2014年4月30日水曜日

海辺を見下ろす

数日前
静岡県某所にて。

朝の小雨のぱらつきが
空気をしっとりとさせる中
清々しく土と葉の香りにつつまれる。

随分と高い場所に建つ美術館を訪れた。
ガラス越しに緑と海。



空、海、緑。



美術館の敷地内を散策。

すくすく伸び始めた竹を背景に
楚々と咲く可憐な花。
アヤメかランか?
白くはかなげな花びらに薄紫と黄色が映えて。

「植物判定器」というアプリに画像を送り調べていただいた。
返答にはWikipediaのページが貼られており
そのページから……内が判明。

……
花の名前は「シャガ」。
アヤメ科アヤメ属。
学名はIris japonica。
中国原産。かなり古くに日本に入ってきた帰化植物。
和名はシャガ(射干、著莪、胡蝶花)。
人家近くの森林周辺の木陰などのやや湿ったところに群生、
開花期は4〜5月ごろ。
……

シャガ。
近くには鮮やかなシャクナゲも咲き誇っていたが
私には緑の中でひときわ麗しく映ったこの春の花を
海を見下ろせる場所から眺めた
記憶としてとどめておきたい。

緑の記憶・"POUR UN HOMME DE CARON"は誕生80周年


咲き始めた甘美な花々とともに
植物が土の底から空へと清々しく香るこの季節。
緑の風景とともに、毎年色褪せることなく記憶に刻まれる。

新緑の中で散歩した昨日。
ふと帰路で記憶に蘇った記事。

Pour Un Homme de Caron: Always and Tomorrow

04/25/14 18:13:33 (11 comments)
by: Serguey Borisov


1904年パリに創設された香水メゾン、
キャロン初の男性用フレグランスとして
1934年にデビューした"POUR UN HOMME DE CARON"が
今年誕生から80周年を迎えたとのこと。

"There is happiness in simple forms."
から始まる記事は、この香りがいかに長く愛されてきたか
数々の広告ヴィジュアルや
愛用者の一人であったセルジュ・ゲンスブールが
香りへの想いを音楽にこめて歌っている動画も貼られている。

先日コチラ にて紹介の本、『アロマ調香レッスン』の上級編の中でも調香のお手本にしたい名香の一つとして取り上げられている。



著者で調香師の新間美也さんが文中で述べた
<ラベンダーとバニラの最良の割合を探り当てた繊細なるバランス感覚>が
このフレグランスの調香師エルネスト・ダルトロフが思い描いた
エレガントな男性の魅力を引き出すマジックだったのかもしれない。

ここでブランド、キャロンのWebより
Pour Un Homme
EAU DE TOILETTE
をチェック。
このページのフランス語説明より一部を下記にメモ。

「ある男性のために」
と名付けられた香りは爽やかで官能的、
世代から世代へと引き継がれて今日に至る…
un parfum indémodable et charismatique.
(流行に左右されない、カリスマティックな香り)

2014年4月27日日曜日

「アーリーサマー」・日向夏とデコポンとブルーベリーのトリオ

初夏の陽射しに似合うデザート。
「アーリーサマー」という名の爽やかな一品。
ペンギンペストリー さんの新作です。


艶やかなヴィジュアルが
新緑にピッタリ。
デコポンの甘くみずみずしいオレンジ色、
爽やかな酸味を期待させる黄色い日向夏、白い縁取りそのままに。
涼し気な濃紺のブルーベリー。

まずはほのかに甘みのある白い部分とともに
爽やかな日向夏の酸味を確認、一気にリフレッシュ。
上品なその酸味を生かしたクリームが香りをひきたてます。
その下のデコポンのパンナコッタはコクのある甘味。
最下層のヨーグルトの軽やかなパンナコッタで口当たりも軽く。
ひととおり3層のクリームの余韻が残るうちに
みずみずしいデコポンを一口。
デコポンだけではわからなかったこの柑橘の
甘さだけではないふくよかさ、みずみずしさを実感。
最後にブルーベリー。
この口の中で拡がる優しくも濃厚な香りは
トップノートの柑橘たちに見事に調和。

