・モヘリ島産イランイラン使用。
アマリージュ プレミアム 2010。
甘くフレッシュなバナナを想起させるイランイランのエキゾチックな魅力が光っています。


2010年、モヘリ島は、雨季の訪れが遅く、アマリージュのために選ばれた花は5月初旬、イランイランが満開になり始める時期に採取。芳香性の高い最上級の花は、アマリージュの晴れやかなミドルノートにフルーティな甘さとパウダリーな上品さを与えています。

そして、2010年中国・広西省産サンバックジャスミン使用。
アンジュ デモン プレミアム 2010。
熟した果実のような甘さを携えたジャスミンがもたらす艶やかさと安らぎ。


2010年、広西省では干ばつ⇨大量降雨という急激な気候の変化により花の回復力が増し、極めて短期間で成長し、上質な花が得られました。サンバックジャスミンのフルーティでフローラルな香りがミドルノートを艶やかにしています。

年ごとに異なる花の質。たとえば…ある年に収穫されたダマスクローズの香りが抜群に芳醇で甘くフルーティーなトップノートに富んでいたとします。調香師はこの香りを最大限に活かすべく、ダマスクローズ香を既にブレンド処方の一種としていた既存フレグランスの全体としての調香をさらに精密に再構築するのです。

こうしたヴィンテージフレグランスをジバンシィが、「その年の大自然の恵み(花香料)を体現する類稀なる逸品…ジバンシィ プレミアム シリーズ」としてプロデュースし始めたのは、2005年産のものからでした。
2005 ブルガリア産ブルガリアンローズ ⇨ ヴェリィ イレジスティブル、グラース産ミモザ ⇨ アマリージュ
2006 シャトー・ドゥ・グラース産セントフォリアローズ ⇨ ヴェリィ イレジスティブル、ナブール産オレンジブロッサム ⇨ オルガンザ、マヨット島産イランイラン ⇨ アマリージュ
2007 モロッコ産ダマスクローズ ⇨ ヴェリィ イレジスティブル、エジプト産ジャスミン ⇨ オルガンザ、インド産ミモザ ⇨ アマリージュ
2008 トルコ・イスパルタ産ダマスクローズ ⇨ ヴェリィ イレジスティブル、マダガスカル・ノッシベ島産イランイラン ⇨ アマリージュ、インド産サンバックジャスミン ⇨ アンジュ デモン
2009 モロッコ産セントフォリアローズ ⇨ ヴェリィ イレジスティブル、 フランス産ミモザ ⇨ アマリージュ、エジプト産オレンジブロッサム ⇨ アンジュ デモン

植物の恵みに感謝するのは、食べ物としてだけでなくその芳醇な香りそのものに対しても同様。改めて、暮れ行く2011年の地球上の香りの恵みに感謝したいと思います。

参考資料:
「2010 HARVESTS ジバンシィ プレミアムシリーズ」ニュースリリース

2011年11月24日木曜日

香水、そして映画の動向から見えたこと

勤労感謝の日が過ぎると、さすがに今年も残りわずかと実感。

今年デビューした香水、そして最近の映画の動向から感じたことを記しておこうと思う。

まずは香水。
イタリアのブランド、ボッテガ・ヴェネタがブランド誕生後45年目にして初のフレグランスを発表したいきさつはコチラでも記した。
そして、メゾン マルタン マルジェラより、フレグランスがデビュー(2011,10,25/FASHION NEWS)。これまでの香水の枠にとらわれない…といった革新的な姿勢をうたっているが、実際に香りを確認してみると、香料本来の素晴らしさが丁寧に活かされたクオリティを感じた。

この流れはその後も続く。
マドンナが初の香水「Truth or Dare」を発売
(映画.com 11月7日(月)15時5分配信/YAHOO! JAPANニュース)
。あのマドンナまでもがついに。
そして、トリーバーチがビューティーに参入、初のフレグランス発売へ
(2011年11月2日 12時00分/ excite ニュース)
。意気込みあり。

ブランドイメージ、情報発信の重要な手段として、フレグランスという想像力を刺激し官能に働きかける方法が改めて注目されている。しかもそのクリエイションにかける想いも深い。本来そうあるべきだったのに、とも思う。

さて、映画について。
今朝、無垢と色気と知性(2011,11,24/中野香織オフィシャルブログ)を拝読。改めて感じたのは、サッチャーにしろ、モンローにしろ、過去に輝いた人物。またしても伝記的映画。モナコ妃となったグレース・ケリーの映画も制作が進んでいるというし、…思い返すとこのごろ偉大なる過去の人物の伝記的ドキュメンタリー映画やドラマが続いている。今年私がみたものとしては、イヴ・サンローラン、グレン・グールド、セルジュ・ゲンスブール…そういえば現在放映中のNHK朝のドラマ「カーネーション」も世界的に活躍する3人のファッションデザイナーの母の物語であった。

混迷する時代の中で、生き物としての人間が、官能に訴えかける原点をみつめなおし、過去を輝かせた人物の生き様から何かを再発見しようとしている。
そんなふうに感じた2011年。あとひと月でクリスマス・イヴ。

2011年11月23日水曜日

クロモジ精油の香りで続く爽やかな息…

このところ、チョットした実験が功を奏してささやかな幸せを感じています。
歯磨き後の息がひときわ爽やかに感じるようになったこと。

日本産クロモジの香りから聞こえる「木の循環」でご紹介のクロモジ精油、販売されている会社の方とお話していて、これは歯磨き剤をより快適に使用するために活用できるかもしれない、と感じたのです。そもそもクロモジという木は、口の中を綺麗にする楊枝として使われていたのですから。

そこでまずは自己責任のもと、私自身で実験。
市販の歯磨き剤を、小さなクリームなどの化粧品詰替容器に、およそ5~6回分チューブからうつします。その中にクロモジ精油を1滴だけ滴下して木製の太目の楊枝でよく混ぜます。ここから楊枝で歯ブラシに1回使用分をとり、歯磨きしてみたのです。

そもそも口の中に入れて使う楊枝として用いられてきたものだけあって、その香りが口にふわっとひろがっても何の違和感もありませんでした。歯磨き剤にもともとついていたミントの香りを凌駕する、加えたてのクロモジ精油のフレッシュな香りは最高に清々しく、こんなに気持ちのよい歯磨きタイムは初めてでした。

飲んでしまうわけではありませんから、歯磨きの泡の中に微量含まれていたクロモジ精油とはしばらく口の中で接触するだけです。ピリピリすることもなくすすぎました。1回分に1滴では明らかに多すぎて強すぎると感じたので歯磨き5~6回分位に1滴で試しましたが充分でした。もっと薄くてもいいかもしれません。精油を混ぜたものは長持ちしないですしね。

驚いたことに、この歯磨きをした後、爽やかな息がかなり持続したのです。顕著なのは寝る前の歯磨きから明けて翌朝の感触。チョット続けてみようと思います。私は医師ではないので精油を薬として使用することはできませんから、こうした情報をまず予防医学に熱心な歯科医の方にお伝えしたいと思いました。




2011年11月21日月曜日

貴重な瞬間という名の香りを思い起こした日

この頃シナノゴールドで始まる朝を迎えていたら、思い起こしたことがありました。シナノスイートのストレートジュースをひとつ、キープしていたのです。
りんごのしずく(秋映・シナノゴールド・シナノスイート)
の中で私は、シナノスイートのしずくについてこう記していました。

淡黄色にほんのりピンクが入った少女の肌のよう。フレッシュな甘さが初々しく感じられて、名称に「スイート」が入っているのも納得。ふわりと新鮮なピーチの香りがよぎる愛らしさ。甘さと爽やかさと可愛らしさのバランスが絶妙なこの香りは「ラブリー・タイム」。人生の中で幾たびか訪れる貴重な時間。そしてそこに存在する人。


「ラブリータイム」。人生の中で幾たびか訪れる貴重な時間。
そんな時間、瞬間を感じられる日が訪れたら飲んでみたいと。

今日はそう感じられる瞬間がありました。
ラブリー、といってもその種類は様々。恋愛だけではありません。
10月から私の香りの講義を受講され、先週生まれて初めて精油をブレンドしてリラックス用の香りを作られた学生さんが、香りの良さは勿論、穏やかな気分になれる効果に感動され、その素晴らしさを実感できたというご報告を受けたからです。これ程私にとってハッピーでラブリーなことはありません。

心がほんのりとバラ色に染まり、明日も元気でいたいと思う気持ち。
ここ数日、このフレグランスを「着て」いたおかげもあるのかなと思います。



人生における最も貴重な瞬間「アッティモ・ローフロラーレ」でご紹介した、今秋発売されたばかりの香りです。

2011年11月20日日曜日

中国茶(ウーロン茶)を選んで…嬉しかったこと二つ

昨夜、知人と食事のために訪れた中国料理店にて。
食べたい料理とあわせて飲みたいアルコールを皆注文する。私も毎回そうしていたけれど、昨夜は夕方からのパーティーでワインを何杯か頂いた後でもあり、温かく香りの良いものを飲みたかったのでホットウーロン茶を注文した。

運ばれてきたのは立派な器。陶器で蓋つき。
ああ見たことがある。中国茶専用の茶器。
思わず蓋をとってしまう。
茶漉しが上部にあり、茶葉が見える。
温かさとあいまってこのお茶のかすかにフローラルな芳香が拡がる。
この瞬間、かなり心が和らいだ。

食事が終わる頃…
向かい側の知人が「お腹いっぱい…」とちょっと眠そうなというか苦しそうなという雰囲気。ちょうどテーブルの4人で話が盛り上がっているところだった。ふと私は、彼女にウーロン茶の茶葉ののった蓋を示し「良かったら香りをどうぞ」と言ってみた。すぐに鼻に近づけてひと呼吸した彼女は、一瞬のうちにリフレッシュできたのか、直後にシャープな質問を投げかける。4人の会話はいっそう楽しく盛り上がった。そしてこれも香りのおかげかもしれないと嬉しくなった。



2011年11月19日土曜日

朝の幸せ・シナノゴールドから香る「ルミナス・インプレッション」

今年の春、こんなブログを書きました。
りんごのしずく(秋映・シナノゴールド・シナノスイート)。先日ラ・フランスをいただいたとき、この中のシナノゴールドを思い起こしさっそく食べたくなりました。


シナノゴールドについて、上記のブログで私はこう書いています。
…淡い黄金のしずく。芳醇です。かすかに梨のような香りに始まるとろみを感じさせるような味わいから一瞬、多種のフルーツが盛り合されたフルーツバスケットを想像。後味にふわりと残る余韻から清純な花の香りも感じられ…まさに「ルミナス・インプレッション」。一度目が合うと忘れられないオーラを感じさせる、気品に満ちた人。…

本物のシナノゴールドを一口。心が晴れやかになるような華やかな印象です。
噛み締めると程よい硬さ。先行する酸味を甘味が上品に追いかけてくるのです。フルーティーな躍動感のあとにフローラルな残り香。やはり、春にストレートジュースで感じたとおり、「ルミナス・インプレッション」でした。

りんごは大好きな紅玉からはじまりこれからも様々な種類が楽しめます。ささやかな朝の幸せです。


2011年11月18日金曜日

熟したラ・フランスにおもう…

大好きなラ・フランス。食べ頃です。
完熟のものをいただきました。




とろけるような触感。芳香にあふれた上品な甘味がジューシーに伝わるこの幸せは、まさしくフランス人に「我が国を代表する果物にふさわしい」と言わしめただけのことはあります。そのあたりのエピソードはこちら、おいしい山形ホームページより「西洋なし」に詳しく記されています。

