2012年1月29日日曜日

美肌のためにもカルシウム

日曜日。ようやくコチラにてご紹介の記事の続きを読む。
次なるページはカルシウムがテーマ。「シワとカルシウム」。
見出しのフレーズから私の印象に強く残った内容は…
「カルシウムは、皮膚を包み込む外側の部分を強くして良好な保湿機能を助ける…骨がカルシウム不足になっているとしたら、シワはこれから増えていく(ことを覚悟しなければ)。」




読みすすめてわかったこと二つをメモ。
いずれも専門家による言葉より。

1,シワの深さと骨密度との間には密接な関係がある。更年期が近づき骨がカルシウム不足になりがちな女性ほど顔から首にかけて多くのシワが見られた(114名の40~50代女性に対してアメリカの研究機関が調査した結果による)。
2,カルシウムは人体の至る所に存在する。細胞膜、細胞質、細胞の外側…に。そして細胞間のさまざまな物質の出入りを調整し、皮膚のバリアとなるケラチノサイトの分化にも関わっている。

記事は、カルシウムが、健康そのものにも勿論、皮膚美容におけるアンチエイジングにとっても大切な物質であるかという方向性に進んでいく。雑誌からのおすすめ関連商品紹介が続いたあと、最後にまたもやピンク文字で重要なアドバイス。日常の食生活の中で知っておきたいことが綴られている。ちょっと日本での栄養所要量の基準とは異なるかもしれないが参考までに以下に要旨をメモ。

1,若い成人女性が一日に必要なカルシウム量800mgであるのに対し、特に更年期およびこれに近づいている年齢の女性の場合は1,200~1,500mg。
2,ヨーグルト(1人分?)で150mg、グラス一杯分の牛乳で120mg、緑の野菜200gで94mg、バドワー(発砲ミネラルウォーターのブランド名)1リットルで220mgのカルシウムが摂取できる。
3,ただし要注意!特に高年齢になるほど、カルシウムの吸収を助けるビタミンDが
不足しがちであり、せっかくカルシウムを摂取しても活かされない。

…これまで私は、生きている間はできる限り自分の身体で機敏に動きたいから骨を丈夫に、そして厄介なことばかりの中でイライラしないようにとカルシウムを多く含む食べ物を意識してとってきた。それが結果的に皮膚もまもってくれていたとは。そしてカルシウムとともにビタミンDの重要性も再認識。

大学生のころ、高価なスキンケア商品など買えないかわりに自炊しながら食事で皮膚を強くしようと考え、いろいろと栄養学の本を読んだことを思い起こす。一般の人が読む雑誌でここまで詳しく専門的な科学的背景を説明しているこのフランスの美容雑誌、さすが創刊から80年近い歴史があるだけに素晴らしい。同時にフランス人の美容への情熱の深さも感じる。…そしてこの記事はまだ続く。


2012年1月27日金曜日

「シャネルが太陽ならグレは月。」(秦 早穂子さんの文章より)

今週月曜から日経新聞夕刊に連載されてきた、秦早穂子(はた さほこ)さんによるー「勝手にしやがれ」の怒りー が5回目の今夜で終わり。非常に興味深い内容で共感できる部分も多々あり。この人の著書を読んでみようと思う。

日本人にとっても懐かしいフランス映画「勝手にしやがれ」や「太陽がいっぱい」といった邦題をつけたのは秦さん。洋画配給会社の社員としてパリにいた27才のとき、ご自身の審美眼により20分のラッシュを見ただけで買い付けた映画「勝手にしやがれ」(原題を直訳すると「息切れ」)は後にフランスのヌーベルバーグとして世界の若者を熱狂させたという。世の中に対して怒っていた若者の気持ちを代弁したタイトルとして素晴らしいと私も思った。

…そして最終回の今夜。結局カンヌ映画祭に通うこと45年、20世紀の歩みを見つめてきた秦さんは、20世紀を反映するファッションについても本を書いたとある。一冊目はポール・モランによるガブリエル・シャネルの評伝を翻訳した「獅子座の女シャネル」(1977年刊行)。もう一冊は、最後のオートクチュールの人といわれたマダム・グレについて。そのエピソードの中で書かれたのがこのフレーズ。
「シャネルが太陽ならグレは月。激しさは内に秘めていた。気難しい人でしたが、最後は打ち解けました。記憶に残る大切な人です。」

月。
私はこのマダム・グレのブランドを代表する香水、「カボシャール」を20代の中頃に愛用した。当時の私はリスクも顧みず会社を辞め、内側に激しい想いを秘めながらゼロから仕事を探し、生きる道を探していた。グレの香りをつけていると心が楽だった。



2012年1月26日木曜日

わからないものにこそ、魅かれる

先週から日経新聞を斜め読みして目に留め、忘れられなくなったもの二つ。

まずは
本日の朝刊36面(文化)右上に、ミロのヴィーナスの写真。
文章は日本画家の福井爽人氏による。
…気高さに満ちたこの大理石の立体彫刻は、エーゲ海のミロス島で1820年、農民によって発見された。作者は不明で、制作年代は紀元前2世紀末と考えられている。…

以下は私のつぶやき。
この像はどこの誰が何のためにつくったのか。
この、発見者の農民はこれを見てどう感じたのか。
ヴィーナス、と最初に感じたのは誰か。
このヴィーナスの両腕はどうなっていたのだろうか。
…そんなこと全て、今となっては知る由も無い。
かつてパリのルーブル美術館で本物を見たときにも眼が留まり、ただぼうっと眺めていたことだけは憶えている。わかろうともしなかった。ただ眺めていたかった。

そしてもう一つ。
先週の誌面だったように思う。芥川賞の二作が決まったというニュース。その二作についての情報から漂ってくるものはあまりにも対照的。ストーリーや背景の一面が想像できるもの(実際は違うかもしれないが)と、全くわからないもの。読んでみなければわからない、ここに魅かれて私は後者の発売を今から楽しみにしてしまっている。アマゾン予約ページの内容説明を見ても依然としてミステリアス。
「道化師の蝶」

わからないものこそ…時に、とてつもなく知りたくてあの手この手で調べたり探したりするのも面白いが、時に、あえてわかろうとせず、ただ感じることを受け入れる楽しさというものがある。そのうちに唐突に閃きがやってきて「わかった」つもりにさせようとする脳の気まぐれが起きたりするのも笑い飛ばしながら。


脳波から読む…「香り」で勝ち組になれるのか?