フルーツだけでは感じられなかった
素敵な時間をいただいたことに感謝しつつ
改めて3種について調べておきました。

みやざきブランド推進本部 日向夏

旬の食材百科
デコポン(不知火)の旬の時期と主な産地


日本ブルーベリー協会

ああブルーベリーといえば。
この香りを生かした"ME" というフレグランスが
昨年夏にランバンからデビューしていました。
いま改めて香りを確認すると
ブルーベリー独特の奥行きのある魅力が
確かに感じられて嬉しくなります。

2014年4月25日金曜日

香りで表現する喜びを・調香師新間美也さんの著書『アロマ調香レッスン』


パリ在住の調香師、新間美也さんの新しい著書が今春発刊されました。

数年前から
時々お会いし楽しくお話させていただいている新間さんの
その繊細でやわらかな語り口が聴こえてくるような文章です。

『アロマ調香レッスン』新間美也 著 原書房



アロマテラピーで用いられる素材は
そもそも香水の素材でもあるということ。
素晴らしい、かけがえのない表現素材です。
このシンプルな事実を受け入れ
広い視野と柔軟な精神で「香り」そのものを愛する人ならば
初心にかえって楽しく読める本であると思います。

基礎、初級、中級、…という順で素直に読んでもわかりやすいですが
香水愛好者であればいきなり上級編から読まれても面白いはず。
あの数々の名香の基本構造が天然香料でこんなふうに置き換えられ
表現され得るのかと、新たな感慨をおぼえることでしょう。

精油という天然香料は
様々な美的イメージを表現する香水の原材料の一種ですが
この豊かな素材はかつて
人がその心地良い芳香や
さまざまな問題から人の生命活動をまもる薬効、治療特性から
発見され貴重なものとしてその存在が現代に引き継がれてきたもの。

確かに薬効や治療特性も重要かもしれませんが
においの感覚というものは
そもそもその人の身体が嫌がるものは受けつけません。
においは心地よいものであって初めて人体に受け入れられ
それでこそ、その香りも効力を発揮するはずです。
ゆえに…

たとえ各精油の伝統的効能を学んだからといって、最終的に、感受する人に心地よい香りを提供できる表現力がなければリラクセーションを目的とするアロマテラピーは成立しない。

それが、アロマテラピーよりもずっと前から香水の素晴らしさを知っていた私の考え方でもありました。そんな考え方を著者の新間さんと改めて共有できたような嬉しさとともに、これからこの本を、初めてアロマテラピーを学ぶ香水経験者にも是非勧めていきたいと感じています。


2014年4月24日木曜日

La ratatouille mijotée avec un peu du romarin (ほんの少しのローズマリーと煮込んだラタトゥイユ)

自宅での仕事。
夜になっても終わらないとき。

せっかくの一人の時間。
仕事を途切れさせたくない、
でも空腹、
でも自分の食べたいものを。
三拍子揃うと大概作るのは煮込み、
ラタトゥイユ。


トマト、ナス、長ネギ、人参、ニンニクは
この時期ほぼ常備なので
あとはそのときにある野菜で。
今回は蕪とその葉。
そして美味しそうなポークソーセージも。

ただしこうしたポークソーセージは
それ自体の香りが強すぎて
他の野菜の繊細な香りまで消してしまうことがある。

そこでソーセージのもつ肉の臭みだけを和らげつつ
全体的にフレッシュな香りになりますようにと
ローズマリーを一房。

煮込むこと30分。
あつあつのラタトゥイユは
それはそれは上品な香り。
パンと白ワインの夕食で美味しく心豊かに。
フレッシュな香りのおかげで眠くもならず
少しの休憩で仕事に戻れたのも嬉しい。

翌朝は冷えたラタトゥイユを
オムレツに添えて。
元気な一日へ。


2014年4月18日金曜日

「ライムのコンフィ」の "confit"から振り返るフランス語

昨日のフランス語の講義開始前。
学生から「煮る、ってフランス語で何ていうんですか」
と質問され、とっさに頭の中に

" mijoter " (とろ火でことこと煮込む)
" braiser " (蒸し煮する)

など、いくつかが浮かんだ。
これは私がよく行う煮方そのもの。

ただ、「煮る」にも色々あるので
スマートフォンに入れた
ポケット版の最低限の語彙を集めた辞書で確認すると

" cuire "