パリやミラノに行ったとき、つくづく感じたのはフルーツが日常にふんだんにあるということ。買うときも1個ずつ、なんてことはありません。kg買いが普通になっていました。ヨーロッパでは果物は野菜感覚で料理にもよく使いますし、もっとラフに食卓に置いてあります。見た目も日本みたいに綺麗ではありませんが、要は香りが良くて美味しければいいのです。

2005年の資料(「FAO STAT Food Balance Sheets 」より作成された、1人1日当たり果物供給量の国際比較グラフ)によると、先進国24か国の中で日本は21位。何ということでしょうか。ちなみに上位5か国は1位イタリア、2位ギリシャ、3位フランス、4位オランダ、5位オーストリア…。6年後のいまはどうなっているのか気になります。

海外からきた人にはよく言われます。
「日本人は見た目を気にしすぎ。だから果物が高いんじゃない?」
もしそうなら残念。もっとラフにたくさん食べたいものです。





2011年11月17日木曜日

誕生から45年目に掲げた香りの形・" BOTTEGA VENETA "

昨日のブログ で予告のフレグランスボトルをご紹介します。昨日の雑誌記事の写真では姿を見せていませんでしたが、このボトルの底面をご覧ください。
イントレチャート(イタリア語で「編込み」「メッシュ」を示す)。
ボッテガ・ヴェネタの代名詞的なビジュアルです。
しなやかな丸みのカーブの先に、時を経て浮かび上がる光の模様。
20年前の秋に訪れたイタリアの陽光を思い起こしました。


" BOTTEGA VENETA" 初のフレグランスは、ブランドが誕生した1966年から45年目の2011年に誕生。イタリアの腕利きの革職人たちが築いてきた伝統に根差すこのブランドの哲学は「自分のイニシャルだけで十分(When your own initials are enough)」というモットーに表現されているそうです。

改めて、ブランドの香りを持つとはどういうことか、考えさせられます。

初のフレグランスの名前もブランド名そのままです。ブランドそのものを表すボトルデザイン、香り、シグニチャーカラーのパッケージ。


シンプルな形状はいつの世も人に求められるスタンダードであると思います。しかしながら、シンプルでありながらも優雅なテクスチュアを感じさせ、無意識の奥底に潜む官能に深く響く存在感を表現することは容易なことではありません。たとえて言うならば、それは日々の積み重ね、本質を求める熟考と五感の解放を繰り返すこと…人にとってかけがえのない美を追求し続ける姿勢の先にしか見えないものでありましょう。

参考資料:
BOTTEGA VENETA PARFUM リリース資料

2011年11月16日水曜日

アーバンな残り香4種・" SILLAGES URBAINS "

パリの美容雑誌 " VOTRE BEAUTÉ "2011,11月号にこんな記事。
まるで都市の建造物のように立ち並ぶ4つの香水ボトル。


"PARFUMS"の文字の下に書かれているのは"SILLAGES URBAINS"。"SILLAGE"とは「残り香」の意味だからこれは直訳すると「アーバンな残り香」。紹介されている4種はそれぞれ、世界の中でも心にとどめておきたいような都市の香りがするのかな…と思って読んでみます。

それぞれについて、" Première impression " (第一印象、トップノートの香りの印象)、" Dans son cœur (中心部、ハートノートの香りの印象)"、" Ce qu'il laisse derrière lui "(最後に残るラストノート) の3段階に登場すると思われる香料とそのイメージについて記されています。

ちなみに、この4種のうち、現在日本入手できるのは右側2種、" BOTTEGA VENETA "(2011,10月発売) と" BURBERRY BODY "(2011,9月発売)のみではないかと思われます。

まずは、" BURBERRY BODY "から。
150か国で発売されたとあって、持続性の高い香り(10日前に吹き付けてもらった試香紙からは今も甘美に滑らかなテクスチュアがゆらめいています)ということを私自身香りを試して実感しています。この記事によれば、第一印象が最もドラマティックなのでその部分のみ日本語でご紹介。
…緑のアブサン、桃、フリージアのみずみずしさがハイドパークの並木道を歩く人をうっとりさせるでしょう。…

次に" BOTTEGA VENETA "。
この香りの私自身の印象については10月のこちらのブログに記したように控え目な洗練された美を体感させてくれるものでした。ブランド初の香水に敬意を込め、記事の香りの記述を訳してみます。
… (第一印象)ベルガモットに続き、ヴェネツィア美女のお気に入りの花、ミュゲとシクラメン。(中心部)このメゾン、ボッテガ・ヴェネタを有名にしたレザー、そしてサンバックジャスミン、パチュリの組み合わせへ。(ラスト)…心地よいパウダリーなシプレは、サンダルウッドやアンバー、トンカビーンとともに心地良く優雅なハーモニーとなる。…

そして左端、ラルチザン・パフュームの" MON NUMÉRO 8" は、ラストノートの記述に、 "l'Opéra -Garnier "(パリにあるオペラ座)にいる女性、というフレーズが登場。オペラ鑑賞中のパリの貴婦人に似合いそうなイメージ。このシリーズ、ラルチザン・パフュームのサイトで色々調べたところ、日本では9と10が発売されているようですが、8は香港・レーンクロフォード(百貨店)における限定販売のようです。

ゲランの" Paris- New York " 。ずばり都市の名前です。記事では、中心部の香りで"les arômes des gâteaux de Noël "(クリスマスケーキの香り)という言葉が登場するので甘~い香りなのかと思いきや、ラストノートの記述では、" cèdre et sapin "(シダーとモミ)といった樹木の名前。なんだかこれぞ都会のクリスマスを彷彿とさせます。2009年に「パリとモスクワ」、「パリと東京」といったヴァージョンとあわせて3種限定発売されていたことが海外のサイトを調べてわかりました。

さて、ハイドパーク(ロンドン)、ヴェネツィア、オペラ座(パリ)、ニューヨーク。
この中で私は、パリのオペラ座付近にしか行ったことがないので、他の3カ所にもいつかは…と思いますが、このボトルを眺めての気分で特に行きたいのはヴェネツィアかな…と感じます。ヴェネツィア美女にも逢いたいです。明日はそう感じさせてくれたボッテガ・ヴェネタのお洒落なボトルの近影画像でブログを書きたいと思います。

ブレンドで引き立つゆずの香り・「ゆずレモン」

柚子。柚子はゆずであり、単独で存在する限り、それ以上でもなければそれ以下でもない。

ゆずはゆずの香り、としてかけがえのないものだ。これはこれで素晴らしい。しかし、香りとしてこのゆずの素晴らしさが引き立つのは、間違いなく他の異質なものと出逢い、融合したときであると思う。

そもそも香りがブレンドされて単なる足し算ではない相乗効果をもたらすというのはこういうこと。ブレンドによって別物に変身するという美の瞬間に何度も立ち会ってきた。

またしてもそんなことを実感できるものに出逢った。しかも喉がかわいて気分をリフレッシュしたいな…と感じていたまさにその時に。

ゆずレモン(ITO EN)

なんとゆずとレモンの他に、シイクワシャー、カムカムもブレンドされている。飲み口は爽やか。レモンのような清々しさが拡がったったかと思うと、どこからか南国の風とともに手応えのある酸味がじわじわ響き、気がつくと上品にゆずの余韻がほのかに残る。こんなドラマチックな香り方の最後に印象付けるように香るゆずはやっぱり只者ではないなと思う。それはブレンドの成せる技。




2011年11月14日月曜日

香りと空想が好きな方へ・『黒猫の遊歩あるいは美学講義』(森晶麿 著)

書物との出会いは、人との出会いと同様。インスピレーションが走るときは大抵重要な出逢いである。

先週私は、一冊の本に出逢った。
まずはタイトルに魅かれる。
「黒猫」、そして「美学」。
装丁のイラストも赤と黒のコントラストが印象的。

そしてページをめくる。
どうやら登場人物には「黒猫」がいるらしい。
開いたページで「黒猫」がこんなことを言っているくだりが目に留まった。
「最近、僕は嗅覚の美学的問題というものに取り組んでいるんだよ。…」

もうこの段階でこの本を読みたくなっていた。
最後に、と改めて表紙の帯を眺めた。
「第1回 アガサ・クリスティー章受賞作」。
私の好きなミステリー。もう心は決まった。

一度だけ、通して読んでみた。私の好きな世界があった。主人公は少なくとも「香り」に詳しい美学・芸術学教授。そして、ここが私の個人的に好感のもてるところなのだが、男女の間柄を単にありきたりの、かたちだけの恋愛でしか捉えないような人物ではない。本名が明かされていない二人の登場人物は、日常のささいな出来事に新鮮な感受性をもって「謎」として眺める心を大切にできる。何気ない空想の楽しみを知る人にとって、ここに収められた六つのストーリーは様々な絵となって映るだろう。

森晶麿 著『黒猫の遊歩あるいは美学講義』(ハヤカワオンライン)

そしてもう一度、『美学入門』(中井正一 著/中公文庫)を読み返したくなった。



2011年11月13日日曜日

7年前の出会いに感謝して・サロン「フレイス」ご紹介

かつてご縁のあった方のご活躍を、時を経て知るというのは嬉しいものです。

2004年。
私は、某リゾートホテルのスパセラピスト対象アロマテラピー研修講師として毎月那須に通っていました。やがてオーナーよりホテル直営のサロンを東京・青山に開きたいとの相談を受け、夏から新サロン開設ディレクターとして、スタッフの募集から採用・指導はもちろん、トリートメントメニューの開発に携わることになりました。
私はまず、エステティック技術をもつ店長候補の女性を探しました。直接面接をさせていただき「この方ならば」と決めた女性はホテルでの勤務経験、エステティックサロン店長経験共に豊富な方。その後約半年間、私が直接アロマテラピー、香り、人体に関わるさまざまなことをご指導させていただき、サロンは無事にオープン。マネージャーの彼女のもと、2005年から2009年までの間、多くのお客様に愛されるサロンとなりました。

2009年にそのサロンがクローズされた後、彼女から新しいサロンのご案内をいただきました。経験を積み、さまざまなことを吸収され、これからも学びつづけようというお気持ちとともに新たな挑戦に向かう姿勢を応援したいと思いました。

女性の名前は、植野八智与さん、
植野さんがつくられたサロンの名前はFlace(フレイス)
サロン情報はもちろん、植野さんのお人柄がじんわりと伝わってくるようなサイトです。すでにお持ちの美容技術に香りの力をプラスされ、これからも多くの方に喜ばれる時間を提供されますように。

2011年11月12日土曜日

フレッシュな笑顔の花・「オー・ロラ!/マーク・ジェイコブス」

笑顔。やはり理屈抜きに魅力的。
女性の笑顔は、咲いたばかりの花のよう。
そんなことを改めて思い起こしてしまったフレグランス。


肉厚な半透明の柔らかな素材が重なるように作られた花びらのキャップ。シルバーの網目が繊細な光沢を放つ根元とともに、このキャップ単体でも立つのです。淡いジューシーピンクの液体が、この秋(10/12~)日本で発売されたばかりの
香り、" OH,LOLA! / MARC JACOBS"(オー・ロラ!/マーク・ジェイコブス)のオードパルファムです。

親しみやすいフルーティー フローラルの香り。
第一印象のイメージは、屈託のない笑顔。いきいきとしたラズベリーや洋梨の甘酸っぱいさわやかさがあふれます。もしこの香りが長い髪の毛先にほんのりついていたとしたら、風とともにあっという間に流れていくほど軽やかです。
ですがこれはシャンプーではありません。ちゃんとウエスト周りなど、肌の体温であたためて、第二の印象、ハートノートの香り方も重ねた衣服の間から漂わせてください。弾けるフルーツの香りの次は甘美なフローラル。ピオニー、マグノリア、シクラメン。優しくフェミニンな雰囲気です。そして…ラストノート。最も長くこの香り方と付き合うことにもなるのでベースノートと表現しましょう。これが柔らかく上品なのです。ふんわりと肌触りのよいシルクに包まれているような感触。バニラ、サンダルウッド…そんな香料たちのハーモニーのおかげ。