香水評論家の平田幸子さんのお誘いで、株式会社フィッツコーポレーション2012 Spring & Summer プレス展示会・ワークショップに出席。会場はひと足先に春のムード。

ワークショップのタイトルは
ー香りと脳機能の関係性 杏林大学 古賀教授と読み解く
「香り」で勝ち組になれるのか?ー。

特別ゲストとしてお話いただいたのは、医学博士の古賀良彦先生(杏林大学医学部・精神神経科学教室教授)。古賀先生のプロフィールで私が真っ先に目を留めたのは、「脳の血流量を分析する光トポグラフィーの第一人者」。30分程のお話は嗅覚と脳の解剖生理学的背景から脳波データによる解説まで、専門的でありながら非常にわかりやすく興味深いものでした。以下は私のメモから。


1,香りの情報は、脳の中で一番前にある場所で一番最初に処理される。
2,香りの中枢と記憶の中枢は隣り合っている。
3,脳の働きによって「気持ち」が生じる。
4,脳波"α波(アルファ波)"は、人がくつろいでいるときにたくさん出てくる。
5,脳の働きがスムーズなとき、α波はたくさん出ており、これはリラックス状態。
6,悪臭(例えば非喫煙者にとっての煙草臭)でストレスを受けると15分程でα波の量は半減、30分でほとんど出なくなっていたというデータあり。
7,ほぼ無臭での状態をα波の量を基準とし、レモンの香りを嗅いだときとラベンダーの香りを嗅いだときで測定すると、レモンではほとんど変わらなかったのに対し、ラベンダーでは明らかに増えていた。
8,事象関連電位P300の感度振幅により、認知能力(記憶・集中)や情報処理能力を測ることができる。これは加齢や疲労により低下する。
9,ほぼ無臭での状態を基準とし、レモンの香りを嗅いだときとラベンダーの香りを嗅いだときとでP300の状態を測定すると、レモンでは明らかに感度が高まる波形が見られた。
10,9に見られるように、柑橘系の香りは脳を活性化し集中力を高める傾向あり。勉強や仕事には勿論、スポーツにも良いのでは?
11,香りを嗅ぐことによって脳の前頭葉での血流量増加が見られた(例えば、ピーチの香りを嗅いだ場合)。この部分での血流量増加は、創造力やプランニング能力、人間の人間らしい文化を発達させる能力が活性化されていることを示し、ポジティブな気持ちを高めることにつながるだろう。


実験データとして登場した香りはレモン、ラベンダー、ピーチでしたが、きっと他の様々な香りも脳に影響を与えているはず、と想像。生きものにとって嗅覚、すなわち香りを感知する感覚は生存のために必要であるだけでなく、より良く生きるために無くてはならないものであること。このように科学的にも研究されていることがもっと知られてほしいと思いました。



2012年1月25日水曜日

過剰な糖もシワの大敵とは…

一昨日のブログ でご紹介した記事の続きがまたさらに興味深い。ページをめくるとタイトルは「シワと糖分」。



糖は人が生きていくためには欠かせないもの。それは呼吸のメカニズムを示す化学式を思い起こしてみれば明らか。活動エネルギーとしてなくてはならないものなので糖自体を否定することはできません。
しかし、この記事を一読してわかったことは、いかに糖の過剰摂取が恐ろしいかということ。糖尿病だけではなく、皮膚にとっても大敵。コワーイと強く印象に残ったポイントだけメモ。

1,糖の過剰摂取は皮膚の弾力繊維を硬くすることにつながる→シワへ。
2,1はすなわち、皮膚の弾力性も柔らかさも損なうことにつながる
3,グリケーション。フリーラジカルとともに体内にダメージを与える起因となる。
4,AGE。糖化タンパクの恐ろしさ。
5,アンチグリケーションの一つの方法として、「カルノシン」の存在。
6,180度以上の高温で調理されたタンパク質の多いメニューにはグリケーションの危険性。なるべくこうしたタイプを控え、なるべく高温にならないよう蒸気でソフトに調理されたものを勧める。

グリケーション、AGE、カルノシン…
改めて調べてみないと!


2012年1月23日月曜日

保湿の大切さ・外からも内からも

昨秋斜め読みのままにしていた仏美容雑誌"VOTRE BEAUTÉ"(2011年11月号)。
特集記事が皮膚のシワ対策について細かく記述されていたのを思い起こし、少しずつ要点を読み直してみた。

まずは「シワと水分」。
保湿を極めることが抗・皮膚老化の第一歩であり、年齢のせいにして嘆いたりせず、せっせと保湿につとめさえすれなかなり良い状態を保てそうな感触。


皮膚、といっても私たちが手で触れているのは血管の通っている真皮でもなく、その上の表皮でもなく、最も上部にある角質層。上の記事で目立つ数字、80-70-13というのはまさに、真皮・表皮・角質層にとって理想的な水分量であるという。このところ乾燥続きだった地域生活者にとってこの数字は…現実と照らしあわせるとかなりキビシイ。

水分で潤っている皮膚組織ほど美しく(艶やか・スベスベ・ふっくら)、バリア機能は強い。逆は?想像しただけでも怖い。

まずすぐに出来ることは、朝晩といわず乾いたなと思ったらまめに保湿ローションでケアすること。女性だけではなく男性も。人間ならば誰でも(笑)。皮膚自体の自然な保湿機能も勿論あるが、これは体質によって個人差もあるし、紫外線、汚染、ストレス、疲労、喫煙などにより悪化するらしい。