と出てきた。

えっ、
「食物に火を通す」という広い意味の動詞でいいのかな?
同じ発音、違う綴りで「皮」という意味もあるのに…
と思いつつ、そんな余談は一旦飲み込んで
フランス語初心者の学生には
まずこの言葉を伝えることにした。
彼は料理好きなようなので
私もフランス語の料理テキストを見ながら
これから少しずつ" mijoter " や" braiser " を伝えていくことにしよう。

言葉には一つでほぼ限られた狭い意味を持つものもあれば
いくつもの意味を持つものもある。
そんなことをついここ数日
「ライムのコンフィ」で改めて感じていたばかり。

ライムのコンフィ。ハチミツ風味。
これも私がフードデザイナーと呼びたい
フルタヨウコさん 特製。
原材料 : 静岡県沼津産ライム、北海道ピートグラニュー糖、
ハチミツ、エリカ、梅酒。


コンフィ。"confit(e)(s)"

ときくと
私は油漬けされた肉料理のことを真っ先に思い起こすが
それはコンフィを最初に食べたときの記憶にすぎない。
コンフィの意味は油漬けだけではなかった。
「(砂糖、酢、油などに)漬けた」
というのがこの形容詞本来の意味。

あのみずみずしい緑色の皮をもつライムは
フランス語で " citron vert "。
コンフィされて(砂糖に漬けられて)
すっかり深い色となり
清々しい香りがハチミツや梅の風味とあいまってまさに初夏気分。

先日、自宅で仕事をしていてあまり食欲もなかったお昼時、
このライムのコンフィをリンゴ&ヨーグルトにかけたり
カマンベールにのせたりして頂いてみた。


香りの素晴らしさゆえか
もうそれだけで十分満足してしまい
この美味しさとともに
フランス語を振り返るきっかけになった
ライムのコンフィのことはずっと忘れないだろうと実感。

2014年4月16日水曜日

ジャン・パトゥ100年目・伝説の3部作は現代にいかによみがえる?

昨日の記事で伝記を紹介したガブリエル・シャネルと
ほぼ同世代のデザイナー、ジャン・パトゥ(1887年生まれ)について
興味深い記事をアメリカのWebサイト "FRAGRANTICA" に発見。

Jean Patou celebrates 100 years with the rebirth of three iconic fragrances
04/14/14 21:01:26 (9 comments)
by: Miguel Matos


写真はそのページ上部を撮影したもので
この男性の名は、Thomas Fontaine、
ジャン・パトゥのインハウスパフューマーとのこと。
彼へのインタビュー記事である。


この英文記事、香水愛好者にはもちろん
クラシックなフレグランスのクオリティを回顧しつつも
現代にふさわしい香りを探求し続けたい人に是非読んでいただきたい。

以下私が興味深く読んだ部分より所感を列記。

創業者ジャン・パトゥもやはりシャネルのN.5には大きな影響を受けたらしい。
彼はブランド初のフレグランスとして、1925年に伝説の3部作をつくった。
その考え方の背景がおもしろい。シャネルのように1種(N.5)のみを発表する
のではなく、自分はあくまでも3種発表したい、1種ではすべての顧客の要望
には応えられないとし、ヴィジュアルイメージを重視。

3種の髪色に合わせるイメージで
ブロンドにフローラルグリーンブーケの"Amour Amour"(恋よ、恋)
ブルネットにフルーティーシプレの"Que Sais-Je?"(何がわかるの?)
レッドヘッドにフローラルでグリーン、ある種ガーデニアタイプともいえる
"Adieu Sagesse(良識よ、さらば)
を提供。
( )内の日本語タイトルは
『フォトグラフィー 香水の歴史 』ロジャ・ダブ著・新間美也監修より

いずれもローズとジャスミンの天然香料は使用されており、
あの世界的に有名な"JOY"の前身であったということだから
3種つくってはみたものの、結局はこの1本、という願いがこめたれた
"JOY"が誕生し、それが3部作よりも有名になっているところが
感慨深い。