色の印象で例えると
元気な明るい赤…ピンクのグラデーション…さらに光沢のある落ち着いた色へ。
そんなイメージはパッケージでビジュアライズされていました。


パルファム編集日記では、編集長がこのフレグランスの発表会を取材したときの画像をご覧いただけます。

実は、この「オー・ロラ!」には、お姉さんともいうべきフレグランスが2年前に誕生していました。肌を包み込む官能的なフローラルノート「マーク ジェイコブス ロラ オードパルファム」発売(OPENERS. 2009,11,12 )

昨年12月のブログ でご紹介したペッパーの香りがスパイシーな"BANG"のボトルも一度見たら忘れられないインパクトを持っていました。ルイ・ヴィトンのレディース担当デザイナーとしても知られるマーク・ジェイコブス。そのイメージビジュアライズパワーには今後も期待。

2011年11月11日金曜日

内に秘めた女性の幻影・「フェミニテ デュ ボワ/セルジュ・ルタンス」

今から19年前、パリで話題になったフレグランスがありました。
フランスの美容雑誌"VOTRE BEAUTE"1992年11月号にその広告が掲載。


当時、私は香水の記事目当てに数年間この雑誌を購読していたのですが、このページには何度も目が留まりました。しなやかな女性のボディラインとともに浮かび上がる曲線美のフレグランスボトルは印象的。名前は" Féminité du bois "(木のフェミニティ、女性性)。

資生堂で1980年から20年間イメージクリエイターをつとめたセルジュ・ルタンスが資生堂のために創った香りで、当時パリでは発売されたものの、日本では販売されていませんでした。

想像の中の世界でしかありませんが…
私は「木の精」という存在をよく思い描きます。周囲のあらゆる生き物の生を受け入れながら、優雅に、そして時にしたたかに、長い年月を静かにみつめている存在。それはどことなく、しなやかに時の流れをくぐり抜けていく女性性のようでもあります。

2009年春、「フェミニテ・デュ ボワ」は資生堂ザ・ギンザのセルジュ・ルタンスのシリーズに仲間入りしました。フェミニテデュボワ | パルファム セルジュ・ルタンスラインナップ |ザ・ギンザ 。もう日本でも入手できるのです。ボトルは発売当初のものとは異なりますが、香りはまさしく、私が最初に広告ビジュアルを見て想像したものそのものでした。





なめらかなアトラスシダーの温もりは、フルーツや蜂蜜、スパイスの豊かな恵みとともに神秘的な営みが繰り返される森の秘密を香らせます。

11月の初め、私はこのピンクグレイの液体を纏って出掛けてみました。鏡も見ないのに自分が穏やかな表情でいられることに安心し、感じることへの行動にためらいもなく、静かにスムーズに時が流れていきました。特に意識せずして強調しなくても、自分が紛れもなく女性であることを感じられた豊かな時間でした。


ボトルのキャップは光沢のある球形。スプレーとして使用できるアトマイザーもついています。外箱の中には小さく蛇腹に折り畳まれた栞が入っています。セルジュ・ルタンスからのメッセージが10か国語で記されていました。

東洋由来の香料がメインで使われるフレグランスはオリエンタルタイプとも呼ばれます。西欧の人からみると神秘的な魅力として映ったのかもしれません。木の香りからのインスピレーション。西欧人調香師のセルジュ・ルタンスの感覚が第一のフィルターにかけられました。そうした感受性を想定して、20年近く前にすでに日本からヨーロッパの人たちに愛される香りを提供していた資生堂のローカリゼーション発想。ぜひ記憶に刻んでおきたいと思います。

コートの季節

今日は寒くなりました。そして満月です。
秋から冬へ。ひとつの節目。

秋に冬が混じってきたと感じた先月半ば。
「だからといってまだコートは着ない。ジャケットにも頼らない。」とつぶやきました。温かみのあるラストノートの香水とともに、こんな時にしか楽しめないような着方…ニットやブラウスの重ね着…ショールとマフラー…の季節を過ごしてきました。

でも今日の気温は12月並みだとか。
いよいよコートの出番です。
私は三種類のコートを長年大切に着ています。

まずはロングコート。
煉瓦のような赤味を帯びた茶色にはなかなかその後も出会えません。ゆったりとしたシルエットと全身をつつむあたたかさがこの茶色とあいまってお気に入りです。

次に、ステンカラーの膝丈コート。ベルト付き。
ややグレーがかったオフホワイトのシンプルなタイプです。上記ロングコートよりも薄手ではありますが、春先から真冬まで、カジュアルから正装まで幅広く着用できます。

そして三番目は腰までの柔らかな白のショートダウン。
縫い目がタテヨコに淡く交差しているタイプと、全く縫い目なく愛らしいふちどりのポケットがついたタイプ2種類をリバーシブルで着られます。
小さくたたんで収納すると枕にもなります。
ダウンコートは縫い目が強調されていて遠くから見ると甲殻類というか昆虫というか…そんなふうにみえてしまうのがチョット苦手なのですが、このダウンは
シルエットも肌触りも柔らかく、ボタンを留める位置で様々なニュアンスを楽しめます。全て留めてしまえばマフラー不要。

三色・三丈のコートとともに冬の季節へ。












2011年11月9日水曜日

林檎は妙薬のアイコン・「ニナ レリクシール /ニナ リッチ」

このところ私は毎日林檎を食べています。
毎朝どんなにフラフラと起きてきても、弾けるように爽やかな林檎の香りと酸味で目が覚めます。林檎の旬のこの季節、私にとって林檎はまさに元気の妙薬。

そしてこちらが、林檎のかたちのフレグランス。


名前は" Nina L'Elixir "(ニナ レリクシール)。ニナ リッチの新香水。
" élixir "とは霊薬、妙薬を示す言葉でもあります。

ニナ リッチといえば…1948年発売の歴史的名香、戦後の暗い時代に夢と平和をイメージさせた "L'air Du Temps"(レール デュ タン・意味は「時の流れ」)が有名。1952年、このブランドの "Fille D'Eve"(フィーユ ディヴ・意味は「イヴの娘」)という香水のためにラリック社が創ったリンゴを形どったクリスタルボトルは素敵でした。

「レール デュ タン」
…ベルガモットとカーネーションを基調としたさわやかなブーケの香り。くちなしの静かな甘さがしとやかなエレガンスを漂わせる。
「フィーユ ディヴ」
…ベルガモットを基調にジャスミン、ベチバー、ゼラニウムを微妙にブレンドした繊細でソフトな香り立ち。
以上2種の香調解説は、平田幸子監修『香水の本』(新潮文庫)より。

2006年にデビューした「ニナ」の香りも林檎の形のボトルで思わず目を奪われましたが、今年の新作「ニナ レリクシール」のボトルカラーはさらに深いレッドです。香調はスパークリング スイート センシュアル。


今日はチョット3時間ばかり、私もこの香りにつきあってみました。
トップノートのレモンやライムがジューシーに弾けています…目が覚めますね、これは。しばらくたつとまるでラメがキラキラきらめくかのような空気感。ますます元気になってきます。外出する気分になって予定外に買い物へ。帰ってくるとふんわりふわふわリンゴの妖精さん…の世界。食欲も無かったのにキチンとランチもいただきました。そして…3時間後の今。私の体温とあいまって柔らかなヴェールになっています。優しい気持ちでいられます。

この香り、鼻に直接受け止めた表面的な印象だけで敬遠する人もいるかもしれませんが、こうやってチョット鼻から離れたウエストあたりの肌に乗せて、衣服を重ねて香りを聞いてみてください。弾けるジューシー感、スイートな林檎のふんわり感、やがて柔らかな優雅さへと変化しながら衣服の間からこぼれる時間も経験してほしいと思います。調香師は人の肌に乗せられて体温で温められながら変化していく香りを想定しているのですから。

2011年11月8日火曜日

ルラボ・7都市限定の香り「 City Exclusive Collections 」への好奇心

先週土曜日は表参道へ、VOGUE主催のFASHION'S NIGHT OUT のオープニングにあわせていくつかのブランドショップを訪れた。私の場合、お目当ては服そのものよりも最新の香りチェックであり、おかげでそのブランドが表現する空間の中で香りのイメージを自由に感じることができた。

面白いなと思ったのは、それぞれの香りが、やはりそのブランドの発祥の地のイメージと重なっていたということ。イギリス、フランス、日本。ブランドがあえて自覚したわけでもないはずなのに、それぞれの祖国をどこかしら彷彿とさせるものがあったという事実。

そんなことを思い起こしてしまったのは本日のOPENERSのこちらの記事を見つけたから。
ルラボ 独自の"メイド・ トゥ ・オーダー"で驚くほど持続する個性的フレグランス 「 City Exclusive Collections 」&「SANTAL 33」

東京限定のガイアック10がウッドの香りを生かしているあたり、なんとなくなるほどな…と思う一方、タイトルから強烈に私が好奇心を魅かれてしまったのは 「New York- Tubereuse40」 と 「London- Poivre23 」と 「Chicago -Baie Rose 26」。3都市ともに、私が訪れたことのない街であり、しかもチェベローズ、胡椒、ピンクペッパーがどんなふうに変身しているのか…と想像がふくらむ。

未知への好奇心。私にはそれが究極の欲求なのかな?とも感じた。ちょうど日曜日の夜にこんなブログ を書いたばかりだったな…と。




ーー

2011年11月7日月曜日

日本産クロモジの香りから聞こえる「木の循環」

先週11月3日は「文化の日」であるとともに、社団法人 日本アロマ環境協会が10年前から制定している「アロマの日」でもありました。

そこで私はこの日、読書タイムのBGMにと、以前から興味を寄せていた天然精油の香りを選びました。日本の森で育った植物、クロモジの精油です。
yuicaエッセンシャルオイル クロモジ



シンプルな白のパッケージには、樹木がその命の時を刻む年輪のような木目がうっすらと浮かび上がっています。中には5mlのクロモジの精油(枝葉より水蒸気蒸留法により抽出)入りの遮光瓶と、安全に使用するための詳しい説明書が入っています。

クロモジは、日本では古来から爪楊枝に使用されていたときいています。落語の中でも、楊枝のことを「 クロモジ」と呼んでいました。今でも、お茶会などで和菓子に添えられる風情のある楊枝といえばこの黒文字(クロモジ)です。昔の人がこのような用途のために選んだ理由は何だったのかと想像してみます。今のように歯や口腔内を綺麗にできるペースト状の歯磨き剤も無かった時代、クロモジを使うことによって得られたメリットは…?もしかしたら爽やかな芳香とともに抗菌効果も期待できるのかもしれません。

私がこのクロモジの香りに魅かれた理由はその清々しさです。深淵な森の中に浸ったかのように気持ちが鎮まり、ふっと一瞬、ローズウッドを思い起こさせるフローラルな香りが流れていきます。

おかげで3日の午後は思いのほか読書に集中できました。読んだ本のことはこちら に書いています。

yuicaの方によると、クロモジ精油の原材料となる木はたくさん日本の森にあるそうです。もちろん、スギやヒノキも…。豊かな日本の森林資源を上手に活用することが、「木の循環」につながり、自然環境をまもることに繋がるのではないかと改めて感じました。