表面的なチョットした小皺だと思って気楽に考えていると、奥の真皮からジワジワと乾き、保湿機能も衰えてきたりするので要注意。上記ページには有効な化粧品の紹介がつづいた後、最後に根本的で重要なアドバイス。
"Boire,ça aide aussi"
(飲むことも助けになる=水分摂取も皮膚を潤す)
重要らしくピンクの文字のフランス語が続く。
湿度の高い環境にいることによっても表皮は潤うが、真皮にとっては血液中の水分が重要。一日に大人が排尿や皮膚からの蒸散などで失われる水分は大体1,5リットルなのだから、せめてこの量位は水を飲みましょう、と。
外からも内からも水分を。改めて心掛けたい。



2012年1月21日土曜日

香水の嗜好からパーソナリティをイメージする

昨日、調香師の方とお話する機会があり、私がこれまでに自分の好みで選び実際に自分に使用したことのある香水についてお伝えしてみました。たとえばその中でも
「かつて魅かれたビジュアルと香り・シャリマー(ゲラン)」でも書いたように、20代の頃に「サムサラ」と「シャリマー」を愛用していたとお話したところ、「マニアックですね!」との第一声。日仏を行き来しながらお仕事をされ、様々なタイプの香水愛好者をご存知の方からの印象としては、「(20代にしては…)(日本人にしては…)マニアック」という意味ではないかと思います。

「自分にどんな香水が似合うのか?」を出発点に自分の趣味嗜好、パーソナリティの傾向から香水選びを考える人も多いと思います。私はこの考え方とは逆方向に、香水の嗜好からパーソナリティをイメージしてみようと思い、現在までに使用してきた香水について資料を読み直し、背景を調べてみました。

ざっくりとわかったこと。

1.日本人よりもむしろフランス人に人気の高かったものが多い。
2.一般に10~20代が多く愛好するといわれるものは少ない。
3.男性の愛好者が多いものもある。

ナルホド。思い当たることがあります。20代の頃はかなりの頻度で実年齢より年上に見られました。デザイン会社での企画職、ファッション誌での仕事、リゾートホテルの広報…といった20代に経験した職種を振り返るとなんとなくわかるような気もします。

その後アロマテラピーを通じて天然香料の特性を身をもって体感したことにより、香りの好みが変わったというより、香料全般にますます興味を持ったので、使い方の幅が広がったように思います。職業、役割、会う人、会う場所によって自由に香りを使う楽しさは、さらに広がったでしょう。

そして改めて、コチラ にてご紹介の本で「パーソナリティからの香水選び~あなたのパーソナリティを知るQ&A」に回答。該当するスタイルの項目には確かに私が愛好した香水が紹介されていました。
やはりこの本は完全保存版。時々Q&Aをチェックしてみるとその時ごとのスタイルを見直せるかもしれません。

2012年1月20日金曜日

世界10数か国への地域展開・誕生から18年目を迎えたアパレルブランドの場合

一つのブランドがこの2月をもって日本を撤退するという。
2011秋冬コレクションカタログに掲載されている世界14か国82店舗のうち、日本国内5店舗に加え、中国・上海店舗もクローズとの情報を得た。

それは1994年にフランスで生まれたシャツ・ブラウスを中心とするレディースアパレルブランド。デザイナーはブラジル人とフランス人の両親をもつリオ・デジャネイロ生まれ。2007年にはフランス政府によりフランスファッションを世界に広めた貢献に対し国家功労勲章シュバリエを受勲している。

ブランドとデザイナーのプロフィールは、fashionsnap のコチラの記事に掲載。さらに、2010,9,21のOPNERS記事には、当時のコレクションやデザイナー本人の顔写真も掲載されている。

昨日、クローズ(2/22)まであと約一ヶ月という日本橋高島屋のショップを訪れ、このお店で数年間お世話になった販売スタッフの方からこんな話を聴く。
「東京の店舗よりも名古屋や大阪のほうが売上が良かったようです。日本国内でも関西圏の方が欧州、アメリカの方たちのように自由に大胆な着こなしを楽しまれますよね。日本では東京を中心として店舗展開するよりも、神戸あたりを中心にした方が良かったのかもしれません。」

確かにこのブランドには、勿論シンプルな定番もあるものの、クラシックなシャツ、ブラウスの規制概念を越えた自由で大胆なデザインも多く見られたと思う。ただし、その根底にはデザイナーの哲学ともいえるようなエレガンスがあった。空間の香りを大切に考える側面について「服と人と空間と」で書いたとおりである。香りとともに心地良さの中で着こなし魂みたいなものが刺激されるアイテムが多かった。一枚のシャツで何とおりにも着こなせる柔軟性も魅力だったと思うし、このブランドのシャツを着て私が実感したのは「服に季節はない。あるとしたら着方にある。」ということだったかもしれない。

ちなみに、上海店舗も無くなったというのは、日本橋高島屋店を訪れた中国人顧客からの情報。非常に残念がられていたという話。根強いファンにとって今後自国内で購入できなくなるショックは大きいとのこと。一方で同じアジア圏でも、香港、シンガポール当たりでは好調らしい。

2011年秋冬コレクションカタログの巻末には、世界14か国の店舗がズラリ。国別に数えてみた。フランス20、イギリス6、イタリア1(フィレンツェ)、ドイツ4、オランダ1(アムステルダム)、ベルギー3、スイス3、アメリカ合衆国28、イスラエル3、中国5、日本5、韓国2、シンガポール2、台湾1(台北)。

今後このブランドが地域によっての展開をどのように考えていくか。興味深い。


2012年1月19日木曜日

"cullet " by HARIO × PASS THE BATON

東京ドーム・プリズムホールへ。
国内唯一の耐熱ガラス工場を持ち、昨年創業90周年を迎えたハリオグラスさんよりご招待を受け、2012新製品発表展示会を観てきました。

ハリオさんのガラスとのご縁は、ローズグラス(Sawa's Room / パレチカ)でご紹介した、香りをクリアに伝えるグラスとの出逢いに遡ります。

本日展示会場にて真っ先に目が釘付けになってしまったのは、大きなガラスの塊。
不規則な断面に色々な角度から光が乱反射してまばゆい輝きを放っています。どこか神秘的なそのビジュアルの傍らに、一瞬の水の雫のように光る小さな硝子で繋がれたネックレス。