往年のファンからの昔のフレグランスのリバイバルへのリクエストは
多いらしく、それにどのように応えるのかという質問に対し
Thomas氏は最大の難関は天然香料への規制であるという。
昔使用できていた香料が、アレルギーの疑いにより
どんどん使用できなくなっており、その規制がどうやら過激なのだそうだ。
全ての植物に万人が問題ないということはない、
だからといって多くの人が問題なく使えるものを全面的に規制してしまうのは
香水文化、の衰退につながるのではと危惧されるほど。


原材料の事情だけではなく
そもそも当時とは社会が違う、時代が違う。
それに伴い人の感じ方も確実に変わっているはず。
ロングセラーのフレグランスとはいえ
ベースとなる特徴は守りつつ
原材料事情も含め現代の空気にあわせて微調整されている
のではないかと思う。

来る9月にジャン・パトゥからは
最新の3部作がデビューするらしい。
初めて創業者がフレグランスを作ろうとしたときに3つの香りが必要だと考えた
その想いを受け継ぎ、これまでの伝説を踏襲した現代版。
なんとなく記事のあの写真のボトル?
という予測が立つが
調香師Thomas氏は
マーケットに無理に合わせるつもりはなく
顧客が好きになってくれたらそれでよい、
好きでない場合その理由がマーケットに合っていないから
などと言われてもそんなことは気にしないという。
いわゆる「ラグジュアリー」でも「ニッチ」でも全くない、
ジャン・パトゥのフレグランスは
特別で非常にエレガントで高い品質をもつ、
それは必然的にタイムレスでクラシックであり
常に現実に身につけられる香りなのだと。
ニッチなものは興味深い香りではあっても
身につけ難いものも見受けられる。
確かに身につけられるということが重要…
(おや、こうした言葉はシャネルもよく言っていたと回想)
そう語る現代の調香師の感覚に期待したいと思う。

改めてブランド誕生から100年目を迎えた
ジャン・パトゥの歴史を
ブランドサイトのコチラのページで振り返ってみたくなった。

100年存続したということは
その事実から、時代に合わせて変化し対応できているという
何よりの証明になる。
その志を揺るがさず次の100年を切り拓かれますように。



2014年4月15日火曜日

『シャネル 、革命の秘密』読後の余韻・「ありたい」への徹底

520ページ。
2日で読んでしまった背景のひとつには
かつての大学時代の恩師、フランス人教授の言葉があった。
「歴史は、今が当たり前のものではないことを知るために学ぶもの。
私は特に現代の女性に伝えたい。今の女性のライフスタイル、社会的立場が当たり前ではなかったということを。」

黒の表紙。
白の文字は
監訳者である中野香織さんの明瞭な日本語により
この本が何を語るものであるかを伝えている。
そして小口のきらびやかな金色。


第 19 回 Discover Book Bar ~ 『シャネル 革命の秘密』刊行記念 ―仕事と恋とファッションと ~へ、今週中頃に発売予定の本をひと足先に入手するべく参加した週末。トークショー冒頭で監訳者であり服飾史家の中野香織さんはこの本のことを端的にこうおっしゃった。

ーこれは
シャネルが見た
20世紀の芸術史、文化史でもあります。ー

まさにそのとおりで、
シャネルという一人の人間の
一生87年間に関わった人物、現象の多様ぶりが
ここまで豊富な資料に基づいて詳しく綴られた本は初めてであると感じた。
どんな人の生涯も、全て順調ではないように
彼女の生涯も明暗の繰り返しだったこともわかる。

一読したくらいでは
到底おびただしい数の登場人物の名前を記憶できてもおらず
読了という表現で言い切りたいと思えない。

一読目、読後の深い余韻として翌日まで響いているのは

ーシャネルは、自分ではないものに「なりたい」とは決して思わず
あるがままの自分で「ありたい」と死の淵まで願い続けた女性だった。ー

そんな「ありたい」への徹底。

男性に「なりたい」とは思わない、
だが人間であるという意味で、男性と対等で「ありたい」。
生きるために男性と同じく職業を持ち働く、
働かなければ何者にもなれない。
そのためにはそれにふさわしい服装のスタイルが必要だ。
女性のデリケートな身体にとって動きやすく
かつ女性として防御するべき要素を忘れず
女性そのものが本来
誰もが生まれながらにもつはずの美しさを引き出すために。
シャネルがその生涯をかけて挑んだことの大きさに
改めて敬意をおぼえる。