2011年11月6日日曜日

究極のとき、満たされたいのは嗅覚… 他の感覚は嗅覚に追従する

いつ自分が最後の時を迎えるかなんてわかるはずもないのだが、仮にその最後が事前にわかったとして…私の感覚は何を求めるのか。その究極の欲求はと考えてみた。キッカケは、服飾史家、中野香織さんの本日のブログ。

「姿も、形も、生態も、行動も、何を食うかによって変わってくる」(中野香織さんブログ2011,11,6)

ブログで紹介されている本、『最後の晩餐 死ぬ前に食べておきたいものは?』(宇田川悟 著 / 晶文社)は面白そうなので是非読んでみたいと思う。そして、様々な生き方によってどういう回答が出てくるのかを自分の場合と比較してみたいとも感じた。

私自身の「究極の欲求」を記す前に、まずは中野さんのブログに記された内容の中で共感できたことを挙げてみたい。

第一に、このブログタイトル。まさしく食べるもので身体も行動もつくられる…と日頃から実感していたところ。同時に思い出したことがこちら。以前、解剖学者の養老孟司さんが著書の中で、こんなようなことをおっしゃっていた…虫は幼虫のときにはせっせと食べて大きくなることが使命だから、食べることに機能が特化したかのようにまるで消化器官そのもののような形(あおむしなどを想像してください)をしているが、成虫になると生殖を目的とした形態へと身体を変える(蝶や蛾を想像してください)…。

第二に、中野さんが、ご自身は最後の晩餐は何を?ときかれたとしても食に執着がなく、ほっとくとほんとうに何も食べないので…とおっしゃる一方で、最後にこれを飲まなきゃ死ねないというお酒がある…として香り高いお酒を挙げられるくだり。私にも思いあたる。一人でいるときに何かに夢中になると食事で中断することを忘れてしまうことがある。(とはいえ、後になって猛烈な空腹を一旦意識してしまうと電池切れみたいに倒れそうになるので困ったもの。) そして、香り高いものへの欲求の高さ。特にお酒は量は要らないが、好きな香りのものを自分のペースで飲みたいという欲求は高い。香織さん同様、カクテルではサイドカーもスーパードライなマティーニも大好きです。

やはり私は、最後を目前にするような危機を感じたとして、可能であれば最も好きな香りを嗅ぎにいくだろうと思う。この感覚に食べることも含めて他の感覚も追従するのではないかと想像。究極のとき、満たされたいのは嗅覚。五感の中で一つを選ぶとするのなら。




リスに励まされる11月・素敵な2カット

11月のカレンダーの写真はシマリスの近影でした。
きのこと並んで、両頬をいっぱい膨らませています。
冬ごもりの準備…そんな季節を感じさせてくれます。
背伸びするともっと大きいのかもしれませんが、写真のリスの姿勢ではその背丈がきのこの約1.5倍。なんとも愛らしい大きさです。

そんな愛らしいリスの面影がどこか頭に残っていたのでしょう。
昨日午後、散策の最後に訪れた渋谷パルコの地下書店リブロで欲しかった洋書を見つけてハッピー気分でいたところ、ポストカードラックのリスの写真に目が留まりました。



こんな素敵な2枚を発見したのです。

左の写真は、シマリスさん(by INOMATA NORIHISA / Aflo Chipmunk)。
きのこを屋根に、たたずむシマリスさん。やはり小さそうです。
それともこのちょっと妖しいきのこが大きいのかな。
周囲は素晴らしい秋色のグラデーション。

右の写真はキンイロジリスさん(by IWAGO MITSUAKI / Squirrel)。
もしかしたら、猫の写真でも有名な動物写真家の岩合光昭さんの作品?
なんて可愛いらしい一瞬でしょうか。
小さな両手で茎を持ち、花の香りをうっとりと嗅ぐ仕草。
閉じた瞳、ちょこんと添えられた小さな手に、一瞬涙がうるっとこぼれそうになりました。こんなタイミングに出会えるなんて。

リスはみな必死で日々を生きているだけなのではないかと思います。
私もそうです。励まされました。



2011年11月5日土曜日

インスピレーションは音楽から・ゲラン イディール デュエット ローズ&パチュリ

自然に湧き上がる心のときめきがロマンティックに表現された香り、ゲラン イディールは、繊細な香りの雫を想起させるオラ・イトのボトルデザインとともに今も私の記憶に鮮明に残っています。
イディールのボトル・記憶に残る曲線美

それから2年。調香師ティエリー・ワッサーが、フランスのロマン派音楽の作曲家であるエクトル・ベルリオーズによる歌曲集「夏の夜に」にインスピレーションを得て生み出したのが、"イディール・デュエット ローズ&パチュリ"。イディールの香りのシンフォニーから抜け出したローズとパチュリの香りの繊細なハーモニーが、従来のイディールの香りの骨格を引き立たせています。日本では2011年6月3日に限定発売されました。








薔薇の花とパチュリの葉でしょうか。さりげなく柔らかな曲線が描かれたこの特別なボックスに収められたボトル。曲線はイディールそのままですが、中身の液体は赤みがかった琥珀色。

確かに異質な存在が静かに出会い、共鳴し合いながらやがて一体化していく穏やかな音楽を聴いているかのごとく香ります。もはや一つひとつの音を追いかけることはできません。一つの調べという流れとなっています。調香師は薔薇やパチュリの香りを使って音楽を奏でているかのようです。

イディールデュエットには、イディール オーデパルファンの約2倍のブルガリアンローズエッセンスが使用されているそうです。そしてインドネシア産のパチュリは厳選された葉のみがその香料として使用されるのだとか。天然香料という原材料にこだわるゲラン。おそらく単体でもうっとりできるようなローズやパチュリなのでしょう。

確かに2年前のイディールの香りの雰囲気を保ちつつ、おごそかな高貴さとともに洗練された華やかさが増しています。そこにはすでに、天然のブルガリアンローズ精油そのもののワイルドな華やかさは見当たりません。パチュリ自体も主張してはいません。まるで好奇心旺盛なハツラツとした薔薇の花の精が、森の奥深くに眠るしっとりとしたパチュリの温もりに導かれ…共鳴しあううちに本来の気高さが抽出されたかのごとく。

この秋、イディールからはもう一種薔薇の香りを生かしたタイプも発売されたようですが、この薔薇とパチュリの優美なデュエットはまずは私の備忘録に残しておきたいと思います。





2011年11月4日金曜日

知性に負けない野生の存在・ゲラン オム オーデパルファン

ゲラン オム オーデパルファン。
今年発売された男性用のフレグランスの中で、最も記憶に残った香り。



この香りの魅力、女性の私が表現するとこんな感じでしょうか。
「知性に負けない野生の存在」。
知性が勝つとは? 存在ばかりが強調されています。
知性に負けない野生とは? とらえどころのない存在感。
予測不能という魅力。
Monsieur (ムッシュウ)を演じているだけではない男性の魅力。

いつの間にかそばにいて、ふと気がつくともう姿が見えない…
いつまでも同じようにしつこく香るような重さはありません。
フレッシュな印象はそのままに、いつの間にか静かに深く…
確実に記憶に刻まれていく香りなのです。

この香りの原型は、すでに3年前に登場していました。
ゲラン 180年目の新メンズフレグランス 男の野生が選び抜く「ゲラン オム」誕生(OPENERS 2008,10,23) 。1828年にフレグランスハウスとして誕生したゲランが、男性のための香りとして初めて「オム」(HOMME フランス語で「男性」を示す)と名付けた香り、「ゲラン オム 」が、創業から180年目にデビューしていました。正確には「ゲラン オム オーデトワレ」です。

今年の香りは、オーデパルファン。ゲラン パワフルで男性的な香りと、ピニンファリーナ カーヴの出会い「ピニンファリーナ コレクターズエディション」(OPENERS 2011,5,20)。2年前のオーデトワレよりも香料の配合量が高く、持続性に優れているということです。しかし私が3年前のトワレよりも優しく神秘的に香るように感じた理由は、変えられたのは単に香料濃度だけではなく、ウッディな香りが強調されたからかもしれません。

そしてボトル。
透き通った明るい赤がカーボディを彷彿とさせるカーヴに反射。



揺らめく赤の中に浮かびあがるのは、フランス「ゲラン」のロゴと、ラグジュアリーカーのデザインでも有名なイタリアのブランドでこのボトルをデザインした「ピニンファリーナ」のロゴ。

来日公演記念 ジェーン・バーキン写真展

つい先日観たセルジュ・ゲンスブールの伝記的映画、「ゲンスブールと女たち」に登場する実在の人物たちの中で、ひときわ魅力的に演じられていたと感じたのはイギリス人歌手、女優のジェーン・バーキン。
ブリジット・バルドーとの別れを余儀なくされた直後の傷心のゲンスブールにひとめぼれし、「あなたは美しいわ」と素直に自分の気持ちを伝えるジェーン。そんな彼女にゲンスブールも恋に落ちてしまいます。当時20歳位のジェーンはスレンダーなボディに長い髪。今観ても洗練されたファッションでその魅力を包んでいました。そしていつも抱えていた籐のカゴバッグ。…ああ、このカゴバックがエルメスのバーキンバッグになったのね…としみじみ実感。

近年テレビのフランス語講座の中でもそのライブ風景を観ましたが、年齢を重ねても彼女の屈託のない魅力的な笑顔はそのままです。

そんなジェーンの写真展が11/3から15日まで渋谷パルコ地下1階・ロゴスギャラリーにて開催されると知りました。写真は、彼女の長年の親友であり、ジョン・レノンからマーガレット・サッチャーまでさまざまな著名人を撮影しているフォトグラファー、ガブリエル・クロフォードによるもの。

来日記念公演を前に、ジェーン・バーキン写真展開催(OPENERS 2011,10,31)

是非観にいきたいと思っています。

2011年11月3日木曜日

歴史を動かした「香料」はやはり面白い

香りなんて無いほうがいいという声を聞くことがありますが、そんなふうに感じてしまう、その人のそれまでというものを残念に思い、改めて未来を担う世代には香料と人との関わりの歴史をきちんと伝えなくてはと思っています。

本日午後、タイトルと著者の経歴に興味を持ち、一冊の本を読みました。
「僕は君たちに武器を配りたい」/ 瀧本哲史 著 (講談社 BOOK 倶楽部)。今年9月にデビューしたばかりの書籍です。

タイトルから感じたのは、現在の日本の若者向けに " 知 " の武器を配りたいという著者の気持ち。まずは現在大学や専門学校で講師をしている私に共感できる部分があるかも…という興味を持ちました。

著者のプロフィールの記述はこう始まります。京都大学産官学連携本部イノベーション・マネジメント・サイエンス研究部門客員准教授。エンジェル投資家…。

読みながら共感できることは確かにあり、以前から感じていた危機感も著者の視点で詳しく記されていると感じました。この数日間特に私が重要と感じていたことに関連する部分を一冊から一ヶ所、私のための備忘録として記しておきたいと思います。

p44から始まる『第2章「本物の資本主義」が日本にやってきた』の中で著者は、p57から3ページにわたり資本主義の発展の経緯について述べています。その後半部分、p58後半からp59にかけての著者の記述を引用し*~*に記します。


*…略奪モデルの後に、富を生み出す仕組みとして新たに出てきたのが「交易モデル」である。大航海時代の香辛料貿易が典型的だが、遠く離れたA地点とB地点では、同じモノにつけられる値段が違うことを利用し、モノを移動させることで富を生み出すビジネスである。インドではそこらじゅうに自生している、スパイスの原料となる草や木の実を集めてくると、イギリスでは宝石のように高く売れる。しかしインドまで行くための航海は、非常に危険であり、高いリスクがあった。航海に失敗すれば命すら危うい、そこで船に乗る人と、航海に必要な金を出す人でリスクを分け合うことになった。船に乗るのが起業家(アントレプレナー)で、金を出すのが資本家・投資家(インベスター)の原形である。…(中略)…株式会社の誕生である。*