さっそくきいてみました。なんと販売されているとのこと。
PASS THE BATON とのコラボレーション。"cullet"。
3月の震災が、こんなにも光を集める素敵なものを残してくれたとは。
コチラ で紹介されています。

「素敵ですね。」
と伝えようとした担当者の方の胸元にもきらり。
ジュエリーというよりも、これは人が生きていくために無くてはならない貴重な水のきらめきのようであり、さりげない存在感の中に神々しいものを感じました。

クリアなガラスのハリオさんと、PASS THE BATON さんによる、希望の光のような企画。素晴らしいと思います。


2012年1月18日水曜日

見えなくても確かに存在するもの

クローゼットの奥からノートや資料の山。
その中に、意外なものを発見してしまった。

それは理系時代、高校2年時の数学の難問解答ノート。
当時の記憶はほとんど無いだけにこうした「証拠」は貴重。

ノートには先生が添削してくださったあとがある。わかるところまで解いてどこからわからなくなったとか、どこから間違っている等…コメントのやり取りが赤ペンで書かれている。赤文字から今でも先生の声がきこえてきそう。

ケアレスミスが多く、「このあわてもの!」というお叱りや「よく考えた!」という励ましが随所にある。この有難い先生とは今も年賀状のやり取りがある。「一人で大人になったんじゃない」といった自分への戒めのために私はこのノートをとっておいたのだろうか。数年に一度発掘されるたびに捨てられないでいる。

数学ではプロセスを積み重ねて解答にたどり着く。すっかり忘れていたが、こうした訓練は後に、問題解決へのプロセスを想像しながらプランをたてる企画力の土台になっていたのかもしれない。

一つの解(成果)にたどりつくまでの紆余曲折は関わった人にしか見えない。これを経験しない人にそのプロセスは想像できないだろうし、想像できないがゆえに企画もたてられない。

現在私は、大学で学生に課題制作を課すとき、まずはプランシートを書かせる。これを書かせなくてもうまく取り組めるのは造形技術修練を積み上げ、制作プロセスに自発的に取り組んだ経験が多い場合のみ。実際そんな学生はほとんどいない。

完成までのプロセスを想像させ、制作のためには何が必要かを考えてもらう。それまでの私の講義で体感した香りの中でどれを表現のテーマとして選ぶか、テーマから広がるイメージの背景リサーチ、その表現は何のため、どんなファッションアイテムのビジュアルになるのか、表現のために必要な技術は何か、それまでに自分が修得してきた造形技術の中から選ばなければならない。制約がある中で最大限できることを考える。

いきなり素晴らしい作品が生まれるわけはない。プランニングから制作へと一通り体験すれば、技術を磨く修練と試行錯誤の経験回数が絶対に必要だと悟るはず。自分でいいと思って表現してもその意図は簡単には伝わらない。何度も繰り返すうちに自分がいいと思う目も厳しくなり、さらに高いレベルを目指すようになる。

そしていつしかこの若い世代に見えるようになると信じたい。時代が求める方向性、人を感動させるような成果、長い歴史を経て愛される芸術作品…これらの背景にあるものを。もちろん目には見えなくても確かに存在する香りの価値も。






2012年1月17日火曜日

三つの香景

朝7時台。満員の車中にて。
かるくスパイシーにシトラスが香る。上品な余韻はごく淡いフローラル。
いつか私が持っていた香水に近いながらもちょっと違う。これは若い男性?
顔は見えないけれど、近くにいた白っぽいコートとゆるいウェーブの男性かな。たたずまいが香りから想像した雰囲気そのまま。見えなくてもきっと素敵な人。彼が今日一日ハッピーでありますように。

正午近く。講義中の教室へ撮影のためカメラマン入室。
「いい香りですね~」と、笑顔とともに。
ブルガリア産ダマスクローズとモロッコ産ビターオレンジの香りを鑑賞していたからだろうか。本日は、ローズとビターオレンジの芳香蒸留水、そして二種の花精油を鑑賞していたのでいつしか空間が春のあたたかな花畑のような世界になっていた。私も学生も皆笑顔。自然な授業風景を撮影するというので、少なくとも私は一切カメラを意識しなかった。自分や学生といったヒトが撮影されるというより、このフラワリーで楽しい空気感そのものが撮影されると感じたから。絵を描くのはカメラマンの仕事。

夕刻。パーティー会場にて。
すれ違う着飾った多くの女性の中からふっと懐かしい香り。もしやあの、50年以上も前に発売された歴史的な香水?様々な食べ物の美味しそうな匂いに消されぬ強い存在感。一瞬のタイムスリップ。新しい、と言われているものばかりが魅力的なのではなく、忘れた頃に出会う古いものこそ新解釈のチャンス。好きなものは流行に関係なく大切にする心。ぶれない女性がいた。




2012年1月15日日曜日

Repetto そして Louis Vuitton からも新たな香り誕生へ

2011年に初フレグランスをデビューさせたボッテガ・ヴェネタに続き、モードと香りのラヴストーリーはまだまだ続く。

1947年にダンスシューズから始まったブランド"Repetto" と、1854年に生まれたブランド"Louis Vuitton" 。歴史ある二つのフランスのブランドからフレグランスが初めて誕生するという。フランス美容雑誌"VOTRE BEAUTÉ" サイト2012,1,13の記事より。

Mode et parfums, la love story continue en 2012 ! (VOTRE BEAUTÉ)

二つのブランドを象徴する画像から、どんな香りが想像できるだろうか。
記事によると、両ブランドとも現段階では香りをデビューさせるということを発表したのみ。Repettoの香りデビューは2013年?

