2014年8月3日日曜日

旅する気持ちで ・ 広山 均著『グラース慕情』

夏の休日。
旅する気持ちで読んだ一冊。
かつて愛用したフレグランスへ想いをめぐらす記憶の旅、
そして南仏グラースの四季を香りとともに想像する旅。



『グラース慕情』広山 均著 /フレグランスジャーナル社

著者の広山氏によるご講演を、「国際香りと文化の会」や「香りの図書館」主催のテーマで少なくとも3回は拝聴したことがある。私が天然・合成ともに香料の知識を深める機会を得られたのはこの方の恩恵に依るところが大きい。真摯で張りのある落ち着いた語り口が印象的で、何よりも実際にグラースで学ばれた日々で感じられた想いをいきいきと語られた表情は今もよく憶えている。今年80歳を迎えられる広山氏にとって今も慕情として忘れ難い香りへの想いは、多くの読者に香りの魅力の再発見を導く貴重なメッセージとなっている。

慕情。
ゆえに穏やかな語り口が聴こえてくるようであり
ふと開いたどのページから読み始めても香りのタイムスリップができる。
ときにフランス語読みの音のままカタカナになっている言葉に微笑む。

名香を生み出した調香師の創造性について
語られているくだりは特に興味深い。
これといった方法論があるわけではない。
確かなことは
グラースの地に実際に咲く生きた花々の香り、
歴史に残る名香…
こうした本物のお手本を感受できたからこそ
新しい香りのカタチへのインスピレーションから創造へのプロセスが生まれた。
かつてご講演の中でも仰っていたがこうした広山氏の見解には
私も深く同意したい。

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