最近特に私が未来ある学生に伝えたいと感じていることは「歴史を学ぶことの重要性」と「人にとっての香りの重要性」ですが、上記の引用部分はまさしくその認識を改めて感じさせてくれた記述です。私の母校である大学のフランス人教授が最終講義で説いた「歴史を学ぶ意義は現在を当たり前の状況として受け流さないためにある」という言葉も思い返しています。

2011年11月2日水曜日

「アロマの日」10周年

昨日から、社団法人 日本アロマ環境協会主催のアロマの日(11/3)にちなむアロマウィークということで、アロマテラピーフェア2011 (11/1~11/7)プランタン銀座本館7階 が開催中。

この試み、なんと今年で10周年。文化の日に香りの記念日を設置しているところ、もともとはヨーロッパ中心の香りを楽しむライフスタイルを地道に日本に広めようとした好例であると思います。

毎年、たいへんな盛況ぶりであると聞きます。

これもひとえに、1996年に日本アロマテラピー協会としてスタートし、2005年に環境省所管の社団法人になった協会の工夫の積み重ねによるものでしょう。

…アロマテラピーという異国発祥の文化を日本人の体質や習慣、嗜好を考慮の上、安全に、ライフスタイルを豊かにするための方法として検定制度から資格認定制度の創出をはかり、普及に貢献…その功績は大きいと常々感じる私もこうした協会の会員の一人。

明日は協会主催の アロマの日記念イベント2011も開催。今年のゲストはファッションモデルの富永愛さん。きっと富永さんもアロマを活用されているのではと想像しています。

人として、嗅覚を含む五感をフルに活かしてより良く生きる、そんなライフスタイルに香りはかならず役立ちます。そして、「香水」というファッション表現の魅力にも敏感になれるきっかけも作ってくれるアロマテラピーは、まさに文化の日に改めて意識したいものだと思います。



2011年11月1日火曜日

ファッションショーで、ちょっと未来の空気感を楽しむ

今現在見ることができるもの、身近なものの多くが「既知」という親しみと共に過去のものとなっていくとしたら、ちょっと先の「未来」は、未だ形になっていない抽象的なイメージ表現の中に潜んでいるように思う。

2005年以降、講師をつとめる文化学園大学や文化服装学院の文化祭で開催されるファッションショーを毎年楽しんでいる。服の表現を、着る人、その動き、登場順、舞台、照明、音楽…全ての要素とともに最大限に伝えようとする試み。毎年フレッシュな意気込みと、未だ世にプロとしては出ていない潜在的な感覚のシャワーを浴びるようで面白い。

初めてファッションショーを見たのは仕事として。某ファッション誌(現在は存在しない)の編集者として取材したときのこと。そのときは今よりも理屈っぽく眺めていたと思う。言葉に置き換えようとすることに必死だったから。それはそれなりに五感を駆使した。

現在私はファッションを学ぶ学生に「フランス語」という語学の最初歩を指導している。語学は理屈も大切。でも「服」と同じように「言語」もそれのみ単独では存在しない。つかう人がいて、その人の行動があり、背景がある。歴史、文化、時と場所の事情…。そんなわけで言語を軸としてその文化で生きてきた音楽や映画、香水も紹介したり鑑賞する時間を設ける。五感を総合的に駆使しながら「言語」も「服」も雰囲気をつかんでほしいと。どちらも時代の流行の流れの中にある。そして感受した雰囲気から、彼らがこの先どうありたいと願うのかをのびのび表現してほしい。

明日はそんな空気感を文化服装学院 のファッションショーで感じたいと思う。文化服装学院 文化祭11/2~4 、今年のテーマは「福、着たる」。ショーのテーマは "unlimited"。

秋の夕刻、「アール・デコの館」(東京都庭園美術館)にて

東京都庭園美術館は、朝香宮邸(あさかのみやてい)として今から78年前の昭和8年に建てられたアール・デコ様式の建物です。



朝香宮家は第二次世界大戦後までこの地を住居とされました。その後は外務大臣・首相公邸、国の迎賓館として使われ、昭和58年10月に美術館として生まれ変わりました。


1920年代から1930年代にかけてヨーロッパの装飾美術を席巻したアール・デコ様式。1925年にパリで開催された現代装飾美術・産業美術国際博覧会(通称アール・デコ博覧会)を見学された朝香宮ご夫妻はその様式美に魅せられたそうです。


アール・デコの精華ともいわれる朝香宮邸の建築は、日仏のデザイナー、技師が総力をあげて建築材料を厳選し、当時の最高級の技術が駆使されたものです。その内装は、朝香宮自身が依頼したフランス人芸術家、デザイナーのアンリ・ラパン、宝飾デザイナーのルネ・ラリックらによるものでした。

…以上の文章は東京都庭園美術館でいただいた資料の記述の抜粋です。11月1日より改築工事が始まり平成26年のリニューアルオープンまで休館となります。

2011年10月31日、この姿のままで鑑賞できる最後の日の夕刻、多くの来館者が名残惜しそうに撮影を楽しんでいました。私も魅かれたビジュアルを記録にと撮影し、こちらのブログに掲載しています。上下左右どちらを向いても重厚ながら控えめな美が漂うアール・デコの魅力を満喫できたと思います。



1F 次室(つぎのま)・香水塔。照明と香りの提供を兼ねた存在。客人へのおもてなしの象徴。



鮮やかなターコイズブルーの置物の背景にはレリーフの壁。



パリに滞在中によく見かけた風景を思い起こした、館内から眺めた中庭。




夕方17:00頃。薄暗くなってくるとともにライトアップされた玄関の曲線美。

人間はいつの時代においても「美」を求め、その心は滅びない。
そんなことをなんとなく感じた秋の夕刻。三日月が綺麗でした。

2011年10月31日月曜日

黄金の時をイメージ・イッセイ ミヤケ クリスマス限定香水 " L'OR ABSOLU "

明日から11月。
晩秋から冬への季節、私が特に美しいと感じるのは黄昏時。

今日も…夕闇に浮かび上がる三日月の背景にかすんでいく光のなまめかしさに何度も足を止めてしまいました。

そんな中帰宅すると、イッセイ ミヤケから華やかなウインターコレクションのDM。眺めているうちに思い起こしたのが昨年のクリスマス限定フレグランス、漆黒の"Noir Absolu"

当時、フランスの美容雑誌 "VOTRE BEAUTÉ"(2010,11)の中でも、神秘的に漂う黒の香りとして紹介されていました。

今年もやはり。ありました。

「昇る月と沈む太陽が出会う、
美しい黄昏時が表現された香りのシンフォニー…」
今年のクリスマスの香りの衣装は黄金のボトル。
イッセイ ミヤケ クリスマスシーズン限定香水 " L'OR ABSOLU "(OPENERS 2011,10,28)

昨年の黒の香りの響きが生かされて、トップ(第一印象)にはやはり金木犀とロータス、ミドルにジャスミンと百合…。秋から冬への空気の移ろいの余韻をトップノートに感じさせるあたり、季節感という特別感が素直に伝わりそうです。昨秋も黒の香りを体感して一瞬夜の星空に包まれたようなゴージャスな気分になりましたが、今年もシャンパンゴールドな黄昏時の雰囲気を感じられたら…と、頭の中では一足お先にクリスマス。

漆黒から黄金へ。
昨年末と今年末の使命は違います。
年の節目にこそイマジナティブに、エキサイティングに。


2011年10月29日土曜日

10年の変化を実感した10月

新発売の最新フレグランス。特に魅かれたものを試していたら、それは昔から私が大好きな香調のものであり、香水の本質を追求したものだった。

夏から秋への季節。いつもならばフレッシュな気分で新しい服の一枚位買うところが今季は特に欲しいものはなく、かわりに時計を購入。時間を見る機能というよりもアクセサリーとして。

打ち合わせなどで直接会う頻度がぐっと少なくなっても、メールやFacebookの交流のおかげでいつも会っているかのような親近感をもてる人が増えた。

20年以上仕事のお付き合いのある方が10年以上オフィスとして利用された都心の場から、郊外のご自宅へオフィス機能を移転。ほとんどデジタルでデータのやりとりが出来てしまう以上、必ずしも都心にいる必要はないとのこと。

一部の愛好者、専門家の領域だったジャンルが一般の人のライフスタイルに溶け込み、ジャンルの中でも細かな特徴・魅力が示せなければ本質を理解されないまま、陳腐化する一方である危険性をはらんできた。

変わらないものと、明らかに変わっていくもの。

本質を見直さざるを得ず、本質だけが生き残れるかもしれない…デジタルの発展とともに。そんな実感とともに今月も終盤。


2011年10月28日金曜日

秋の文化祭・香りのビジュアル作品も展示

今春こちら でご紹介していました、文化学園大学・小平キャンパスでのけやき祭・教科展示の中で展示された香りのビジュアル表現作品。これらが、来週(11/2~4)新都心キャンパス(新宿駅南口より甲州街道沿に徒歩5分)で行われる文化祭 においても展示されます。

展示場所は新都心キャンパスC館5階のC-051教室。
他の教科の展示とともに、私の担当講義「ファッションとアロマ」の2010年課題作品18点(9種類の天然香料の香りを平面にビジュアル表現した作品)を、香りとともに鑑賞することができます。

文化祭期間中は、大学の国際ファッション文化学科によるファッションショーはもちろん、お隣の文化服装学院によるファッションショーも毎日開催されます。

今週末から来週にかけて、東京ではデザインイベントやアロマウィークなど、様々なイベントが盛りだくさん。秋の深まりとともに、人の五感も研ぎ済まれていきますように。



2011年10月27日木曜日

3都市の特色を反映したイベントでデビュー・ボッテガ・ヴェネタの香り

以前、こちら にてご紹介のフレグランス。実際にこの香りを試させていただく機会を得たので、感じたことを記録しておこうと思います。

なめらかで穏やかに香りながら深い余韻を漂わせていく…その香りの静かな流れ方には、控えめながら洗練された美を体感。似たような感覚の記憶をたどると…フィレンツェの街を散策した秋の日があり、グレン・グールドのピアノに聴き入った冬の夜があり、生まれて初めてフレグランスを肌にまとい「これは私だけの秘密の時間」と感じた春の夕暮れが浮かび上がりました。

これはおそらく、身にまとう女性の肌によって様々な香り方を描くフレグランス。主役は人であることをわきまえた奥ゆかしいフレグランスとも言えます。日本では本日10月26日から発売ということですが、反響が楽しみです。

ボッテガ・ヴェネタでは、ブランド初のフレグランスを世界展開するにあたり、3か国の3都市、ミラノ、ニューヨーク、東京において発表イベントを開催しました。それぞれの開催都市の個性を反映した伝え方は、ブランドが誇る美のかたちをそれぞれの地域の人びとの記憶に残るような形式を試みた好例と言えるでしょう。

ボッテガ・ヴェネタ/ フレグランス 発表イベント
をご覧いただくと、3都市でどのようなイベントが開催されたかを、それぞれ選ばれた場所の画像とともに知ることができます。選ばれた場所、招かれた人びと、背景に流れる音楽…それぞれとあいまって体感できる特別な香りは、人の潜在意識の中にしなやかに入り込んでいったに違いありません。


2011年10月26日水曜日

ニットの魅力は糸の魅力から・来春デビューの "Quatre quarts"

ニットデザイナーのキタイ・ミホさんのブランドが来春のデビューに先駆け、外苑西通りにあるSUSギャラリーにてお披露目の展覧会を開催。
カトルカール2012 S/S展示会 10/25~29@SUSgallery