紙の上ではなく
生身の女性をモデルにしか服のデザインをしなかったという姿勢。
徹底して清潔を求めたシャネルだからこそ
不衛生をごまかすための香りではなく
女性そのものを輝かせる香りをつくったという
その根底に流れるエレガンス。

それらの事実は、現実の女性の一人として
私も深く共感できる。

3年前に78歳のシャネルの生き生きとした写真集を
『ココ・シャネル 1962』ダグラス・カークランド写真展で眺めた。そのスタイルが今でもなんら古くないと思わせること自体に驚き、同時にこの女性の深く知性に満ちた強い眼差しにエネルギーをもらったことを思い起こす。

ココ・シャネルの言葉より・" COCO NOIR " に寄せての中でも引用したが、

" Il n' y a pas plus joli qu' une topaze, cette eau dorée "
Gabrielle Chanel
(トパーズほど美しいものはない。まるで金色の水のよう。)
ガブリエル シャネル

その言葉をこの本で再び回想。

そして
この本を世に送ることに携わられた全ての方々へ
しみじみと感謝をおぼえずにはいられません。
有難うございました。

2014年4月10日木曜日

Ce macaron jaune, c'est " Chocolat Bergamote " !


卯月、といわれるせいなのか
黄色いものが美味しそうと
ついつい感じてしまう今日この頃。


この黄色いマカロンは、「ショコラ・ベルガモット」。
Ce macaron jaune, c'est " Chocolat Bergamote " !

ラデュレ季節限定のフレーバー。
ベルガモットの果汁で香り付けした
ガナッシュを挟んだマカロン。
カットして満喫。

爽やかで
ほろ苦く
ジューシーな甘さ溢れる春の香り。

2014年4月8日火曜日

早春・電車の中の香りたち


3月上旬
午後3時台。
混み合うすこし前の山手線内回り。
目黒にて…扉が開くと
キラキラと漂うこの香り。


あのブラッシュピンクのリボンさながらに。
背の高いロングストレートヘアの女性。
少し柔らかくなった風が立つ中
渋谷まで。


4月上旬
夜10時台。
小田急線、代々木上原から。

幸運にも二人の女性の間に空席一つ。
左からふんわりと。


ほんの一瞬漂ったのは
まぎれもなくあの香り。
このやさしい香り方だけで
そのひとが穏やかな状態であることが伝わってきて
姿を確認することもせず
目的地までのんびりと。

着方で表情が変わる香りたち。
春は素敵な香り方に出会うことが多くて嬉しい季節。

Taste の95%はAroma から?Illuminum 発新香水のテーマはAbsinthe

透明感のあるグリーンカラーの液体に魅かれて。
新しい香水のニュース。

Illuminum: Meet The Green Fairy #234
04/07/14 12:51:07 (2 comments)
by: Eugeniya Chudakova


Illuminum というのは、イギリスの新しいフレグランスブランド。
香りをデザインするのは、Michael Boadi。
トップフォトグラファーやモデルたちとともに、多くのファッションショーを手がけてきたイギリスでは著名なヘア・スタイリスト。
彼は香りだけではなく、パッケージやロゴデザイン、ブランディングも担当。

記事の最初にこう記されている。

“95 percent of everything we taste is smell”
味わうものの95%は匂いである

どうやらこのブランドの新たなプロジェクトは
"the 95 percent series "と呼ばれ
フードスペシャリストとのコラボレーションにより
嗅覚と深くリンクしている味覚の記憶を刺激する香りの提案のようだ。

面白いのは、
このプロジェクトの最初のテーマに選ばれたのが
Absinthe(アブサン)。
あの独特なリキュールの味わい(香り)は
確かに忘れ難い。
私が口にしたのは"Pernod"(ペルノー)という名のボトルだった。

緑の魔法。
ぐわっと甘さを感じたかと思いきや
ビターでスパイシーな刺激が走り
かすかにスモーキー…ふわっとあの癖になりそうなフェンネル感。

この躍動するAromaの伝わり方が
新香水#234には再現されているらしい。
その香りの構成を引用。
Head notes: Sicilian Lemon, Calabrian Bergamot, Neroli, French Fennel.
Heart Notes: Egyptian Geranium, Yuzu, Jasmin, Mandarin Blossom
Base notes: Nutmeg, Siberian Pine, Vetiver Haiti, Coco
これは面白そう。
アブサンそのものの原材料ではないけれど
あの体感を想起させる香りのメロディなのだろう。
最後のココナッツというのが絶妙な感あり。
ココナッツもあの素敵な味わいのほとんどは香りなのではないか。

