今年も様々な書物に出逢えたが、中でも11月に一読したこの本は最も印象深い。
昆虫と植物の相互作用についての神経行動学研究で知られ、特に昆虫の嗅覚研究で名高いという著書の経歴に惹かれて一読。何となく漠然とわかっていたような認識が、本書の具体的な生物の事例を読むにつれ、痛烈な実感を伴っていく。
環境を瞬時に分析し、命を守りつなぐために働く嗅覚、そのために人の鼻は顔の中央,先端についているのかもしれない。原題(DIE NASE VORN)の意味は「前にある鼻」とのこと。自身の嗅覚と向き合い研ぎ澄ます時間を増やしたいと思う。
ヒトは犬,魚,昆虫その他より圧倒的に嗅覚は鈍いとよく言われる。しかし、ほとんどの生物が生存と生殖のために嗅覚を駆使しているのであれば、同じく生物であるヒトが嗅覚を利用していないはずはない。視覚聴覚からの情報が多いだけに意識されることが少なかったかもしれないが。
ヒトは他の生物のように裸ではいられないし頻繁に身体を洗うため、本来の体臭だけでコミュニケーションすることは不可能である。しかし、自身の生存に有利となる嗅覚の使い方を考える際、自身から発する香りは厳選し,繊細な嗅覚を疲弊させない距離感を保つ必要があると感じる。
今年、自身のために新たに入手したフレグランスは,最小サイズで1本、フルボトルで1本のみだった。まずは自身が快適でいられることは大前提であり、その上で第三者からみた自身の存在感とその場の状況に好ましくない要素が発信されないためにも、まとう香りは厳選していきたい。
…écrit par 《SAWAROMA》