新しいニットブランドの名前は"Quatre quarts"(カトルカール)。フランス語で4分の4という意味。卵、小麦粉、砂糖、バターの4種の素材が全て同配合で作られるパウンドケーキのことで、フランスの家庭では子供が母親に最初に教わるお菓子だそうです。

いつもは金属という素材の面白さ、美しさを様々な角度からプレゼンテーションしてくれるSUSギャラリーが、今回の展示では、ニットという、様々な糸から編まれて生まれた質感を見せてくれました。オープニングパーティーで振る舞われたマカロンやプチケーキの色・味・香りも、シルク、麻、コットン、カシミア、ウールなど様々な糸の風合いや発色の違いをひときわ感じさせてくれたと思います。

私が真っ先に眼を奪われたのはこちら。


個人的に好きなブルー。シルクの滑らかな光沢。インナーにシンプルな白のシャツをカフスを折り返して着たくなる基本形。ジュエリーのごとく存在感を放つ多面体の一つボタン。これら4つの要素が等分に1着の魅力を放っていました。

麻の入ったセーターにはざっくりとした質感と上品な透け感。カシミアの入ったセーターには柔らかさ。糸によって異なる発色と存在感も改めて面白いと思いました。全てが曲線でできた人の身体を覆う柔軟性をもつニットは年齢問わず、子供から大人まで着こなしによって幅広く楽しめます。

今日は糸という素材の力を実感…と思っていたら、フランス生活の長いキタイさんからバスク地方のお土産ということでカカオ豆をローストしただけ、という珍しい一品を試食させていただきました。カカオの香りと渋みが香ばしく口の中に拡がります。砂糖もなにも一切加えていないカカオ豆…という素材の力をまたまた感じてしまったのでした。


2011年10月24日月曜日

ブログ1周年・人気記事アーカイブ

sawaromaブログを始めて1年経ちました。
スタート以来、365日目のこのブログが252本目です。

昨年11月からは、「にほんブログ村/ファッションブログ/香水・フレグランス」のカテゴリーにこのブログを登録したところ、11月半ばから今年2月半ばまでの3か月間ランキング1位。以降も上位を維持しています。多くの方にお読みいただき有難うございます。(にほんブログ村/ファッションブログ/香水・フレグランスのページに入るには、私のブログページ右下の「香水・フレグランス」をクリックします。)

ここで1周年の記念に、これまで「にほんブログ村/ファッションブログ/香水・フレグランス」の人気記事第1位にランクインしたことのある記事を、アーカイブとしてご紹介いたします。


WORLD BEAUTY・2 /2010,12,17

W.B.5・アジア系女性の事例 /2010,12,24

花の知恵(モーリス・メーテルリンク著) /2011,3,19

レモンの香り(親・清・明) /2011,3,30

薔薇の切手を眺めて…心はバラ園へ /2011,5,19

「香りをイメージする香水瓶展」からボトルの記憶をたどる /2011,7,18

映画「イヴ・サンローラン」の余韻 /2011,7,23

ローズウォーターで鎮められた夏肌 /2011,8,10

ナッツ色々・異文化出身 /2011,8,11

柔らかな白いレースのように・ジェシカ シンプソン ファンシーラブ /2011,8,17

THANN ジャスミンシャワークリームRC &ボディミルクRC 2011,8,29

「可愛い」が「こわい」/2011,9,1

「香りの専門誌パルファム」サイトリニューアル /2011,9,21

そしてもう一つ、1位になったかどうかは定かではありませんが、複数の方から共感いただいたことを直接伝えていただき、印象に残っているものも挙げておきたいと思います。
冬ケア・3 (心地良い動きで保つボディ) /2011,2,16

日々感じ、考えたことを文章で綴り発信していくことによって新しい出会いもありました。備忘録のようなその発信が252本のストックとなり、これからも続けていきたいと思っています。





2011年10月23日日曜日

"15.0%"から見直してみたアイスクリームの歴史

「待っていました!」と思うモノの登場から、改めてそのモノの意味やそのモノにまつわる歴史や背景などの情報価値を見直す機会を得ることがあります。そして。そうした機会を提供してくれる人こそデザイナー、と常々思っています。

知人の寺田尚樹さんは、建築家でありプロダクトデザイナー。料理をすることが好きであり、食へのこだわりも味へのこだわりもひときわ高い彼によって今夏発表されたアイスクリームスプーン、「15.0% 」には大いに感動。


乳固形分15.0%以上というのがアイスクリームという呼称の条件。こうしたアイスクリームを美味しく食べたいとき、私にはこんな悩み事がありました。

1,固さによっては力をかけないと理想の状態で口に運ぶことができない。
2,1のためにティースプーンではグリップが薄すぎ長すぎ、手が痛くなる。
3,そうこうしているうちに変な具合に溶けはじめてしまう。

アイスクリーム専用のスプーンというものが無いならば、とお店でもらう木サジやプラスティックのスプーンを使ってみるとますます上手くすくえないだけでなく、木サジなどに至っては木の匂いがアイスクリームフレーバーの繊細な芳香を邪魔してしまい残念。

寺田さん発案の"15.0%" は、そんな悩み事を解決してくれました。
01vanila のスプーンは先端がタマゴ型のスタンダードタイプ。



アルミの光沢もアイスクリームの高級感にピッタリ。寺田さんのデザインを形にできた背景には富山県高岡市のアルミ鋳物&研磨技術がありました。

そもそもこんな美味しいものは、「いつ、どこで誰が思いついたのだろう」と調べてみたら面白いのです。嗜好品としての発祥は紀元前、ローマのジュリアス・シーザーに遡るのでした。シーザーに続きネロ皇帝…そしてアイスクリームの美味しさをフランスに伝えたのはやはりカトリーヌ・ド・メディチ。イタリアだけでなく、イスラム圏においても生まれていた背景がありました。
「アイスクリームの歴史と背景」/社団法人日本アイスクリーム協会 には実に興味深いアイスクリームの歴史が綴られています。




2011年10月22日土曜日

サムサラとサンダルウッド

1980年代後半。
親元を離れ、異国の言語を学び、一人で生活していた時代。
困難の中にも閃光のような自由の喜びがあり、あふれる情報の中で意識よりも圧倒的に速いスピードでかけめぐる五感を頼りに生きていた頃。

出逢った香水がサムサラ(ゲラン)。
すぐに魅かれ、以後数年間、私の大切な香りの一部となった。
特に繊細な残り香が素晴らしい。

神秘的で柔らか。困難の海の果てに辿り着けるような奥深い官能性。
心が静かに落ち着き、五感を通して肉体の状態を冷静に感受できる香りの力。

ゲランの4代目調香師、ジャン-ポール・ゲラン氏は1989年にこの「サムサラ」を発表。「サムサラ」とはサンスクリット語で「輪廻」を表す。この調香師が恋した一人のイギリス人女性のために、彼女独自の官能性を解き明かしてあげたいという思いから創作されたという。彼女が白檀(サンダルウッド)とジャスミンを好むという情報を生かしながら。

「サムサラ」のボトルは彫刻家ロベール・グラネによるデザイン。きっと一目観たら忘れないかたち。座禅のポーズを彷彿とさせる、生命のような深い赤。

後になってこのサムサラに、天然香料サンダルウッドが多く使用されていることを知った。そしてその後アロマテラピーでサンダルウッドの精油で出会う。面影は確かにある。心を穏やかにさせる静かなイメージが時間経過とともに本能を刺激する官能性へとゆっくり変化するあたり。しかし、サムサラはそうしたイメージのみを見事に生かし、素のサンダルウッドそのままの表層を露わにはしていない。香料から感受された美のエッセンスで「サムサラ」という女性のためのドレスを描いた。

'80年代から'90年代へと移る時の中でこそ私が必要とした香りの一つは、いまも深く記憶に刻まれている。


参考文献:
「ゲラン 香りの世界への旅」
ジャン-ポール・ゲラン 著
田中樹里 訳
フレグランスジャーナル社




2011年10月21日金曜日

ジューシーで微芳香・新高(にいたか)梨

大きなおおきな梨をいただいた。
なまえは新高(にいたか)。



ゆうべから冷やして、今朝、家族3人で1個をいただいた。
まずはジューシーで嬉しい。
そしてほのかに私の好きな二十世紀の青い香りと歯応えが。
追いかけるように上品に拡がる甘味。

身体に朝がやって来た。
有難う。「にいたか」さん。

高知出身の方によると、この品種は高知生まれとのこと。色々調べてみると、新潟産の品種と高知産品種の交配だとか。その新潟産品種も元々は高知出身だという説もあり、なんだか高知の香りを体感するような気分。(訪れたこともないのに)

梨はとにかく水分が多く、カリウムなどのミネラル、食物繊維、ほのかな芳香と甘味、という点で、朝起きたばかりのフラフラな私には神様みたいなくだもの。起きたばかりでただミネラルウォーター飲むのはつらいけれどこれならば負担なく水分、ミネラル、糖分を摂取できるから。

昨年発売されたサルヴァトーレ・フェラガモの香水、「アッティモ」にはトップノートに日本の梨の香りが使われたということを思い起こし、どの品種なのかなあと想像してみたりする。



2011年10月19日水曜日

秋から冬への匂いを感じる場所・街路樹

金木犀の香りが秋を告げてから、約ひと月。
今日は、秋の空気に冬の匂いが混じり始めた日。
今季初のタートルネックセーターを着て買い物へ。

うっすらと緑の部分がほんの少しになったみかん。
紅玉が終わり、秋映が並び始めたりんご。

視覚的に晩秋を感じさせてくれるものが少しずつ増えていく。
特に街路樹を歩くとき、私は最も深く、冬に近づく秋を感じる。

日一日と色づき、舞い散る葉。
冬支度に備えた静謐な樹皮からは乾いた鎧のたたずまい。
ひんやりとした空気の中で、ゆっくりと穏やかに香る樹の呼吸。

東京に暮らすようになって四半世紀が過ぎた。
その間、私の記憶に匂いとともに深く刻まれた街路樹は三つ。

表参道、ケヤキ並木。
外苑前、絵画館前の銀杏並木。
そして国立市、大学通りの銀杏と桜の並木道。

毎年秋も深まるとこの場所が懐かしくなる。

香水プレゼント応募ご案内・「香りの専門誌パルファム」No.159

ひんやりと程よく乾いた秋の空気には、エレガントな香りが似合います。

9/20に発刊された「香りの専門誌パルファム」No.159
には、2011年10月末日締め切りの香水プレゼント応募のページがあり、こちらを、パルファムサイトをご覧の方にも公開しています。この春デビューしたばかりのスワロフスキーの香り、「オーラバイスワロフスキーオーデトワレ」をはじめとして、秋の新作、ヴェルサーチの「ヴァニタス」やメイク化粧品も含めて総計17名様にプレゼント。

プレゼントページのタイトルは
「うっとり秋、キレイな秋を目指したい。」
どんなに綺麗な服を着たとしても、当の本人が綺麗なものへのうっとりとした気持ちに満ちていないと似合いませんね。香りのオーラで心にも美をチャージしたいものです。

対象となる商品のうち「フラワータグオーデトワレ」(ケンゾー)と、「ヴェリイ イレジスティブル ジバンシィ インテンス オーデ トワレ」(ジバンシィ)については、動画により編集長からのご紹介メッセージもご覧いただけます。

ご応募はこちら、「香りの専門誌パルファム」No.159からサイトご覧のみなさまにもプレゼント! からどうぞ。




2011年10月17日月曜日

日常が筋トレ

今日着ていた服が、私におもいのほか筋トレを強いることとなった。
一見ロングスカートなのに真正面の膝やや上からスリットが入っている。この服を着てただ立っているだけであればまだ良いが、歩き始めたり腰掛けたりしようものなら、足腰の筋肉を駆使せずして綺麗な佇まいには見えない。