ルイ・ヴィトンは調香師として数々の名香を手掛けてきたJacques Cavallier-Belletrud を選択。発表コメントの中で特に印象に残ったのはこのフレーズ。

Le parfum est une invitation particulière au rêve, au voyage des sens.
(香り、それは特別な招待状。夢へ、そして感覚の旅へ。)

感覚の旅。まさしく。



2012年1月14日土曜日

Pattern and Aroma ー For example, new fragrance "Paisery " by ETRO

文化学園大学国際ファッション文化学科の学生対象の講義「ファッションとアロマ」は今年で7年目。最終課題として、講義で紹介してきた20数種類の天然香料から1種を選び、その香り(Aroma)を、服飾テキスタイルを想定した柄・文様(Pattern)および質感などのビジュアルデザインで表現した作品を提出してもらう。

見えないけれど確かに存在するものを視覚化するという試み。これはまさにファッションという時代の空気感をビジュアライズしていきたい学生たちにとってのテーマでもあるはず。今季も80名近くの学生がどんな作品を提出してくるだろうと楽しみにしている。

そんなことを考えていたら、このニュースに出逢う。
エトロ(ETRO)より、エキゾチックで情熱的なフレグランス「ペイズリー」登場
。ペイズリー柄はエトロのアイコン的ビジュアルでもある。それを名称に掲げた香りともなれば、エトロというブランドの世界観が感じられそう。エキゾチックな風土観、ヨーロッパの感覚が憧れ、洗練させたオリエンタルなニュアンスがペイズリー柄を通じて香ることを想像。

エトロのブティックを初めて訪れたのは確か20年程前のこと。六本木のピラミデビルの一角。当時はファッション誌取材者の立場だった。店内に入るとすぐに感じたキーワードは三つ、クラシカル、エキゾチック、エレガント。

タイムリーなことに、今月末からこのペイズリー柄をテーマとした展覧会が開催される。
ペイズリー文様 発生と展開 (THE EVOLUTION OF THE PAISERY PATTERN PAST AND PRESENT)
文化学園服飾博物館にて1/27から3/14まで。
エトロ ジャパンも協力。



2012年1月13日金曜日

春への花暦・椿から梅、蘭、桜、そして薔薇へ

冬のこの時期。厳しいのは寒さだけではない。
特に日本では、昨年春に起きた災害の余波もある。2012年元日午後と昨日の地震から、いつまた襲来することかと不安な気持ちもある。明日は大学受験生にとってはセンター試験。こんな時だからこそ春を待つ心を忘れずにいたい。そのために記すのは、春に向けて強く生きようと思えそうな花の展覧会やイベントの備忘録。

百椿図 椿をめぐる文雅の世界(根津美術館)

梅まつり特集(関東)

世界らん展日本大賞2012 みどころ

桜の通り抜け桜樹一覧表

世界バラ会連合公認 第12回国際ヘリテージローズ会議2012 佐倉





Carré de parfum par Joel Durand (ジョエル デュランのチョコレート)


チョコレートの調香師・ジョエル デュランでご紹介のチョコレート。26文字の "Carré de parfum" (カレ・ド・パルファム⇨香りの四角) のうち5文字を入手しました。


まずは私のイニシャル、S,H。


Sはフランスで昔から愛されているリグリスのしっとり感がホワイトチョコレートベースで堪能できます。古くはシルクロードを渡ってヨーロッパで親しまれ、トルコの湿原でゆっくりと生育し根に栄養分を貯めた貴重なリグリス使用。
Hはプロヴァンス産クローブ&フレッシュレモンの皮入りブラックチョコレート。レモンの香りが弾けたと思いきや、ツブツブと深みのあるクローブが甘くほろ苦く漂います。クローブを生かすためにレモンを合わせているところが素敵。

そして、家族のイニシャル、K,N,T。


Kはブラジル産ピュアアラビカコーヒーのブラックチョコレート。コーヒー豆の中でもわずか1%だけしか存在しない貴重なアラビカコーヒーを使用。シャープな香りと深い酸味とのバランスがグッド。
Nはイタリア・ピエモンテ産ヘーゼルナッツ使用のサックリとした香ばしさが魅力。白トリュフで有名なピエモンテの土地で育ったヘーゼルナッツは、豆自身が持つ油脂の多さと香り高さが特徴。
Tはイタリア産ティラミスをホワイトチョコレートベースにて。北イタリア生まれの「私を元気にして!」という意味を持つティラミス。マスカルポーネをたっぷり使用し、何層もの階層がこんんなに小さな四角の中でティラミスを忠実に再現。

上記解説は、お店でいただいたコチラのカタログから引用しています。
このカタログはちょっとした「世界のフレーバー事典」。写真も綺麗です。


薄いクーベルチュールチョコレートが包み込む世界の香りの恵み。「小さな四角」でも十分に満足できるのは、その厳選された天然原料の香りとチョコレートとの考え抜かれた組み合わせによるものでしょう。一粒ずつ味わう様々な地域、国の香り。まさに世界をゆっくりと旅するような気持ちになれます。母国語フランス語を構成する26文字で世界中の豊かな香りとチョコレートのマリアージュ(組み合わせ、色、香り、味わいなどの配合)を表現したジョエル デュランの試み。深く記憶に刻まれました。

2012年1月12日木曜日

フィレンツェ発・紙と陶器で香らせる

ルームフレグランス。天然精油で手作りも良いけれど、香りだけで思い切り非日常感を楽しみたいなら、たとえばフィレンツェ発は?と探してみた。以前フィレンツェのお土産にいただいたルームフレグランスが素晴らしい香りだった。

フィレンツェといえばサンタ・マリア・ノヴェッラでも有名。もはやこの地名自体が薫香の発祥としてのブランドにもなっている気がする。

見つけたのはDR.VRANJES(ドットール・ヴラニエス)。
オンラインページはこちら

イタリア・フィレンツェ発のこのブランドでは、ルームフレグランス、ボディケア、リネンフレグランスのラインからイタリアならではの天然原料を生かしつつユニークでエレガントな香りを提案。

個人的には、ボトルに長いスティックを何本もさして液体から香りを吸わせ拡散させるタイプはビジュアル的にあまり好みではない。香りの発信源は見せたくないから。もちろん、天井も高く広々と開放的な室内環境であればこんなヴィジュアルもさりげなくナチュラルに映るだろう。でも実際、東京の自宅スペースを考えると、香らせるモノ自体はなるべく見せず(置かず)にさりげなく空間を香らせたい。芳香拡散器すら置きたくない。そんなワガママな希望を叶えてくれるアイテムも発見。