香りをデザインしたというMichael Boadiは
ヴィジュアルデザイナーという前身をもつ。
人が生きている限り
ヴィジュアルは
実は視覚だけで捉えているものではないということを
仕事を通じて十分感じている彼だからこそ
共感覚の表現を提案できるのだろうと思う。


2014年4月5日土曜日

レモン、ときどきジン、後からクローブ。

とあるフランス映画で
料理上手なマダムが
窓越しに子供たちを笑顔で眺めながら
もうすぐ空になるコンフィチュールの瓶から
直接スプーンを口へ。

そのシーンが焼き付いてしまったのは
このジャムのせいかもしれません。


「レモン」。
威勢良くざっくりカットされたレモン果皮のジャム。
これがたたものではない
レモン以上に
抜群に素晴らしい香りなのです。

原材料
広島県瀬戸田産無化学肥料レモン、
北海道ピートグラニュー糖、
ジン、クローブ。

あの鮮烈なレモンの印象がこんなにも爽やかに
しかも余韻深く響き続ける体験は初めてです。
苦味すら甘味に錯覚させるがごとく、ジンの清涼感。
じわじわとふわーりとジーンとクローブの余韻。

残りわずかになった瓶から
あの映画のマダムのように
食べてしまいたいくらいですが…。

これはストレートのアッサムティーを飲みながら
すこしずつ頂くのもよさそうだとか
チョコレートに添えて食べてみたいとか…
茹でたてポークに添えてみたいとか。
次々に思い浮かぶので一口にとどめました。

フルタヨウコさんのジャム情報は
コチラ

印象に残った香りたち・Mes parfums favoris

ここ数年の間に知ったフレグランスで
印象に残っているものは何かと友人に尋ねられ
「そういえば…」
といくつか記録しておきたくなりました。

あくまでも私という人間の感覚を媒体とする主観的な評価ですが
身につけるフレグランスを
主に三つの観点からとらえることになります。

1.香りとしてよく出来ていてなかなか良い
2.特定の視覚的イメージ、状況に合わせれば効果的な表現となる
3.私自身が心地よいと感じなおかつ自身に似合う

ここでは1を前提に選び
列記してみたいと思います。

アニック・グダールのオーダドリアン(オーデコロン)。
コチラ は老若男女選ばず、フレグランスを初めてつかうという人のファーストトライとしても心地よく使えると感じます。上品な微香という意味ではビジネスシーンでもOK。さりげない清潔感の提示。繊細な嗅覚にも負担にはならないでしょう。今月末にディスカバリーサイズとして50mLタイプも発売されるようです。

ブルガリ モン ジャスミン ノワール ローエクスキーズはフィレンツェのボーボリ庭園のイメージだそうですが、この清々しさと静かな品格もなかなか良く出来ていると感じます。コチラ 。若い世代(大学生・女性)にも比較的好評でしたが、実際に私もシーンによっては愛用しましたし、40代の男性で愛用者もいるとききました。

黒の衣装をテーマにしたいときや
クラシックな装いを華やかに決めたいときには
試してみると面白いのがコチラ でご紹介のシャネルのココ・ノワールとジバンシィのダリア・ノワール。ココ・ノワールは纏い方次第では年齢も性別も選ばないでしょう。

黒に限らず、
可愛らしい女性としての高揚感を忘れずに装いを楽しみたい人には
コチラ でご紹介のゲラン プティット ローブ ノワールシリーズ。香り方の華やかさ、持続性は老舗ゲランならではのもの。

可愛らしさを洗練させ、シンプルなヴィジュアルの中に高級感を大切にしたい感性にはコチラ も男女問わず喜ばれていました。最高級マグノリア香料を使用、とあるだけにミドルからラストノートがなかなかミステリアス。
透明感あふれるランバンの紫。