まず両脚は真っ直ぐをキープした上で踵から静かに着地。スリットからむやみに脚が見えてはいけない。そして電車の中。腰掛けたらもう両膝はピッタリと密着させたままで両脚をそろえ軽く斜めの角度を保つしかない。いかに脚の筋肉の収縮を必要とすることか。

高校時代に膝を捻挫でいためて松葉杖生活を送ってから、なるべく膝に負担がかからないように毎日脚の筋トレを続けてきた。といっても特別なことをしたわけでもジムに通ったわけでもない。以下はすべて日常の動き。

・なるべく背筋の姿勢をぴんと。
・なるべく階段を使って「静かに」早足で歩く。
・座るときは脚をそろえて。
・同じ姿勢、同じ運動を長時間続けない。(両腕も時々上げてみる)
・荷物はなるべく肩にかけず両腕の筋力を交互に使う。
・入浴後両脚を片脚ずつ90度以上前後左右に真っ直ぐ上げて10秒キープ。
・シャワーで全身を洗うときは立ったままで身体を曲げずに両脚を洗う。
・髪を洗うときは首を真っ直ぐ頭を上げて両手の動きをシンクロさせて。
・食事のときはよく噛むこと。
・キッチンに立つときは時々爪先立ちで。
・口角はつねに下がらないように。
・声を出すときは腹筋を意識。

身体の中で最も筋肉量の多い脚は、体重を支えてくれている。感謝しながらも鍛えておかなくてはといつも思う。顔の筋肉も油断していると落ちてくる。そして睡眠も筋肉疲労解消には大切なのだと思うので、夜更かしは自重しなければと反省。






2011年10月16日日曜日

カトリーヌ・ドヌーヴと薔薇の香り

毎月の薔薇に関する連載 のため、資料を探していたら、2004年3月来日講演を行ったジャン-ポール・ゲラン氏(1828年フランスにて創業の香水ブランド「ゲラン」4代目調香師)の言葉を綴った手帳に再会。

メモを頼りに彼の言葉を補って再現してみます。

…"Benjamin"(1968:邦題 「めざめ」)という映画をみて、鳥籠に閉じ込められている美しい女性に眼を留めた…そのひとは女優カトリーヌ・ドヌーヴ。この女性のイメージに着想を得て私は香水"Nahèma"(ナエマ)を創作した。
…「ナエマ」(1979年)は、薔薇への賛辞。最も美しい香り。非常に高価な薔薇の香料をたくさん使用した。多く売れたわけではないが今でもナエマファンは根強く残っている。…

「ナエマ」は8年間の長きにわたり数百回の試作を経て完成されたということですが、それほどまでにこの調香師の創作への情熱に火をつけた女優の存在に改めて興味を深めました。

カトリーヌ・ドヌーヴはもちろんフランス映画界を代表する女優の1人でもありますが、ファッションデザイナー、イヴ・サンローランの顧客としても有名であり、多くの美のクリエイターたちの創作へのインスピレーションに貢献したことと想像します。そんな視点をもって彼女の出演作を鑑賞し直すのも楽しいはず。初期の代表作「シェルブールの雨傘」のあの甘美で切ない音楽は今でもよくおぼえています。

薔薇「カトリーヌ・ドヌーヴ」。フランス女優の名前をもつ薔薇。しっとりと華やかです。

2011年10月15日土曜日

秋も深まると…たとえば北のワイン

久々にこんな時間に起きていたら、パリ在住の友人からメールを受信。

…もうすっかり秋ですね。フランスは9月の末からかなり長い間インディアンサマーが続いたのですが、いったん過ぎたら秋深く…

向こうでも残暑が長引いた上、一気に秋が深まりつつあるのかと共感。
そろそろ来月のボジョレーヌーヴォーのことが囁かれる時期なのですが、美味しいワインはフランスやイタリアだけとはかぎりません。

夏に訪れたこちら
で買った本をご紹介。






夏に私が試したのは小樽ワインの白でしたが清涼感あふれるフルーティーな香りがなかなか素敵でした。北の大地でのぶどう栽培、ワインへの情熱。お店の方からは地理的に絶好の条件にめぐまれたという余市のワインの話をきき興味をもちました。
地域ごとに地域のワイン。うっすらと思い浮かべたのは同じラヴェンダーの香りでも、フランス産とブルガリア産、そして日本の北海道産では違うこと。それぞれの土地と気候と関わる人の気質を反映する香りの違い。またいつか北のワインを飲んでみたいと思います。



2011年10月13日木曜日

色んな国の匂いのする歌声・クレモンティーヌの「カヴァメンティーヌ」

ついふらふらと入ったお店で見つけた懐かしのクレモンティーヌ。
タイトルをよく見もせず、イチバン好きなヴィジュアルのジャケットのものを手にとった。どうやら今年の1月に発売されたカバー曲を集めたものらしい。











曲目をご紹介。
01 Un Homme et Une Femme(男と女)-GRAND MIX-
02 Garasugoshi ni kieta natsu(ガラス越しに消えた夏)
03 Akujyo(悪女)
04 Season in the sun
05 Les Champs-Elysées(オー・シャンゼリゼ)-SWEET MIX-
06 La mer
07 Tenohira wo taiyouni(手のひらを太陽に)- Japanese ver.-
08 ふたりでPARISに行こう
09 Bésame mucho
10 Route Nationale 7(国道7号線)
11 Romance d'Autrefois(過ぎ去った恋)
12 Comme d'habitude(マイ・ウェイ)

これがなかなかいい。聞いていて心地よく、疲れない。
特に誰もが知っているであろう、映画「男と女」の"ダバダバダ…"がこんなにもスマートに軽やかに流れ、あの「オー・シャンゼリゼ」が可愛い音になっているのにはちょっと驚く。改めてフレンチ・ポップスの魅力を再発見した気分。

さっそくフランス語初級のクラスで流してみたところ、10代後半から20代の学生にもけっこう好評。貸してほしいとリクエスト。

あの「チューブ」の夏の熱唱系代表曲「シーズン イン ザ サン」もまるでシエステ明けのおやつの時間のような脱力感がただよい、「ここはどこの国?」と思ってしまうし、フレンチネイティブのゆっくりとした日本語の発音にもなごむ。

フレンチ、ラテン、アジア、アメリカン…さまざまな文化が混じり合い、ポップスのようなジャズのようなボサノヴァのような国籍不詳の音が淡々と流れるひととき。なんだか無になる境地。

このひとのCDを買ったのはもう何年前になるだろう。確か1990年代の前半。
穏やかな気持ちで聴けた歌声。聴くと自然にチカラが抜けていく感覚が独特。改めて、どんな生い立ちなんだろうと公式サイトをのぞくとこんな記述が。

「パリ生まれ。フランスで有数のジャズ・レコード・コレクターの父親の影響で自然とジャズに囲まれながら育つ。幼少時は父の転勤に伴い世界中を回っており、ラテン音楽とボサノヴァに親しんだのは4歳のころに過ごしていたメキシコでのこと。その後、アメリカ、ギリシャ、スペイン、イタリア、ポルトガル、イギリスでの生活を送りながら、様々な文化に接して育った。…」

続きはこちらより。クレモンティーヌ公式サイトよりバイオグラフィ












2011年10月12日水曜日

ローズマリー&オリーブオイルでハーブオイルを

昨日の授業で鑑賞用にと入手したローズマリー(食用ハーブ)が余ったので持ち帰ってきました。もちろんさっそく今夜はローズマリーのポークソテーを作るつもりなのですが、それでもまだ余るので、いっそのこと新しいオリーブオイルを一本買ってきてローズマリーを漬け込み、香りを移して料理用ローズマリーオイルを作ろうかと計画。

ローズマリーの育て方・使い方というサイトがあります。
ローズマリー好きな人にはおすすめの内容がぎっしり。

その中にしっかりと記載されていました。
ハーブオイル(ローズマリーオイル)のつくり方

芳香成分は油脂に良く溶けるのでこの方法は理にかなっています。良く洗ったローズマリーの水気をきちんと取ることが大切。数週間後には香り高いオイルができていつもの肉のソテーとか粉ふきいもなどの定番料理がひときわ美味しくなることを想像。パンにつけてもおいしそう。




2011年10月11日火曜日

香りはファッション・語学は音楽

私の職業のテーマには「香り」があり、「語学」がある。この二つを媒介に私は日本という母国以外のことにも広く興味をもてたと同時に見識を深めることもできた。これらのテーマを職業に結びつけられたのは、論理性を鍛えてくれる数学が好きだったこと、文章を読んだり書いたりすることが苦ではなくむしろ好きだったこと、そして、人にわかりやすく伝えたいと願う気持ちが強かったからかもしれない。

こちら にてご紹介したように、私は2005年から「ファッションとアロマ」という講義を担当している。毎年学生には、幼少期からの記憶の中で香りに関わる印象的な出来事を記述させてきた。それは、その後講義の中で彼らが鑑賞していくさまざまな香料に対する感受性の背景であり原点である場合が多いからである。

私自身も憶えているうちに記述しておこうと思う。

「香り」との出逢いは、私に服飾への興味とともに「少しでも自分を含めた周囲を素敵にしたい…」という欲求と好奇心をもたせた。最初に美的な表現としての香水の香りを感じたとき、私は自分がどんな服を着てどんな髪型でどんなたたずまいで存在していたいか、というイメージを頭の中に描いたことを今でも憶えている。それは小学生になるかならないか位のとき。以来私は、洋服を着た女の子の絵ばかり描いていたように思う。おぼろな記憶の中にその当時、「モンシェリ・CoCo」というファッションデザイナーを目指す女の子がヒロインのアニメを見ていた自分もいた。その頃の私はココ・シャネルの名前など知らない。

もう一つ、「語学」との第一の出逢いは英語。やはり5~6歳の頃ラジオから流れていた洋楽。英語の歌詞の音楽。響きもリズムもすべて素敵に感じられた。ただそういう思いがきっかけで、小学生のうちからラジオの語学番組をききはじめ、その発音の習得に夢中になった。好きな歌を覚えるように、聴いたとおりに話せるようになることが何よりもたのしかった。第二の出逢いはフランス語だが、モチベーションは最初は発音マスターではなく、フランス文化を知ろうという理屈っぽいものだった。フランス語も音楽のように楽しく素直に音を自分で発してみようと思えるようになったのは、少し後になってから。この言語を専攻した大学でバンド活動をしたり、様々なシャンソンやフレンチポップスを聴くようになってからである。

結局、「香り」は「ファッション」と、「語学」は「音楽」とそれぞれ私の中で結びついたから今でも関わっているような気がする。好きなことにつながるとモチベーションも好奇心も果てしない。「香り」の「何故?」は科学への興味、「語学」の「何故?」は文法構造と言語に込める考え方、歴史への興味へとつながる。これらは全く尽きることはない。今でもわからないことだらけ。その気持ちのままで、たとえわかったと思っていることが微々たるものでも講義で伝えようとしているし、活用しようとしている。





2011年10月10日月曜日

クリアな芳香と酸味・「紅玉」はいまが旬

林檎の美味しい季節になりました。
私の大好きなフルーツ。

甘味はそれほど欲していないけれど、爽やかな芳香と酸味と、適度に硬いシャキシャキ感を求めた結果、いつのまにか「紅玉」という林檎がイチバン好きになっていました。早速昨日店頭で見かけて購入。深い紅色。つやつやりんご。