紙で香らせるペーパーフレグランス 。香らせたいものはこの紙に包んで。
天然ダマスクローズ精油「パレチカ」で作った薔薇の香りのカードを回想。

セラミックフレグランス は白の陶器のトレイ。クローゼットを開けるたびにふんわり香る。これもダマスクローズの香りでもよく試している方法。最高にリラックスできる香り方。

ボトルのガラスに加えて、紙も陶器も香りの媒体となる大切な素材。時にはフィレンツェ発の「空気」や「大地」の空気感も体験してみたいと思った。




冬の乾冷期に三つの香りケア

東京では年末以来ずっと晴れ。雨がありません。
冷たくて乾いた空気がヒュウヒュウ。

乾燥と冷えに対してこのところ実行し効果を感じていることを列記。

1,スキンケアを楽しめる香りの化粧品を使う

こんな寒いときにはひやっとした化粧水を塗るのにもちょっと勇気が。もしお気に入りの香りがほんのり漂うアイテムであれば、それを楽しみにせっせと保湿やお肌のお手入れができます。冬こそまめに保湿を。そのためにはお気に入りの香り漂うスキンケアアイテムを選びます。どんなに寒くても好きな香りのフレグランスを肌に最初につけることが苦ではないことからスキンケアも、と思ったらやはりです。


2,乾燥⇨痒みを感じたボディにはラベンダートリートメント

先日、背中が乾燥して痒くてたまらないという方に背中の部分アロマトリートメントを行いました。ラベンダー精油約1%希釈スイートアーモンドオイルを用いて背中全体に塗布。気分も和らぎ徐々に痒みもおさまり、その後2~3日はシャワーを浴びた後も痒くて辛いということはなかったとのこと。しかもトリートメントした日はずっとシャツにほんのりラベンダーの香りが残って安らいだとのことでした。さすがラベンダーの鎮静・緩和力。


3,アロマミストでこまめに加湿

就寝前の寝室はもちろん、室内をこまめに加湿しないとどんどん空気は乾燥していきます。喉、肌、目。すべて乾燥によって不調になりがちですし、インフルエンザなどのウイルス感染も避けたいところ。私は二種類のアロマミストで数時間おきに加湿。抗ウイルス対策としてラヴェンサラやティートリー、ローズマリー、ユーカリ、ペパーミントなどのブレンドと、優雅な気分でストレスを軽減させるローズオットー、ラベンダー、イランイラン、ゼラニウム、ネロリなどのブレンド。予め希釈スプレーを作っておくのも便利。





2012年1月10日火曜日

チョコレートの調香師・ジョエル デュラン

ふと目にとまった横顔が知的で穏やか。パッケージカラーはダークブラウンに涼やかな青紫。そんな視覚情報が導いてくれたのがコチラ

「あなたのチョコレートを食べると、世界中を旅したような気持ちになれる。」 そう言われたというこの方、Joel Durand はまさにチョコレートの調香師。

圧巻なのが "Chocolate A to Z" 。 ハーブ、スパイス、フルーツ、ナッツ。 様々な香りの宝庫が4つの地域カテゴリーごとにアルファベの数だけならぶ。

これは少しずつでも味わっていきたい。 シンプルでありながら、組み合わせのバリエーションは豊富。 26種類の香りの文字で、どんな文章を綴ろうか。


スイートスプリング2012

昨年の今頃も。 スイートスプリング のみずみずしさを体験していた。 今年も熊本県産。ぷちぷちと張りのある果皮。


いつか見たベルガモットの写真のように、今年は果皮に緑が残っている。 今年は秋に温暖だったため着色が遅れているとのこと。着色ってオレンジ色になるってこと?この色も十分素敵なので果皮をドライピールにしようかと思っている。 たしかに「ハッサク」と「ミカン」の交雑種だけあって香りもソフトで繊細。 果皮をそっと絞ってみると、ああ「ハッサク」の名残。味はミカンの優しさ。 まだ寒いけれど…ちょっと先の春を想像してみようかという気分に。 柑橘はこれからが楽しみな季節。

2012年1月8日日曜日

春の新作に見る「自由な心」・BANG BANG (マーク ジェイコブス)

ブルー系のカラーが好きでよく着る。 仏語学科に在籍していた大学時代、7/14の革命記念日の日だったろうか。3人のクラスメイトがそれぞれ、全身「青」「白」「赤」の服装とメイクでキャンパスに現れたことがあった。それを見た私は、「私ならば青を選ぶ」とすぐに思った。好きに理由なんてないと思っていたが、フランス国旗の青の意味が「自由」であることを振り返るとなんとなくわかる。心の中は何を考えていようと自由だ…と小さい頃から1人静かに空想や思索にふけることが好きだった。今も同じ。


こんな回想をしたのは、マーク ジェイコブスから新作フレグランス「BANG BANG(バング バング)」が登場 のニュースを見たから。
メタリックブルーが、きらめく光と爽やかな風を受けて波打つ海のよう。

2010年12月デビューの前作「BANG(バング)」のインパクトは今も憶えている。ペッパーの刺激が柔らかなウッディとともにスパイシーに香っていた。 あのインパクトを表現する自由なマインドを再び回想。
男性の大きな手でわしづかみにされてこそ似合うフォルム。2010年末12月のブログ「フレグランスボトル」の写真の中にもちゃんと存在。

ナツメグに感激・語源にも納得

昨夜。料理上手な家人が作ってくれたマッシュポテトの風味に感激。 ポテトサラダにはない洗練された口当たりは勿論、フワリと抜けるように微かな甘みをもった上品な芳香。聞けばナツメグをほんの少し加えたとのこと。 「スパイス ナツメグ」で検索してトップに出ていたのがコチラのページ。 このページからTOPページをたどったら、インドの食のみならず文化にますます興味を深めた。「ゴージャス」という名前のレストラン。ゴージャスな香料の宝庫インドの料理店ならではの名前。スパイスに関しては幾つかの参考文献も紹介されている。英語ナツメグの語源にも納得。どこかセクシーでナッティ。英国人の印象? ナツメグはハンバーグだけではなく、カレーに欠かせないスパイスであった。そしてジャガイモ料理にもその芳香は活かされるのだった。少量で芳香・滋養強壮を期待することができるが一定量を越すと人体に有害。ペッパー、シナモン、クローブとともに世界4大スパイスの一つで、大航海時代にヨーロッパに広まったという。