さらに香り自体の立体感と奥深さを最初から感じさせてくれた
赤の香り 。ローマの赤。フェンディの赤。

そして日本ではおそらく未発売でしょうけれど
気になるのがコチラ。あのキリリとしたオードモワゼルの進化形の一つ。
実際に香りは未だ試していませんが香料の使われ方が興味深く
ボトルの色にも魅かれます。

その他
ネロリが好きなら一度は試す価値がありそうなコチラや、コチラでご紹介したJARDIN DE PARFUM のÉTOFFES DE PARFUM シリーズ中、アーバンツイードの香りやレースの香りもなかなか斬新でラストノートも愛おしく、いつかボトル買いをしたいと感じさせてくれたことを回想しています。

これまでsawaromaブログでも色々綴ってきた以外にも
実際には数多くのフレグランスとの出会いがありました。
印象に残るものは貴重。
今日列記したものは
その中からの
ほんの一部にしかすぎませんが
共感いただける方がいらっしゃいましたら幸いです。

2014年4月3日木曜日

香りは一期一会・JUS de RAISIN

たった一度の出会い、
しかもほんのわずかな体感が
記憶に深く刻まれること。

それはほとんど
予期せぬタイミングで。

"IMPRÉVU"(予期せぬ…)という名前の香水が
昔ありましたが
はっとする出逢い、そのものが
忘れられない香りとの出逢いのようなもの。


1週間前のこと。
楽しみにしていたコチラの展示会にて。
半年後の自分がイメージできる服を見つけたあと…
黄金色の液体が注がれたチタンカップを
どうぞと言われ…
ひとくちでそのフレッシュな芳醇さに圧倒されました。


こんなにも美味しいぶどうのジュースがあったのですね。
はじめてのぶどう。ユニ・ブラン種。
コニャックの原料ぶどうから毎年つくられている
炭酸入りのジュース。
ポール・ジローさんのつくられるコニャックは相当美味しいはずです。

収穫年によって価格は違うときき
然り、とおもいます。
もうすでに2013年産は売り切れだそうです。

しかもこの貴重な飲み物を
コチラのひんやりと不思議な光沢を放つチタンカップで頂けたことも幸運でした。

未だ春なのに
ぶどうの収穫期へと一気にイマジネーションが飛んだ瞬間。

香り高いものは場所も時期も大切な要素。

コチラ で記した
収穫年のダマスクローズの香りをここ数年体験している私にとって
2013年産ユニ・ブランジュース体験も
忘れられない香りの記憶になるでしょう。

2014年4月2日水曜日

万華鏡のように・Bvlgari Omnia Indian Garnet 発表会にて

オレンジ。orangeという言葉の語源をたどると
原産地インドのサンスクリット語につながると
きいたことがありました。

植物のオレンジはさておき
オレンジという色は私にとって万華鏡のような色彩。
光の角度によって様々なグラデーションを想像させてくれる
ミステリアスで豊かなもの。

その色は
私の空想の中の
香料王国、インドの光のイメージでもありました。

4月末の発売に先駆けての新作発表会。
「ブルガリ オムニア ガーネット 」。





ゴールドの如く輝くマンダリンガーネット。
太陽のようなイエロー。
液体の宝石さながらに。




会場はまさに
万華鏡を覗いたかのようなビジュアル空間。



オムニアシリーズのシンボル、
無限大の魅力のかたちのボトルはオードトワレ。
置き方を選ばない存在感。
スリムな円柱形はボディオイル、
花弁の中央部のごとく鮮やかな円形はソープ。
隣に添えられたのはオムニアのための試香紙。




マンダリン、サフランに始まる清々しいトップノートは
デリケートな金木犀、黄昏時の夢のようなチュベローズに縁取られ
懐かしい記憶に深く響くインド産ウッドとアンバーのぬくもりへと
緩やかに、魔法のように空気を描いていきます。




ローマに本店を置く世界的なハイジュエラー、
ブルガリならではの新作プレゼンテーションに
オレンジの輝き・Bvlgari Omnia Indian Garnet
期待感がよみがえりました。

日々異なるシチュエーションの中で
このフレグランスが
どんなふうに香っていくか
後日あらためて綴りたいと思います。

情報提供
ブルーベル・ジャパン株式会社
香水・化粧品事業本部