みるからに「ぎゅっ」とした香りを想像してしまいます。
私から1メートル以上離れたところで家人が皮をむきはじめたのですが、ちゃんとあの、クリアな芳香がふわ~っと飛んできました。この優しく上品な香りも大好きなのです。皮の香りは何度でもかいでしまいそう。

むきたての青みがかった実をほおばると、小気味よい酸味が口の中に広がり、ワンテンポ遅れてほのかな甘味がついてきます。この香り豊かな触感がアップルパイなどには欠かせないのでしょう。

「ようこそ!青森県のりんごへ」 名称別品種検索表より「紅玉」によると、この種類は明治以降外国から導入されたものだとか。生まれはアメリカ。関わった方のお名前にちなんで、ジョナサンという別名もあるようです。きっと香りの素晴らしさはアメリカの人々にも好評だったのでしょう。

「あー、いつか旬の時期に箱買いしたい…」なんて思って、ついつい二つ並べて撮影してみたりします。








昨日Twitterで一言、紅玉のことをつぶやいただけなのに、どこかで見つけてくださったのでしょう、長野県で紅玉を丁寧に作っていらっしゃる生産者の方が早速フォローしてくださいました。この紅玉屋 さんも、紅玉が大好きでいらっしゃるとのこと。いつか箱買いが実現しそうです。

ちなみに紅玉の旬は10月上旬から中旬だそうです。いまが旬。



2011年10月9日日曜日

「夢見るシャンソン人形」・ウーロン茶のCMに'60年代フレンチ・ポップス

一度聴いたら忘れられなくなるメロディライン。
チラリとCMで耳にして以来、「フランス語のこの歌はなんだろう?躍動感がありながらどことなく冷めた悲哀が漂うこの曲…」とボンヤリ思い続けていたある日、ついに発見。


「夢見るシャンソン人形」(原題:Poupée de cire, poupée de son)。
原題の直訳は、「蝋で作った人形、ヌカで作った人形」。
フランス・ギャルのベストアルバムのトップがこの曲。

1965年に生まれたこの歌は、フランスでは勿論、日本でも大変なヒットを記録。後に日本語でもカヴァーされている。'65年の「ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト」でグランプリを獲得したという。そして歌っているフランス人歌手、フランス・ギャルの誕生日は今日。10月9日だとCDの解説書には記されている。彼女は1947年生まれだからこの歌が生まれた年には18才。歌っている姿も見た。どことなくぎこちないような動きが、造られた人形 "poupée" を想像させ、意志とは裏腹に動かされてしまう悲哀が感じられてしまう。まさしく"アイドル"の一面か。

この曲を知らないはずの私がなぜ、どことなく懐かしさを感じたのか。遠い記憶の中で聴いたことがあったのかもしれないが、その後の'70年代の日本の歌謡曲が醸し出していた雰囲気にこの楽曲の影響を感じたかもしれない。そして現代にいたるまで絶え間なく「アイドル」と呼ばれる人達は登場してきた。

作詞作曲は、セルジュ・ゲンスブール。女優ブルジット・バルドー、歌手ジェーン・バーキンをはじめ多くの女性たちと音楽に愛されたアーティストである。ちょうど今春「ゲンスブールと女たち」という映画が公開されていた。彼の伝記的物語。見逃したのでどこかこれからでも観られるところは、と探したらあった。新橋文化劇場にて10/22から一週間。観に行きたい。

ミステリアスなプレミアム・ニューヨーク発"LELABO"の香り

このブログ、書く前に「フレグランス」か「ブランド」、どちらのカテゴリーに入れようかと悩んだ。そして両方に入れることにした。

香りが好きな人が魅きつけられる要素満載のミステリアスなプロデュース、そして実際にこのお店で体験するプロセスを経て得る香りのプレミアム感。

ブランドとしての「香りを本当に楽しんでほしい」という思いがひしひしと伝わってくる。テーマとなる香料と数字(確か使用香料数だったと思う)のみというストイックなネーミングと、香料品質にごまかしのきかない、直前に最終調合するという販売方法。

セレブを虜にしたスペシャルなフレグランスをLELABO(ルラボ)よりあなたにー創始者エディ・ロスキー氏がストアイベントに(FASHION PRESS 2011,10,8)の記事を読み、私は数ヶ月前に知人から試させていただいたルラボの新作、サンタル33の余韻を思い起こした。深くあたたかな香りだった。

香りをどんな印象で受け止め、どう使いたいかは使う人の自由、といわんばかりにネーミングは事実の列記のみ。

香りは調合したばかりのときと数日経ったときとでは香り方が変化していく。創り手はその過程も顧客と共有しようとしている。

11月限定販売されるという各都市の名前が連ねられた「シティエクスクルーシブ」シリーズ。このネーミングもまたまたミステリアスなプレミアム。体験してみたい。




2011年10月7日金曜日

ボッテガ・ヴェネタの初フレグランスは、余韻豊かなフローラル・シプレー

先日、このフレグランスを見せていただく機会がありました。

まずパッケージとボトルのカラー。私が、香りの映像美・ボッテガ ヴェネタ初のフレグランス を書いた時に想像していたとおりの淡いベージュにほんのりピンクが漂うような色。そしてまるみのあるかたち。

本日2011,10,7掲載のフィガロジャポンの記事に、ついにこのボトルと香調の情報がアップ。優雅で気品溢れる香りに包みこまれるボッテガ・ ヴェネタの初フレグランス

記事にも書いてある、「レザーニュアンス」。確かに上品に漂っています。トップノートからすでに柔らかで奥行きの深さを感じ、大人の女性のしっとりとしたたたずまいを想像。しばらくするといちだんと優雅に変化。フローラル・シプレの香りが、静かに、余韻豊かに漂いはじめます。包み込まれてみたいと思いました。10月26日発売。深まる秋の空気にもよく似合うでしょう。


2011年10月6日木曜日

ジバンシィ プレミアム フレグランス2010 の3種

香水は高価、とよく言われるがそれは天然香料の希少価値、ならびに天然からヒントを得て単離または合成される香料の希少価値がベースになっているということは、実はあまり知られていない。

現代生活の周囲のあらゆるものが香料によって安全性や快適性が保たれているという事実、これがどこか当たり前になっていて香料の存在を意識していない人も少なくない。一方で、その香料の特性が際立って示される香水の存在意義に抵抗感が示されるケースが、この日本では特に多いことに残念な思いをすることも多々ある。

数多くのファッションブランドが香りのイメージ訴求価値をふまえてユニークなフレグランスを創出している。とりわけシャネル、エルメス、ジバンシィなどはその筆頭に挙げられると思う。

ジバンシィは数年前から天然香料の希少価値とその香りの豊かさをクローズアップ。今年も2010年に収穫して得られたイランイラン、ローズ、ジャスミンを活かしたブランドを代表するプレミアムを提案している。

ジバンシィ プレミアム フレグランス2010をご覧いただくと、約20年前にデビューしたアマリージュをはじめ、近年のヒット作ヴェリィ イレジスティブル、アンジュ デーモンの計3種のラインナップが限定発売されていることがわかる。

この3種の香りの感想は後日改めて。











2011年10月5日水曜日

決め手は艶と持続性・資生堂発 "VOTRE BEAUTÉ"掲載アイシャドウ

フランスの美容雑誌最新号のサイト、トップページで資生堂のアイシャドウが掲載されている。椿のかたちのシックな黒のフタとともに12色。

記事は、"VOTRE BEAUTÉ" 2011,10,3掲載のもの。

とにかくなめらかで艶やかな発色が素晴らしいとのこと。しかも指先で簡単にひと塗り。塗り方の加減で濃淡を調節。以前に「W.B.3. フランスの事例」でご紹介したようにデリケートなフランス人の皮膚にとって、ひときわデリケートなまぶたにのせるアイシャドウは、皮膚に負担をかけずなおかつ発色と持続性の優れものが求められるのではないだろうか。

一度塗るとその持続性が素晴らしいという。この記事の最後に貼り付けてあった資生堂のページで説明を読んでみると、なんと16時間も持続するとのこと。こうした具体的な記述も効を奏しているようす。

確かに、フランス人でなくても、まぶたの皮膚は最も薄くデリケートな部分。睡眠不足だけでなく乾燥も大敵。刺激を与えすぎると確実に傷む。私もこの部分にブラウン系のシャドウを使うが、クリームタイプは本当に使いやすく皮膚が疲れない気がする。粉末タイプでもチップやブラシでなく自分の指咲きでそっとのせてなじませることもある。とにかくこすらないようにする。

疲れが目立ちやすい目元に輝きを添えてくれるアイカラーは年齢に関係なく女性の味方。改めて、睡眠不足にならないようにと思ってしまう。





2011年10月4日火曜日

世田谷線と猫・一期一会

もうかれこれ20年はこの線のお世話になっている。
下高井戸と三軒茶屋を結ぶ世田谷線。
のんびり進むから、猫も時々線路でくつろいでいる。



緑の中に、白黒もようの猫。きりりと綺麗な瞳で見つめてくれた。
どうやらお気に入りの場所のよう。夜中などはきっと、電車が通らないから、のびのびこの上で過ごすのかもしれない。

必死で生きていると、ときに神様は一瞬だけ素敵な出会いを授けてくださる。

2011年10月3日月曜日

くつろぎいちご・完熟フルーツ&ハーブブレンド

このところ、ますます「量より質」で満足している。
素敵と感じさせてくれるものは、一瞬であればあるほど素敵。
美味しいものも、わずかだから美味しい。
良い香りも然り。

先日青山をふらりと歩いていて入ったのがこのお店。
タイのオリエンタルな雰囲気に満ち満ちた HARNN



一瞬で非日常感。気分はオリエンタル。わかりにくい感じがまた素敵。
同行したのがタイでこのお店を訪れたことがある人物だったのできいてみると、タイの雰囲気そのままだとか。あえてそのままなのがミステリアスかも。



奥からにこやかな笑顔の女性が「フルーツハーブティーをどうぞ。」
ピンク色の液体。ますますエキゾチック。
一口含むと、しっかりとした、でも程良い甘さと酸味。一瞬で拡がるフルーティーハーブの香り。甘味料なしでこの甘さ。完熟フルーツですね。

その名は「くつろぎいちご」。



入手翌日、早速水出しでアイスティー。ちょっとふやけたフルーツはそのまま食べても、ヨーグルトに抽出された液体を少し混ぜながら入れてもグッド。

お店 HARNNの魅力はまた改めて、ということで今回はこのやわらかな甘味の感動をメモ。


2011年10月2日日曜日

「メタル」の魅力・SUSギャラリー

9月最後の日。金曜日の夕刻。
外苑前で地下鉄を降り、SUSギャラリー へ。新たな展示のオープニングパーティーがあるという。
そこで目にしたウインドウ・ディスプレイがこちら。






氷砂糖の集合体の中に浮かび上がる金属。この似ているようで一つとして同じカタチのない結晶形を生かした、デザイナー富松暖さんによるメタル・ジュエリーの提案。RECRYSTAL EXHIBITION - SUSgalley window project- 9/28~
これはブライダルのペアリングにも最適!





シルバーの輝きは、形によって、光の角度によって、磨きによって、塗装によってさまざまな色を映し出す。そういえば、昔、パコ・ラバンヌというブランドで「メタル」という名の香水があったことを回想。エッジの効いたさりげないエレガンス。

パーティーでは展示とおしゃべりを楽しんだあと、昨秋
"Tubame Circle of Cutlery"展 にて一目惚れしていたカトラリーをおみやげに購入。さりげないラッピングが嬉しい。





ラッピングの中身はこちら。ドットの光沢きらめくカットナイフ。





とっておきの美味しいものをカットしたり塗ったりするのにピッタリ。スプーンとフォークをセットにプレゼントしてもきっと素敵。