2012年1月6日金曜日

椿からの回想と本日の注目記事

1月6日は植物の知識が豊富だった亡き祖父の誕生日。
毎年この日には植物を一つ思い起こし、感謝するようになった。

本日浮かんだ植物は椿。
木に春と書く。
艶のある葉と赤い花。

2003年3月へと回想。
日本橋三越にて、「椿物語展 安達瞳子の世界の名花」を観た。
視覚的に、以後忘れられなくなった椿という花の世界だった。

艶やかな葉さながらに、その油分は人の髪や肌を護り
真っ赤な花は、厳しい季節の中にも春を待つ心を育てる。


そんなことをぼんやり思いながら新聞を眺めていた。
注目したのは、資生堂社長末川久幸氏へのインタビュー記事。
(2012,1,6 日本経済新聞朝刊11面)
タイトルは「グローバル人材 どう育成?」
この記事は取っておこうと思った。
特に共感した部分をそのままメモ。


ー新しい企業理念では共有すべき価値観に「多様性こそ強さ」を掲げた。
「年末年始には社員一万人が手書きで回答した会社の満足度調査を読んだ。つぶさに検証すると何に共感し何に不満かが分かる。このギャップを埋めるのが担当役員の宿題。その結果が多様な価値観を受容する組織につながる。これを海外にも広げていくつもりだ」


海外はまさに多様な価値観の集合体。所変われば習慣変わる。
1872年生まれ のこの企業は2012年で創業140周年を迎える。



2012年1月5日木曜日

VENUS Vol.23(国際香りと文化の会)・テーマは「森」

VENUS Vol.22発刊 からはや一年。2011年度の国際香りと文化の会、会報誌VENUS Vol.23のテーマは「森」。2011年は国連の定める「国際森林年」でもあった。


表紙の絵はポール・セリュジエ『ブルターニュのアンヌ女公への礼賛』1922年(ヤマザキマザック美術館蔵)。…ブルターニュ公国のアンヌ女公がブルターニュ地方の聖なる木オークの葉の茂る森の中で、蘇生と成長の象徴でもある若木に手をかざして祝福する姿。…VENUS Vol.23目次の説明文より。

東京都庭園美術館において、大震災後まもない2011年4月16日から7月3日まで開催された「森と芸術 私たちの中にひそむ森の記憶をたどってみよう」のポスターに使用されたのもこの絵。

1922年といえば、フランスが第一次大戦下の空爆でダメージを受けたころでもある。生きものの姿、生きる原点へ思いを馳せる復興への願いも感じ取れる表紙の絵を、2011年の春を回想しながら私は見つめた。

本誌は、東京都庭園美術館「森と芸術…」展の監修者であり、フランス文学者、美術評論家である巌谷國士(いわや くにお)氏と、国際香りと文化の会会長の中村祥二氏との対談から始まる。この24ページに渡る対談が興味深く、昨夜一気に読んでしまった。「森と芸術…」の展覧会を見逃したのは残念であったが、この対談を読み、鑑賞して得られたであろう好奇心の幾ばくかは取り戻せたように思う。本誌目次については、国際香りと文化の会ホームページ にも記載。

今回のVENUS Vol.23を一通り読み、改めて観てみたいと思ったフランス映画が二つある。巌谷國士氏ご紹介の「シベールの日曜日」(1964)と、植物生態学者である宮脇昭氏ご紹介の「木を植えた男」(ジャン・ジヨノ原作の本が1953年に書かれ、フレデリック・バックがアニメーション映画として映像化)。



2012年1月3日火曜日

ジャン=クロード・エレナ著調香師日記(原書房)を読む

先月コチラ にてご紹介の本。年明けとともに一通り読む。



2009年秋から翌年秋までのほぼ1年間。南仏、パリ、イタリア、ベルギー、香港、東京、京都、金沢…調香師を職業とする一人のフランス人の日記を読みながら、私も旅をしているような気持ちになった。そして想像の中で様々な匂いや香りを嗅いだ。実に楽しい読書であり、またひとつ宝物を得たと思った。

これから何度でも読み返すだろう。読む時期によって違うものが感じられそうなところはまさに香りのようだ。

本文より一箇所、著者が「声を大にして言いたい。」と書き始める文章の一部を紹介したいと思う。2010年6月30日の日記より。

声を大にして言いたい。私は、香水のために凛とした簡潔なかたちを追求しているのである。私にとって香水とは、鼻にささやきかけるもの、心のなかに訴えかけてくるもの、思考に結びつくものである。…

「凛とした簡潔なかたち」。
私も、表現において常に目指したいと思う。

ソルト&カマンベールクッキー・塩はゲランド地方から

昨日、新宿某店にて。
試食をすすめられて口にしたお菓子に注目。
チーズの風味と優しい塩味。おかげで甘味が柔らか。


東京ミルクチーズ工場のクッキー、ソルト&カマンベール。
一枚だけで充分な満足感。
午後ならば紅茶と。
夜ならばワインと。

この塩味。忘れられない優しさ。
フランスはブルターニュ、ゲランド地方の塩が使われているそうです。
詳しくはコチラのサイト に書いてありました。
またしても農産物にフランスの地名。
カマンベール、カルヴァドス、コンテ、ボルドー…。
食料自給率は悠に100%を越え、農業国であるという土台を地名をブランド化して守ろうとする精神がうかがえます。

塩は大切。
そして、このクッキーのパッケージに描かれた牛にも感謝。
東京ミルク、ということは日本、ひょっとしたら東京で育った牛?
ミルクもチーズもバターも牛からの贈り物。
改めてしみじみ。

2012年1月2日月曜日

3大陸よりメッセージ

海外の知人友人からもメッセージが届くこの季節。
同じ人間であっても、地球上の住む場所が違えば、
風景、気候、言語、食事、匂い、…これらが異なるのだから
彼等との共通母国語の日本語で通信できることを改めて貴重と思う。


まずはユーラシア大陸より。
Aさんは、フランス人と結婚しパリ在住。パリ生活はもう20年近く。
今冬もご主人の実家のあるボルドーの田舎で休暇を過ごされたとのこと。
ボルドーはフランスの南西部なので
パリよりは暖かいのかなと一瞬思うも
それよりも南のミラノの知人から極寒情報をきき
パリや東京とそう変わらないのかもと想像。

次に北アメリカ大陸より。
Bさんは、カナダ人と結婚しトロント在住。
かれこれトロント生活は10年以上になるはず。
その彼女が今冬初めてのグリーンクリスマスを体験したとのこと。
雪はチラリと降ってすぐ消えてしまったそう。
寒いことには変わりなく…。

同じく北アメリカ大陸、合衆国テキサス州ダラス在住の女性Cさんより。
彼女からの便りによると、カナダよりもずっと南にあるダラスでも冬は
氷点下の日がありとても寒いとのこと。昨夏は44度と猛暑だっだそう。
ご主人の転勤に伴う、お子様ともどもの合衆国暮らしはこれで2度目。

最後に南半球、オーストラリア大陸より。
Dさんは、イギリス人と結婚しシドニー在住。
かれこれシドニー生活は15年以上になるはず。
今冬もクリスマスシーズンに届いたのは
御家族4人の写真つきカード。
今は真夏のシドニー。彼女の肌は小麦色。
以前彼女からメールでオーストラリアについてこんな感想を
書いて送ってもらったことを思い起こしている。

オーストラリアは、広大な土地を持ち、
美しいビーチにも恵まれ、資源も豊かな新しい国です。
世界中からの移民がともに暮らしている分、自由で、おおらかな所です。
ヨーロッパとの違いは、やはり歴史の重みでしょうか?


毎年、またいつか彼等と会える日を楽しみに思う。

2012年1月1日日曜日

ラヴェンサラ&ユズから追想・"SERENITY" & "HARMONY"

こころ穏やかに迎えられた2012年。

12月に入り、あまりの忙しさをどう乗り越えようかと焦り始めていたとき、私は自分のために二種の精油を新たに購入した。
高知産ユズ(果皮を圧搾して得た精油)。
マダガスカル産ラヴェンサラ(葉と枝から水蒸気蒸留法により得た精油)。

大晦日。大掃除の仕上げ。玄関を掃いた後の打ち水にユズ精油を数滴。
清涼感が流れていく。ほのかな残香に和みの空気。

元旦明けての夜更け。様々な想いが頭の中を駆け巡る中、疲れた身体は静かな眠りを欲していた。枕元にラヴェンサラを一滴含ませたコットンを。熟睡。

年賀状。自宅の一室にてアロマトリートメント施術サービスを行っていた頃のお客様からの数通。いずれにも「またうかがっても良いですか」とのお言葉。2004年から翌年にかけて那須のリゾートホテルスパでのアロマセラピスト教育とアロマメニューのディレクションを担当した時期を境に、大学講師や諸々の仕事により施術の仕事を受けることが難しくなっていた。にもかかわらず毎年年賀状をくださる有難いお客様からのお言葉。今春からそうした方々のためだけでも再開したいという気持ちも強まる。

アロマトリートメント施術の仕事は一対一。身体は一つ、時は一時。一度に多くのことはできない。私一人では成し得ないことを後輩に伝える教育は未来を創る。那須でアロマセラピストを教育したとき、私は複数のセラピストの卵たちに当時でき得る限りのことを伝え、そして「五つの香り」を残した。そのサロンの初代監修者であったフランス人調香師が残した四つの香りを新たに調香し直して。

その「五つの香り」のうちの一つがラヴェンサラをブレンドした、心を落ち着かせるためのSERENITY

既存の四つの香りのリニューアルに加えて新たに創った五番目の香りはユズをブレンドした芳香浴(室内香)専用のHARMONY

サラ・ローズ著「紅茶スパイ 英国人プラントハンター中国をゆく」(原書房)

ダージリンという芳醇な紅茶の源に、このように壮大なイギリス人プラントハンターの冒険があったとは…。茶は19世紀の世界経済を大きく動かした。中国から最高級の茶葉の種を生きたままインドまで送り届け、移植に成功させた英国人の知恵と情熱。異国人である中国人とのやりとりの中、あらゆる障害を乗り越えて目的を全うするそのクールな姿勢に、"007の国イギリス"を見た。


サラ・ローズはシカゴ出身のジャーナリスト。彼いわく、ロバート・フォーチュンの物語を知ってから苦闘が始まった。ロバート・フォーチュンの4冊の旅行記、東インド会社宛の彼の手紙、英国図書館に所蔵されている東インド会社の報告書…その他中国、植物学などの壮大な専門分野にも関わるテーマのために500冊以上の本と文書にあたったという。

ここ数日飲んでいた紅茶のブランドはWEDGWOOD。なんと本には、茶のための陶器製造技術進歩を利用した初期の陶器職人がジョサイア・ウェッジウッドと記されている。

英国人ロバート・フォーチュンが見た中国人、中国の風景、中国の文化芸術に関する記述も興味深い。中でも、彼の使用人の一人の実家を訪れたときの観察記録。中国では書は芸術とみなされ、崇高なものとされるというくだり。漢字は字であると同時に絵画でもあり、美の追求にも通じ…書を書くのに使う筆、墨、硯、紙は「文房四宝」と呼ばれた…この一説が忘れられない。このような精神が茶の香りを愛好することにもつながるのだろうか。

中国の最高級の紅茶の産地、武夷山脈。インドのダージリンを抱くヒマラヤ山脈。本にも記されているようにまさに茶は「山の精髄」。

大航海時代の香辛料に続き、茶の香りも世界史を動かした。
イギリスと中国。ますます興味深い。